あいざわアセットマネジメント株式会社役職員ブログ

第217回  < プライベート・エクイティ・ファンドの流動化 >

当社で投資の取組を続けているベンチャー・キャピタルやバイアウト・ファンド等のプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)の投資期間は短くても10年程度、長いものですと14年にわたるものがあります。さらに、インフラストラクチャー等への投資を行うファンドでは、存続期間が20年というものも存在します。これだけの長期間の投資になれば、様々な理由で投資持分を売却せざるを得ない投資家も出てきます。

1990年代後半には、不良債権処理に伴い、国内金融機関のバランスシートが大きく傷んだ結果、各金融機関は資産圧縮を余儀なくされ、保有していたPEファンドを売却せざるを得ない状況になりました。当時、銀行におけるPEファンド投資を担当していた私も、売却のプロセスに関わることになりました。PEファンドは、通常、国内外の組合形式をとり、ファンド(運用者)と投資家の相対契約による出資となります。したがって、上場市場での売買は出来ずに、別の投資家を探し、出資持ち分を譲渡するというプロセスが発生します。

さらに、譲渡価格についても、市場における値付け機能がないため、相対での取引となり、売り手と買い手の交渉や、持分移転に伴う契約関係などの煩雑な業務が発生することになります。場合によっては価格交渉プロセスに証券会社などのブローカーが介在しますが、最終的には相対での取引になり、手間もかかります。それでも、売り手にとってみれば、市場が無く、流動性のない資産を売却することが出来る手段になります。買い手にとってみれば、通常は保有期間が長期間にならざるを得ないPEファンドやインフラファンドを残存期間の短い形で保有できるメリットや、純資産価額に対して多少割引いた価額で投資できるメリットなどがあるため、需給は移り変わるものの、常にそれなりの取引が見られます。

当時、日本の金融機関は売り手として存在感を示しましたが、今ではボルカー・ルールや、バーゼルIII、欧州における銀行の資産査定等の結果、世界中の金融機関からも流動化ニーズが出ています。さらに、日本でも解散を決めた総合型厚生年金基金や確定給付型から確定拠出型への移行を決めている基金からはPEファンドをはじめとする非流動性資産の流動化ニーズが出てきています。また、常時投資を行っている投資家の中にも、ポートフォリオ適正化の観点から、リバランスのための売却をするところがあります。

金融市場を見渡してみると、日本では、セカンダリー・マーケット(金融における流通市場)の仕組みが株式市場以外では大きく発展していません。これは、日本が間接金融に偏重していたために起こった事象ですが、それでも米国に次いで世界で最大級の金融資産を有していることには変わりありません。投資家の保有している様々な資産の流動化ニーズにこたえる仕組みがないままでは、金融市場の整備がこの分野でも立ち遅れてしまうという危機感があります。今回、PEファンド等の非流動性資産の流動化ニーズがある中、国内のプレイヤーとして、売り手に対する解決策を提示しつつ、ビジネスとして展開していくことは金融市場の片隅の仕事ではあるかもしれませんが、とても意義のある取組ではないだろうか、と考えています。

モバイルバージョンを終了