第344回 < 在宅勤務について >

コロナ禍の影響で外出自粛要請が出て以降、在宅勤務、リモートワークを行う会社が一気に増えてきました。当社でも在宅勤務を行う機会が増えましたし、当社の株主である米国の運用会社はニューヨーク拠点であるため、緊急事態宣言が出た3月22日からニューヨークのメンバーは全員自宅などからリモートワークを行ってすでに1カ月が経ちます。今回のコラムでは、これまでの在宅勤務を通じての個人的な雑感を述べてみたいと思います。

今回の当社における在宅勤務で特に便利に感じたのは、クラウドベースに移行したことで、リモートからの利用が簡単になったファイルの共有、そして、マイクロソフト社のTeams、シスコ社のWebexZoomビデオコミュニケーションズ社のZoomなどが提供するオンライン上のビデオ会議機能です。これらの機能を使えることで、日々の業務はもちろん、社内外の打ち合わせもビデオ上で可能になりました。使ってみるとあまりに便利であるため、これまで電話会議で済ませていた海外投資家や株主との打ち合わせもビデオ会議に移行しました。セキュリティ上の問題も指摘されており、機密情報のやりとりには慎重になるものの、相手の顔をリアルタイムで見ながら話ができることは、個人的にはとても安心です。また、画面上で資料を共有しながら話を進める機能を使うことで、対面のミーティングに比べても会議が効率的に進むことがあるように感じます。場所や時間帯の制約によって、これまで一度の会議には参加できなかった人々もビデオ会議であれば参加できることから、コミュニケーションの量はむしろ増加しているかもしれません。

これまで、リモートワークの普及は、育児や介護、あるいは従業員のモティベーション維持のための福利厚生的な観点で語られることが多かったと感じていますが、このように強制的に多くの人々がリモートワークを長期に経験することで、人々の働き方が大きく変わるきっかけになると思います。自宅での業務を行っていると、生活音が気になったり、小さなお子さんがいらっしゃるご家庭では仕事に集中できないこともあるとは思いますが、実際に様々な方々とビデオ会議を通じて打ち合わせしてみると、皆さん、それぞれに対処されているようです。

なによりも多くの方々がプラスに感じているようなのは、通勤時間の削減による効果です。通勤時間は人によって異なりますが、日本人の平均的な通勤・通学時間は1時間19分(出典「平成28年社会生活基本調査結果」(総務省統計局))だそうです。通常、通学時間は短いでしょうから、通勤にはより長い時間がかかっているものと思われます。日本の通勤時間、特に東京近郊にお住いの方の通勤時間は世界的に見ても長時間ということですので、在宅勤務によって、この通勤時間が削減されることは、有効な時間を創出する機会になり、その効果は特に日本では大きいのではないかと思われます。

現在、コロナ禍によって半ば強制的な形で始まり、個人も会社も手探りの中での在宅勤務ですが、体験してみて明らかなメリットも感じられます。コロナ禍は長引くかもしれませんが、いつかは必ず終息するものですが、今回が契機となって変わったリモートワークの流れはことによると不可逆で、人々の働き方の転機になるかもしれません。この機会に、効率的な働き方、在宅勤務によって創出された時間の有効活用などについて、さらに考えていきたいと思います。