みやたしのぶの「投資小噺」

「鬼平」と掛けて、「バタフライ効果」と解きます。その心は

私の住む浅草はなんとなくレトロ感の漂う街だと言われています。確かに川向こうの東京スカイツリーを眺めつつ、また今どきのタワーマンションを始めとする高層建築物もよく目につくものの、それでも浅草寺の周辺は低層の家屋が多く、それもなんとなく昔の長屋を思い出させるような間口の狭い家屋が並び、伝法院通りに至っては通りの景観を合わせるべく、江戸の長屋風の木造家屋の外壁を揃いで入れて、所々にネズミ小僧などの等身大のフィギュアを置く、といった遊び心まで見せています。

江戸情緒とはどこから来るの?

と言っても、実際に江戸時代の風景を写真ですら見たことのない私達が江戸時代風だ、と感じるのは、時代劇の背景がそうであったり、浅草の外れ、かっぱ橋道具街の一角にある生涯学習センターの一階に記念文庫がある、池波正太郎の一連の作品のような文学の中にある風俗から起草されるイメージが手伝っているのだろうなぁ、と思うことがあります。その有名な作品、鬼平犯科帳といえば浅草を始めとする江戸の町並みを舞台にしたものですので、その土地に時代を重ね合わせやすいのかもしれません。

何故そこにそれが???

羽生PA(上り線)ってこんな感じ
羽生PA(上り線)ってこんな感じ

何を改めてそんなことを言っているのか、というと、実は前回の記事に書かせていただいた電気自動車でのドライブの帰りのこと、オートクルーズコントロールの助けもあったとはいえ慣れない長距離の高速、いや渋滞での運転に疲れたこともあり、休憩に入ったのが羽生パーキングエリア(上り線)。秋も深まって来たことから夕方の少し早い時間にもかかわらず日没で薄暗いが広がったところで車を降りると遠くに木造風の巨大な建築物が。明らかに江戸の頃の家屋を意識した建物があり、中にはいると何故か鬼平犯科帳ワールドが広がっていたのです。物販では鬼平グッズがお土産として並び、飲食も日本橋など江戸と呼ばれる地域のお店が監修した、作中に出てくる一本うどんやくず餅などが楽しめる、と言った具合です。

何がどうしたところで私も日本人ですので和風な雰囲気は落ち着くと感じるものの、どうしても抗えない疑問がふつふつと湧き上がって来るのです。

何故、池波正太郎の世界観が、鬼平犯科帳が、羽生に?

羽生やその周辺の方たちに不遜な物言いかも知れません。とはいえ、疲れきった頭だったとはいえ、どうしたって、鬼平や浅草、日本橋と羽生を結びつけるものが思い浮かばなかったのです。しかし、答えは施設の中にあったのです。

「江戸にたどり着くためには、関所を通らねばならない。
箱根の関所、横川の関所、そして栗橋の関所 」

現代版の関所、としての栗橋の近くのパーキングエリアとしての羽生 、というコンセプト、なのです。

確かに羽生パーキングエリアは東北道で南下して、東京に入る前の最後のパーキングエリア。蓮田サービスエリアはあれど、いつも混むしもうちょっと走れば都内、と思うから頑張って通り過ぎるし。。。そう思うと、これを読んで、ああ、と思うか、ああー、と思うか、だと思うのですが、皆さんはどちらでしたでしょうか。

 

言葉は意図しない使われ方をする、こともある。

こんな蝶の羽ばたきひとつで地球の裏側で竜巻が起こる?

ところで、バタフライ効果という言葉をご存知でしょうか。バタフライ効果というのは、「ブラジルの蝶の羽ばたき一つがテキサスで竜巻を起こす」という言葉で紹介されることが多く、この言葉のおかげで、「何か気づかないような小さなきっかけで大きく人生が変わることがある」のでまずは小さいことでもいいから何かを始めるべきだ、というような啓蒙的(なのか、扇動的なのは人によりですが)例えに使われることがどうも多いようです。

実はこの言葉、「ブラジルの蝶の羽ばたき一つがテキサスで竜巻を起こすか?」という、カオス理論という数学の一つの理論に基づく、初期値鋭敏性の高い物理モデルにおける長期予測の可能性に関する講義のタイトルから有名になった寓話的な説明のことを指しています。といってなんのことやら、という声が聞こえてきそうですね。カオス理論という言葉は一時期流行ったので聞いたことがある方もいるかと思いますが、では「初期値鋭敏性」という言葉はわかりづらいですね。

これは、初動時のわずかな違いにより結果において大きな違いをもたらすようなことを指しています。この事を最初に見つけたきっかけというのが、とある気象モデルに基づいて、実験者が気づかないようなわずかな前提の違いによって結果として作り出された気象環境が大きくて異なった、という実験結果なのですが、これにより、常に微妙に変化する気象条件をもとにして長期的な予想を精度を高く行うのが難しい、という結論を説明するにあたり、前述の問いかけとなる講義のタイトルとなったそうです。本当は、蝶ではなくカモメとしたかったらしいですが、人々の問題への興味を引きつける事を念頭において蝶にしたそうで、実際に、カモメのひと羽ばたきで気象条件が変わってしまう、という研究結果すらあるそうです。

ですが、この人々への興味の引きつけ方が災いして、世の中では「初動時のちょっとした違いにより結果として大きな違いをもたらす現象」という部分が都合よく解釈されて使われているのが現実です。実際のところ、小さいきっかけが結果を大きくする、というのはスノーボール効果の方がまだ近い、思うのですが。。。

言葉の与えるイメージというのは本当に難しく

こうやって関連性の低い二つを並べてみても、鬼平を羽生や栗橋に結びつけるのが大変な一方で、バタフライ効果の本当の意図以外の解釈の方がより定着してしまっている、というのを見るにつけ、使う言葉というのは相手に対してどう伝わるのか、適切に伝えたいのかを気をつけねば、とこれを書きながら思いつつも、もし「羽生 パーキングエリア 上り」を検索した結果、この記事にたどり着いた方がいたらならば、せっかくのご縁でもあり、ぜひ台東区の池波正太郎記念文庫にも足を運んでもらえれば、お祭り騒ぎだけではない、浅草のまた新たな魅力 – 文学の根付いた町 – を知ってもらえるのでは、と思うのでした。

そして、この小さな記事が週末の浅草や池波正太郎記念文庫の大混雑につながれば、なんてバタフライ効果を期待したり。。。あ、これこそが間違った使い方、でしたね。