あいざわアセットマネジメント株式会社役職員ブログ

第219回  < 投資環境予想を振り返って >

2014年も残すところあとわずかになりました。2005年から毎年年始に1年の市場環境を予想していますが、今年も年初に想定していた市場環境と実際がどのように違っていたのかについて、検証を加えてみたいと思います。

(1) 信用(クレジット)市場は、年間を通じてみると年初の予想通りの動きとなっています。年初に6-9%のリターンを予想していましたが、年初から足下までは、投資適格の社債では概ね7-9%のリターンを記録しています。一方、ハイイールド債については、足下で値を崩しており、一桁前半のリターンにとどまりそうです。日本、欧州における積極的な金融緩和と、米国の低金利政策の継続が市場の追い風となったことも年初の想定通りでした。しかし、年末にかけては、ハイイールド債を中心に危険な兆候も見られ始めました。

(2) 商品市場は、想定と大きく外れた値動きとなりました。CRB指数は15%以上下落し、主に原油価格が45%もの下落を記録するとは、まったくの想定外の動きだったといえます。唯一、穀物などで値を上げる商品などありましたが、エネルギー価格の大幅下落は、多くの投資家にとっても意外な展開だったと思われます。サウジアラビア等の中東産油国が減産に動かず、米国を中心に供給が伸びているシェールオイルを圧迫する政策に動いているとも言われますが、供給サイドの意向が強く反映する市場であることをあらためて実感するとともに、他の金融資産と比較して変動率が上昇しやすく、価格の予想が困難なランダムウォークを地で行く資産クラスであることを再認識しました。

(3) 10年物金利については、欧州金利と日本金利のスプレッドの縮小については、想定通りとなりました。しかし、日欧米の3極すべてにおいて、昨年対比で金利が大きく低下することは予想していませんでした。米国債金利が2%前半、日本国債金利が0.4%割れ、ドイツ国債金利が0.6%という水準は、想定値の下限を下回る水準となりました。イールドカーブについても、足下では米国でフラットニング(平坦化)の流れが見えるほどであり、ドイツ国債は、日本国債のカーブの形状と類似してきています。

(4) エマージング市場に関しては、昨年までの反動もあり、中国をはじめとする東南アジアの各市場では先進国対比で年初来アウトパフォームする動きとなりました。しかし、ラテンアメリカ市場、東欧、中東、ロシアの各市場は弱含みました。特に、エネルギー資源への依存度が高い国々の株価下落は大きく、その中でも、ウクライナ問題などに揺れたロシアに関しては、年初来で株価が大きく下落することになりました。したがって、エマージング市場全体のインデックスでは年初来マイナス圏となり、先進各国の積極的な金融緩和の恩恵を十分に受けられない結果となりました。

(5) 市場ボラティリティの予想については、歴史的に見ても低水準であった昨年末に比べれば最終的には上昇した状況となっていますが、長期金利の上昇が抑えられたことから、想定していたほどのボラティリティの上昇は見られませんでした。株価の一時的な急落に伴う変動率の高まりも、金利が低位に抑えられていることで、大きな資金流出を伴う下落には結びつかなかったと思われます。

(6) 日本株式市場は年間で10%程度の上昇を予想していましたが、年末を控えて本コラムを執筆している時点では、日経平均で9%強の上昇となっています。10月末の日銀の追加緩和策が出る前までは、年初来での上昇相場も危ぶまれる状況でしたが、更なる量的緩和が株価に対する追い風となりました。しかし、目標としているインフレ上昇率の達成はいよいよ厳しくなっており、更なる成長戦略や規制緩和が足踏みしている状況下での、良好な需給頼みの株価は危うさを増している状況となっています。想定していた長期金利の上昇が起こらず、むしろ金利低下の状況下での10%弱の上昇となり、予想の数値は近いものの、背景は想定と異なるものでした。

(7) 最後に、ヘッジファンドについては、概ね想定していた状況通り、業界の緩やかな再編や伝統的資産との融合が進みながら、残高自体は増加傾向を続けています。スタートアップも多少増えてきており、2000年代初期の熱気はないものの、業界としては発展しているという印象を受けています。

全体を通してみると、想定以上の低金利下、商品価格の大幅下落が年初想定と異なる動きとなりました。結果としての株価上昇とクレジットの環境は想定通りといえるものの、年初に想定していたよりも、あまり健全とはいえない市場環境が出来つつあります。日本においては2005年、米国においては2006―2007年を彷彿とさせるというコメントも聞かれるようになりました。来年以降の市場動向について、年末に思いを巡らせてみたいと思います。
今年も一年大変ありがとうございました。皆様が良いお年を迎え、2015年が充実した年になりますよう、心よりお祈り申し上げます。

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