あいざわアセットマネジメント株式会社役職員ブログ

第216回  < シンガポールでのアジアインフラ投資について >

2日間の出張でシンガポールを訪問しました。日曜日深夜発の夜行便で月曜早朝にシンガポールに入り、火曜の深夜便で水曜早朝に東京に戻りました。時間は効率的に使えますが、機内での二泊は少し体に堪えます。しかし、往復とも飛行機は満席で、強行軍のビジネスマンや時間を惜しむアジアの観光客の姿が印象的でした。様々な場所の混雑具合を見ると、明らかに景気は過去のサイクルの中でも好調な時期に入っています。シンガポール空港も早朝、深夜にも関わらず、様々な人種で溢れていました。入国当日の朝、広大なシンガポール空港の片隅にある空港施設でシャワーを浴び、スーツに着替えてミーティングに出かけました。

出張1日目は、アジアの不動産やインフラに対する投資をシンガポール市場に上場している金融商品を通じて行う価値があるのか、あるいはどのように行うべきなのかについて見極めるために使いました。シンガポールをはじめとするアジア諸国、とくに東南アジア諸国連合(ASEAN)のインフラ開発は経済成長に伴い今後ますます加速します。他国に比べて、人口構成における若年層の割合が高く、今後人口の増加が見込まれるこれらの国々で、社会基盤の整備が進むのは自明のことと思われます。小さな国でありながら、戦略的な移民受け入れ政策を積極的に行ってきたシンガポールにおいては、国民の出生率は日本に並んで低いにもかかわらず、人口が順調に増加しており、現在4路線ある地下鉄は今後8路線に増設する予定です。

スマホ普及に伴うE-コマースがASEAN諸国では先進国以上に急成長しているため、物流施設のニーズが伸びています。タイをはじめ、先進各国から進出している製造会社の工場新設の受け入れを行う国や、中間所得層の増加に伴い小売りが成長している国々においては、道路交通網の整備も急務になっています。さらに、通信ネットワークの急増や大量の電力ニーズにこたえるための発電インフラ設備の敷設等、アジアのインフラ分野の成長はあまり疑う余地がなさそうです。

一方、インフラへの投資は、不動産投資と異なり、個人投資家や機関投資家の資金が流入しにくい傾向があります。一般的にインフラ投資は、その公共性から、各国の公共投資部門が担うことが多く、純投資を目的とした投資家資金の受け皿は限られています。また、インフラは不動産と異なり、施設自身の稼働期間や民間でのオペレーション請負機関が限られていることもあり、資産価値が年々低下していくことや、一定期間経過後に第三者による売却が容易でないことからも金融資産としては不動産ほどの利便性がないことも要因です。しかしながら、成長分野でのインフラ投資では、高い利回りを期待できることもあり、徐々に個人投資家や機関投資家への受け皿が広がっています。近年では、世界最大の年金基金である日本のGPIFもインフラ分野への投資を決めています。

シンガポールはアジアにおける金融インフラ整備を進めていることもあり、同国市場では様々な新しい取組が見られます。その中に、シンガポール上場のREITと並んで、ビジネストラストという仕組みがあります。ビジネストラストは現在日本で整備が進められている上場インフラ投信に相当する金融商品です。投資対象はインフラに限定されませんが、実際には前述の様々なインフラも資産に組込まれています。また、その利回りは総じて高く、中には10%近いものも見られます。株式や不動産ファンドに比べて流動性は低く、金融商品としての魅力度は現時点ではそれほど高くない銘柄も多くみられます。しかし、経済のダイナミズムの中で、同国の金融市場が様々な取り組みを行い、グローバルの投資家の注目を集める金融商品を世に出していることは大変刺激になります。日本がシンガポールをはじめとする東南アジアの国々の急成長の中で、相対的に魅力度を高めるためには、相当の取組をしていく必要があることをあらためて感じています。

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