あいざわアセットマネジメント株式会社役職員ブログ

第183回  < 韓国の投資信託事情とヘッジファンドについて >

久しぶりに韓国出張を行なう機会がありました。2008年の金融危機前後には韓国の様々な機関投資家との情報交換を行なうために頻繁に訪問していましたが、その後少し間があいていました。当時韓国を訪問していたときから、韓国と日本の相似性については認識していましたが、今回の出張、及び面談を通じて、新たな発見をすることもできました。

現在、韓国における投信ビジネスは約20兆円規模といわれています。日本は公募、私募をあわせれば約100兆円規模ですので、韓国の投資信託市場は日本のそれの5分の1くらいの市場規模ということになります。個人金融資産規模では、韓国は日本の約7分の1の規模と見られますので、韓国のほうが投資信託の普及が進んでいると見ることができます。ここで、少し韓国の投資信託の歴史を見てみました。すると、韓国における投資信託の普及には、特に2004年以降は銀行での販売開始が大きな役割を占めていることが分かります。その内訳を見てみると、積立式の株式型ファンドが主流となっています。また、海外投資に占める中国への投資の割合が40%を超えているのも韓国の投資信託ならではの特徴といえます。

幾つかの機関投資家や運用会社との面談を通じて分かったことは、統計の数値を見る以上に、韓国投資家は、その経済規模にもかかわらず隣国日本の株式市場に対して、きわめて僅かな投資しか行なってこなかった一方、成長過程から中国に対する投資は積極的に行なってきたという点です。これは、韓国の投資信託の成長過程と日本の長引くデフレ、不景気が重なったことが主因とは思われますが、市場規模を考えると非常に偏った投資対象の構成となっているように見えます。このような状況を見れば、その市場規模と、個人投資家への高い浸透度合いにもかかわらず、韓国の投資信託市場はいまだに発展段階にあると感じています。数年前の訪問と今回の訪問を通じて共通した感想は、韓国投資家は、日本に対して常に高い興味は持っているものの、あえて積極的な投資対象としては見ていない、というものです。まったく的外れな見方かもしれませんが、日本の企業に投資するくらいであれば、自国企業への投資を優先するという、一種日本をライバル視する見方が個人投資家レベルに根付いているという印象を受けます。

今回の訪問の主目的である、韓国におけるヘッジファンド市場の状況調査という観点でも幾つかの発見がありました。上述のように、投資信託市場は発展が見られる韓国ですが、ヘッジファンド業界という分野に関しては、まだまだ途上にある状況です。最近急速に残高を伸ばし、国内投資家を中心に投資信託で1兆円を運用している新興の独立系資産運用会社のメンバーとミーティングをしたところ、彼らは韓国株式ロングショートファンドと、アジア株式ロングショートファンドをそれぞれ数年前に立上げ、募集を行なっているとのことでした。しかし、国内投資家のロングショート戦略への認知度は低く、また、韓国当局の規制も足枷となって、国内での募集はほとんど出来ていない状況とのことでした。実際、彼らはシンガポール拠点を設立し、そこにヘッジファンド運用部門を移し、運用資産も海外の投資家からの募集に頼ることになっているようです。残高も、1兆円の株式運用の中で、50億円程度とおよそ0.5%に過ぎません。

彼らに聞いたところ、韓国の投資信託の20兆円に対して、国内運用会社がヘッジファンド的な運用を行なっている残高は約1,000億円程度に止まっているようです。しかし、規制当局も徐々にではありますが、ヘッジファンド的な運用を容認する方向に動いているようなので、今後は増加が見込めるとは思います。もっとも、日本でもロングショート戦略をはじめ、様々な運用手法の選択肢は増えてきているものの、ヘッジファンド運用の個人投資家への浸透率はまだまだ低いと思われます。日本、韓国の運用業界の発展、また、投資家の運用手法の選択肢を増やすために、私達が出来ることは沢山あるのではないか、と感じる出張となりました。

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