白木信一郎の「投資運用苦楽」

第311回 < 年末の金融業界の話題に対する雑感 >

年末を控えて、さまざまな金融機関やメディアが来年2019年の景気についてコメントするようになりました。この時期に来年を占うというのは年中行事のようなものですが、2019年以降についての話題で頻出するのは、(1)これまで世界経済を大きく牽引してきた米国での金利引き上げの速度と景気の行方、(2)米中貿易摩擦による中国およびグローバル経済への影響、(3)英国のEU離脱問題、(4)日本の金融緩和の出口問題、(5)トルコ、アルゼンチンをはじめとする新興国経済の更なる不安定化への危惧、といったところでしょうか。

また、年末を前にして、海外からの運用者や金融関係者が、アジアツアーの一環で数多く日本に訪れます。今年は例年にも増して数が多いように思います。特に私たちが仕事をしている、オルタナティブ投資の領域では、GPIFや郵貯銀行などの巨大投資家が、海外のプライベートエクイティやヘッジファンド等への投資を本格化させると聞きつけた関係者が多く日本にやってきています。また、それに関連して、東京での金融関連のカンファレンスも盛んに行われ、そのたびにネットワーキングのイベントが開かれます。

いくつかのネットワーキングに参加していると、金融関係者が2019年の景気についてはあまり不安視してはいないものの、2020年以降、何らかの形でのリセッションが起こることを気持ちの上では織り込みつつあるような感じを受けます。2018年の米国経済が好調であり、多少の金利上昇があったとしても突然この好調が途切れるとは考えにくいことも一因かもしれません。また、米中貿易摩擦によって関税の引き上げが起こったとしても、それ自体が中国、米国の経済に与える直接的な影響はGDPに対して0.1%-0.2%で限定的であるとの試算があることから、関係者があまりこの影響を気にしていないように思えます。ここ数年、あまりに長く続いた好環境がこれ以上続くのはおかしいのではないか、という根拠のないサイクル論的な感覚にいくつかのリスク要因(新興国に端を発する金融危機や中国の不動産バブル崩壊)を理由をつけて語られることが多かったのですが、これらの話題もあまり聞こえなくなりました。

一方、日本に関する話題としては、日産自動車に関する検察の対応が海外からは驚くほど不評という噂や、日本企業におけるコーポレイトガバナンスの進捗が海外からは確認しにくいという声を実際に数多くの海外からの来訪者と話して確認する、ということが目立った悪材料でしたが、それ以外についてはあまり日本の景気を不安視する声は聞こえてきません。ただし、金融政策に詳しい関係者と話していると、日銀の金融緩和の限界と、ETFやREITの買取りを続ける日銀の実質的な財政ファイナンスに終わりが見えないことに対する不安や、継続性への疑問が聞こえてきます。

街に出て、耳をそばだて、金融専門家の話を聞いていると、冒頭にあげた話題の中で多少の議論になるのは、米国の金利引き上げ頻度に対する見解の違い程度で、ほかのトピックは多くの人が等しく明確な解決策や解答を描けていないように感じます。また、金利コントロールによる緩和政策が各国で限界を迎える中、2019年は財政支出に頼ることになると予想する人が多かったのも特徴です。今後、政権の人気取り的な野放図な財政出動が各国でみられるようなことがある場合、足元景気の延命はできても、その副作用が数年後以降の経済に対する重石になるという点など、目先の市場を不安視するあまり、正常な議論が起こらず、けん制機能が働かない状態になるのではいかと少し心配しています。