あいざわアセットマネジメント株式会社役職員ブログ

第207回  < 海外投資家の日本経済に対する見方 >

前回、海外からの参加者も見られた国際フォーラム開催の裏側についてのコラムを掲載したおりに(第206回 国際フォーラム開催の裏側)、読者の方からご質問を頂戴しましたので、海外の運用者、投資家が日本経済の現状と先行きをどのように見ているかについて、私の理解している範囲でお話ししたいと思います。まず、客観的な事実として、今年6月5日に開催したフォーラムには、例年よりも多数の参加申し込みがありました。海外運用会社や証券会社、また、金融サービスの提供者の中には、当フォーラムのスポンサーもいらっしゃいましたが、日本ヘッジファンド関連のイベントということで、例年に比べて財布のヒモも緩かったようです。これは、日本の投資家活動が活発になると彼らが見込んでいることの証左と思われます。

また、今回のフォーラムの中で、投資家に対して事前に実施したアンケートの集計結果を発表しました。本アンケートは、日本の機関投資家や運用者が対象の中心でしたので、アンケート結果が、一概に海外投資家や運用者からの見方を完全に反映しているわけではありませんが、日々、グローバルの投資対象の中の日本を見ている方々の行動、見方を反映しています。その結果を見ると、アベノミクスが2014年にも継続して日本経済に好影響を与えるとする見方が全体の72%を占めました。一方、日本経済に対する好影響は金融政策によるものである、という回答が85%を占め、成長戦略や財政政策の影響を疑問視する結果となりました。一方、これは驚くことでしたが、2014年末時点の株価予想は、72%の回答者が、日経平均が15,000円以上になることを、更に、51%が20,000円以上になると予想をしていました。

想像していたよりも、投資家は日本経済に対してかなり強気な見方をしているというのがアンケート結果をみた感想でした。フォーラム内外で海外の関係者と議論をした総論で言えば、日本に興味を持っている海外投資家や運用者は、上述のアンケートに答えた日本の機関投資家や運用者よりも、かなり日本経済について強気な見通しを持っているとの印象を受けます。もちろん、「日本に興味を持っている」という投資家は、その時点で「海外投資家や運用者」の中でも、母集団にかなりの偏りがあります。海外投資家全般の日本経済に対する認識は未だに低く、日本に興味を持つ海外投資家は少数派です。その中で、すでに日本に対して何らかの見通しをもって、市場参入の機会を窺っている海外投資家、運用者の日本経済に対する見通しが、グローバル投資家の中でも強気に偏るのは当然と言えます。但し、その数や、彼らが扱っている資産額が、2006年以降では最大規模になっている印象は受けています。

日本経済、あるいは日本市場に対して強気に見ている海外投資家の意見を聞くと、(1)日銀の金融緩和効果の継続、(2)日本企業の収益性への期待と現在の割安株の多さ、(3)グローバル投資家の地域比較による日本への選好からくる資金流入期待、(4)政府による規制緩和と続きます。規制緩和の中には、法人税引き下げやGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株式投資割合増額、カジノ法案、公共インフラの民間運営(コンセッション)、さらには、雇用、医療、農業関連の改革等の、規制緩和として括るのも難しい多くの事案が含まれていますので、「成長戦略」と言い換えられているケースもあります。構造改革、成長戦略について、一定の評価が認められているのは、海外における安倍政権に対する信認が、2006年までの小泉政権以降では最大になっていることが大きな要因としてあげられると思います。

かたや、機関投資家が日本経済のリスク要因としてあげていることは、中国経済の影響、国内金利の(上方への)変動性の上昇、米国金利の上昇、金融関連の規制強化等です。強気派の多い投資家意見を反映していますので、リスク要因として列挙される項目はやや曖昧に思えます。海外投資家の目線を、過去の日本経済のサイクルにあてはめて考えると、小泉政権後期の2004年~2005年くらいの状況に近いのではないかと考えています。したがって、国内政局の安定と外部(海外)市場環境の安定を前提とするのであれば、当面、日本経済に関しては強気派が主流になると思われます。

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