あいざわアセットマネジメント株式会社役職員ブログ

第421回  < インフルエンザ流行、コロナとの同時感染とESG投資 > 

ようやく暑さが落ち着き、ほっとしながらも、今年はまだ真夏日が続いていた9月からインフルエンザが流行しており、今後も感染拡大の可能性が高いというニュースを耳にして戦々恐々としています。2021年、2022年とインフルエンザの話を殆ど聞かなかったので、3シーズンぶりの流行になりますが、今回のインフルエンザ流行はコロナ前と異なる点があります。一つは流行の時期です。これまでは11月以降に本格的な流行が始まるところ、今回は2ヶ月も早い9月に流行が始まっています。二つ目に、新型コロナとの同時流行、さらには同時感染が見られるという点です。

一つ目の9月という早期に流行が始まったのにはいくつか理由があげられるようです。例えば、国際的な行動制限が解除され、特に感染予防を意識しない状態で国境をまたいだ人の流れが活発化したことです。さらに、今年の異常な暑さが影響し、人々が室内に留まることで飛沫感染がおこりやすくなったことも要因と言われています。東南アジア諸国では、6月から9月の雨季にインフルエンザが流行していますが、その理由は雨季の期間中に人々が室内に密集して留まることが多いためと言われており、日本における気象の変化が影響しているかもしれません。加えて、コロナによる行動制限を含め、過去3年近く人々が感染予防を徹底したことで、インフルエンザの感染を防いでいた一方で、免疫力が低下していたことも原因となっているものと思われます。

二つ目の新型コロナとインフルエンザの同時流行については、日本に先行して行動制限が解除されていた国々や、季節が反対の南半球で既に起こっていた現象であるため、ある程度予見は出来ていたようです。しかし、一般的に異なるウィルス性の感染症は同時に流行しない「ウィルス干渉」があるものと考えられていたので、意外な印象を受けます。イギリスの調査では、同時感染が3.3%、米国のミズーリ州のサンプル調査では33%の同時感染が見られたとあります。

このように、新型コロナウィルスの流行で明らかになった、従来とは異なるウィルス感染症の発生や、既知のウィルスがこれまでの常識とは異なる振る舞いをすることが想定されます。ウィルスの広がりは気温や湿度の変化にも大きく影響されます。したがって、今後予想される環境の変化は、新型コロナウィルスの流行で分かったように、私たちの生活に対して大きな影響を与えることになります。金融業界に携わる人々も今後の気候変動がもたらすコスト増加が想像を絶するものになると考え、SDGs、ESGをテーマにした投資ファンドの設定が加速しています。また、私どもの投資対象案件の中にも環境問題解決型の事業が数多く見られるようになりました。これまで環境問題に目を背けながら経済発展に邁進してきた人類も、ここにきて、課題解決に取り組まざるを得ない状況まで追い込まれつつあります。

人類はこれまで様々な環境変化に適応し、また、環境を作り変えて地球上で繁栄してきました。ジャレド・ダイアモンドは、著書「銃、病原菌、鉄」の中で、病原菌が人類の文明の発展に大きな影響を与えたと述べています。ダイアモンドは、過去に異なる文明や地域の接触、交流によって病原菌が伝播し文明の崩壊や人口減少が起きたことや、地理的要因や環境によって異なる病原菌の振る舞いが、文明の成立過程に大きな影響を与えたことを指摘しています。ウィルスが文明や経済に与える影響を10年単位で見てもほとんど意味がないように思います。ESG投資の難しさは、我々の寿命の先にある、少なくとも50年、100年先の環境や経済の在り方を見据えていく必要がある一方、前述の環境変化に伴うウィルスの突然変異など、将来の変化が見通しにくい点にあるように思います。

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