白木信一郎の「投資運用苦楽」

第276回 < 中国のe-コマース市場について >

この数年、投資家の間では中国の不動産バブル、不良債権問題が大きな話題となっています。現段階では中国政府によってうまく管理されている状況とは言われていますが、かつての日本の不動産バブル崩壊前夜を彷彿させる潜在的な大きな問題といってよいと思います。また、公共投資によるサポートはあるものの、世界の工場の役割を担って高度成長してきた製造業の隆盛は影を潜めています。

製造業が供給過剰に陥り、経済成長の担い手ではなくなった現在、年間6~7%の中国経済成長率を支えているのは小売業です。その中でもオンラインによる小売業が急伸しています。中国では、ECの分野では阿里巴巴(アリババ)集団が圧倒的なシェアを誇っています。特にアリババのBtoCのブランドである天猫商城(Tmall)は、2016年には約25兆円を、CtoCのブランドである淘宝(タオバオ)にいたっては約35兆円の売上げを計上しました。現在、若年層中心に小売の80%がオンラインである中国ならではといえますが、一旦リアルからネットに移った消費動向が不可逆的な要素を持っていることを考えると、この状況は継続することが考えられます。

個人所得が底堅く増加し、消費嗜好も変化しているため、個人消費の伸びや変化がe-コマース市場にプラスの影響を与える状況は続くものと思われます。更に、e-コマース市場におけるサービスは多様化し、様々な企業が成長してくることも考えられます。現在、前出のアリババとバイドゥ、テンセントが中国ネットビジネスの3強と言われていますが、同社による様々な付加サービスの提供による更なる需要の喚起、あるいは、いずれ新興の大手が出現する可能性もありえます。

先般、中国のベンチャー企業に投資を行うベンチャーキャピタルの運用者と話す機会がありました。中国における個人のITリテラシーは日本や米国に比べても極めて高く、スマートフォンをはじめ携帯端末を活用した生活が幅広い世代間で定着しているようです。既に80%の人々が固定PCではなく、携帯端末でショッピングなどを行うという生活スタイルに応じて次々と登場する新サービスは、中国国内のみならず世界でシェアを取れる可能性も秘めています。

大手機関投資家や運用者との面談を通じて中国への投資について聞いた場合、かなりの頻度で中国投資はe-コマース関連銘柄に集中していると聞くようになりました。しかし、既に中国におけるe-コマース市場は、リアルからのシェアをすでに十分に取り込んでいる可能性もあります。もちろん、収益の増加余地は他業界と比較して高く、中国への投資を検討するとすれば外せない分野であることは確かですが、投資家からの人気集中によって、市場における時価は、様々な指標からは常に割高な水準に見えます。したがって、株式への投資を検討する場合には、今後価格変動性が高まるリスクは十分に考慮したほうがよさそうです。

これらの話を統合すると、現在中国で起きている環境変化を捉えやすい投資対象は、マクロ環境や金融市場の影響を大きく受けやすい上場株式よりもe-コマース市場におけるダイナミズムを捉えやすいベンチャーなのかもしれないと感じています。