あいざわアセットマネジメント株式会社役職員ブログ

第161回  < 欧州債務危機の終息と新たな火種 >

現在、欧州危機はいまだに多くの市場参加者の最大の懸念事項です。2010年5月にギリシャの財政問題が国内の暴動を報じるニュースとともに表面化して以降、数ヶ月毎にポルトガル、アイルランド、スペイン、イタリア等の財務問題に注意が向けられ、その都度市場が反応してきました。

今回も、6月17日に行なわれたギリシャでの再選挙の行方を固唾を飲んで見守った市場関係者も多かったと思います。結果として、ギリシャ国民と政府は、対外的にユーロ圏に残るという意思を示したことで、市場は安堵しました。しかし、今後の財務問題の改善には問題が山積みであり、予断を許さない状況が続いています。

一方、スペインの金融機関の債務問題に関して、最終的には、ユーロ安定メカニズム(ESM)が最大1000億ユーロを支援するという決定により、金融機関破綻による連鎖倒産という最悪なシナリオが避けられつつある感もあります。もっとも、こちらもESMが支援する先はスペイン政府であり、金融機関は国からの支援を受けることになります。その場合、スペインは国としての財政問題を更に悪化させる可能性が高いため、現在のスペイン国債の下落につながっています。こちらも、問題解決の実行には時間がかかるというのが投資家の共通認識です。

このように、欧州財務危機といわれる一連の問題は、解決策の提示、合意や進展が極めて遅く、終わりが見えないものです。1990年代後半から2003年にかけて行なわれた、日本における不良債権処理と金融機関の統廃合についても、当時は延々と続く作業に思われました。ユーロ圏の場合は、それぞれの国の利害が衝突する部分があるため(特にドイツと南欧諸国)、当然日本での処理作業以上に複雑で時間のかかることが想定されます。

しかし、この2年間で欧州財務問題の本当の姿が浮彫りになりつつあります。まず、解決には各国のGDPの成長が不可欠であるという認識です。税収と支出のプライマリーバランスを改善させない限り、借金漬けの国の信用は徐々に失われ、最後にはギリシャのようになってしまいます。また、低成長、デフレスパイラルに陥った日本という前例においては、長引く低成長、デフレに国民や企業が慣れてしまった結果、遂に国内の成長投資は減少し、高齢化の進展と海外投資の上昇を遠因としてGDP成長が困難になり、また財政健全化も遠のく一方です。次に、ユーロ通貨の統合を果たす一方で、金融政策や財政政策統合が進んでこなかったことの弊害が浮彫りになりました。したがって、ユーロ圏各国の債務問題を解決するためには、各国エゴを捨てた、ユーロ圏全体としての金融政策、財政政策の運営を一本化できる超国家的な仕組が求められています。

今回の欧州債務問題は、識者がユーロ導入時から指摘し、懸念されてきた問題でした。しかし、実際にギリシャのような問題が表面化してみないと、各国民、政府、金融機関や投資家が解決のための具体的な行動を起こすことは難しいと思います。しかし、個人的には今回の危機が後押しする形で、各国の政府リーダーが自国の利権を超えて金融、財政面での統合を進めて行くものと楽観視しています。その問題解決の過程で出てくるのが、金融機関の健
全化です。各国でバラバラの規律をもって運営されている金融、財政が統合する過程では、規律の緩い国や金融機関での厳格な運営が求められます。

したがって、筆者は、欧州債務危機の終息の過程は、新たな金融危機の始まりになり得ると考えています。しかし、このプロセスを経ずして、欧州域内での金融、財政政策の統合を行なうことは、難しいと思います。特に、救済する側の国民感情などを斟酌する場合、統合後の金融当局者は規律維持のために多少強い行動に出る可能性があると思われます。金融政策の弾力化により、欧州経済が劇的に改善しない限り、2012年から2014年の間は、欧州金融機関の統廃合とそれに関わる不良債権処理によって市場が低迷しやすい状況になり得ると想像しています。

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