第393回 < 海外から見た日本への投資妙味とその継続性 >

最近、様々なところで海外投資家からの日本への投資の問い合わせが増えているようです。特に、不動産や未公開株式などの比較的長期の投資を検討する投資家からの問い合わせを受けるようになりました。これには、様々な要因が考えられます。

まず、この数か月の急激な円安によって、日本の資産が割安となったことが考えられます。長く続いた1ドル110円近辺の為替相場が、1ドル135円程度への推移となったことで、単純に計算すると、ドルを主要通貨とする投資家から見ると、日本の資産が2割近く安く見えるようになりました。既に日本の何らかの資産を投資対象とみていた海外投資家にとってみれば、好機到来と見えて不思議ではないと思われます。

また、このような円安のきっかけになった日米金利差も要因の一つです。例えば、日本国内で不動産やインフラ資産のような実物資産を購入する際には、海外投資家であっても、国内金融機関から円での借入が可能なケースが多いと考えれます。その際、既に3%を超えて推移している米国長期金利と比べて、ほぼゼロ金利が続行している日本での借入に大きなメリットが存在します。特に、米国の住宅金利が約6%まで急騰しいるのに対し、日本では1%未満での借入が可能です。このような金利差を利用した投資手法は、「キャリートレード」と言われますが、米国のみならず、多くの先進国、アジア諸国からも同様に見られ、様々な海外投資家が日本の収益不動産物件に対して興味を持つ要因となっています。

更に、地政学的な状況も海外投資家が日本への投資を検討する理由になっています。米中関係の悪化が長引く中、これまで見られていた米国投資家からの中国企業や不動産への多額の投資が滞るようになりました。これは、逆にも言えることで、中国投資家による米国への投資が難しくなっています。特に中国人投資家は、コロナによるロックダウンが長引くことで、さらに海外投資が難しくなる一方、中国国内の景気悪化により投資資金の行き場に困った状況が続いています。その中、対米、対中のビジネスチャネルを維持している経済大国としての日本に焦点が当たっています。いわば漁夫の利のような状況ですが、実際、米国投資家、中国投資家からの日本の不動産、ベンチャー投資の問い合わせが、増加しています。

他にも、幾つか要因がありますが、筆者は主に上記の3点によって日本の投資案件への問い合わせが増えていると考えています。これらの要因はいずれかの時点では解消されるものです。したがって、今の海外投資家の興味をとらえ、長期的な海外投資家とのリレーションを維持するためには、短期的なリターンにとらわれない質の高い資産、継続的なコミュニケーション、情報開示が重要と考えています。