暑い夏、と解いて、引っ越しとかける。その心は

浅草は7月も終わると8月の終わりまで何があるわけではないので町が静かになる、はずなのですが、このところは和装で人力車に乗って、街中で映える写真を撮っては(出来立ての熱いものからひんやり冷たいものまで)食べ歩いて、なんて感じで、何気に人出が減ることがなくなってきたのですが、私がぴちぴちの学生だった時分にはって、今どきの若者の流行りのエイティーズやナインティーズの頃なわけですけど、町中がどういうわけかゴミだらけになった花火大会の翌日あたりからお盆にかけて、まぁ、ただただ暑いだけでしたし、浅草寺の境内なんてそうそう日陰なんてないわけですので本当に暑い。そんな暑いところにわざわざお参りに来る人なんていないので、町が静かだったし、土産物屋なんてやっていてもお客さんが来るわけもなく開店休業ですから、うちの店先でやっていたかき氷なんて従業員や私みたいなバイトが食べて涼んでたって感じでした。

まあ、あの頃に比べて今はもっと暑くなったなんていいますが、当時もいい天気でしたねぇ。

昔から浅草の夜は早い、と言いますが

ところで、江戸の昔から、浅草をはじめとして、東京の西側の人だと新宿の花園神社などのお参りするところ、というのはお参りすることがメインの外出の言い訳で、お参りをしてご利益を頂いて、さあ、ってんで、門前町から北側の歓楽街に流れて遊んでいこう、ってのが昔からのエンターテインメントってやつでして、だから、不思議とお寺さんとか神社の北側というのは飲み屋が多いわけなのですので、言い換えれば、昔なんざお参りに行かなければ来るような場所ではなかったのでしょうね。しかも、浅草は夜が早いってずっと言われていますが、それもそのはず、お寺の本堂が開いているのは午前6時(冬でも6時半)から午後5時まで。ちゃんとお参りする人はこの時間に来るので、そのお参りをした後にうなぎやドジョウ、すき焼きなんか頂こうってのが習いだった訳ですのでどうしたって始まりが早ければ終わりだって早い。うちのご近所で有名な鳥鍋屋さんに金融関係の知人を連れて行こうとすると、仕事の終わりがどうしたって6時過ぎてそこから丸の内やら大手町から浅草に行こうっていうわけですのでどうしたって、「始まりが7時?遅いわねぇ。早くならない?」と、女将によく怒られたものです。

ところが、まぁ、最近では、お参りは二の次、お目当てが最初から飲み食いする事だったり撮影だったりと、理由の多様化って、最近はなんでも多様化しちゃうわけですが、まぁそのおかげで午後6時とか7時になっても本堂から宝蔵門あたりまでお行儀のいい列が出来ているのです。ですが、その列の目指すのは扉のしまった本堂の前のお賽銭箱。せっかくだから扉の先の観音様にちゃんとお参りしてくださいな、そもそも神様仏様に頭を下げるのは午前中がいいんだよ、なんて思っちゃうのは私がそこそこに年を取ったからか、(物理的に)丸くなったから、かもしれませんが、それでも、本当は夏でも浅草に人が来てくれるってことはいいことなのですよ。

いい天気ですし。

さて、良い天気の時にやること、ではないですが。。。

とはいえ、このオリンピックの開会式のための4連休、いい天気でしたね。なのに。わが社はお引越しでした。ちょうどその作業の最中に書いていますが、荷物は無事全部運び込まれ、PCなどもデスクに全部並び、やっとたぶん週明けから問題なく上場株のトレーディングも出来そうってところまで会社のビジネスインフラが整ったのを確認したところでした。ここに来るまでに連休の二日が掛かりました。ITをはじめとするビジネスインフラの責任者であるCOO的にはほっと胸をなでおろせそうです。といっても、これまで小所帯だった旧あけぼのの引っ越しに比べて、20人を超える体制になっての引っ越しで、駅直結の大型インテリジェントオフィス(笑)といういろいろとビル側との調整が必要で、かつ親会社の引っ越しと歩調を合わせて行う、なんて大掛かりな引っ越しでしたので今までと具合の違う引っ越しだったなぁ、とちょっと振り返っています。ええ、こういう引っ越しですから、そういう総務的な調整等を一手に引き受けてもらう人が一人いてほぼ引っ越しにつきっきり、またIT周りも急なオフィスレイアウトの変更のおかげでITインフラの大掛かりな変更を一気に進めることとなり、IT担当がほぼつきっきりで綱渡りのスケジュールをこなしてくれて、私はただただ旗を振っていただけでしたので、お前が偉そうに振り返るなんて言うな、と当の本人たちから怒られそうですが(苦笑)

弊社の窓際から

ビデオ会議の壁紙にどうぞ!

しかし、旧あけぼのの最初の引っ越しから数えて1年半ちょっとで3回も引っ越しなんて、周りから見たら引っ越しマニアか何かの理由で逃げ回っているんじゃないの?なんて思われそうですね(苦笑)まぁ、それだけ、こんな環境にも関わらず短期間でいろいろなことが起こった証拠でもあるのですが、とはいえ、何かから逃げているわけじゃないですし、前回の引っ越しの記事で触れましたが個人的にほぼ引っ越していない私ですから、もちろん引っ越しマニアだってわけではありません。

引っ越しマニア?それとも落ち着かないだけ?

で、引越しマニア、で思い出したのが、昔の天才たち。引っ越しマニアで有名なのが浅草のお隣の墨田区が一押しして(私も設立時にちょっとだけ寄付させて頂いたのですが)彼のための美術館まで作った、葛飾北斎は90年の人生で93回も引っ越しをしたそうですが、一説に同時期の有名な歌人で100回引っ越しをした人がいたそうでそれを目指して引っ越した、という話もありますが、それ以上に有名なのが、単に掃除するのが嫌いだったから、使いっぱなしで出て行った、という、今なら原状回復費用ばかり取られるような理由だったそうです。とはいえ、江戸の頃は原状回復工事なんてなかったものの、引っ越し費用はそれなりに掛かったそうで彼の生活は絵をかいて儲かっているはずなのに溜まらず。しかも93回目の引っ越し先が以前住んでいたところだったのに、なんと彼が散らかしたまま出て行ったあと誰も入らなかったので、その状態がそのままのところに舞い戻ったものですから、その惨状を見て引っ越すのをやめたそうです。どれだけ散らかし放題だったのでしょうか。。。

もう一人、ぱっと思い出したのが、松尾芭蕉。彼の有名な「奥の細道」の序文でも彼は旅行をしたくてうずうずした結果「住める方は人に譲りて、杉風が別墅に移るに」庵に自分の句を掛けるって、著名な先生だから出来る話ですが、いきなり別荘を持っている弟子のところに転がり込んで一句掛けるなんて、掛けられたほうは迷惑だったんじゃないかなぁ、なんてふと思いました。とはいえ、芭蕉さん、この人は引っ越しマニア、というより、ただの旅好きで、今でいう江東区の深川の、隅田川のほとりに「深川芭蕉庵」という家を構えていたそうで、今もそのあたりとされる隅田川沿いの眺めの良さそうなところに芭蕉記念館が建てられていますが、どうやら、家はあったが主は旅に出っぱなしだった、そうです。芭蕉さんは旅先で俳句を詠み続けていたわけですので、いわば、ひたすら仕事をしていたわけですが、今でいうところのワーケーション、といったところでしょうか。

弊社の引っ越しの先にあるもの

さて、さすがにオフィスの使い捨てって訳にはエシカルでエコロジカルでビジネスにSDGs (!)の求められるこの21世紀では難しいとは思いますが、どこででも仕事ができたりするノマド的な働き方であったり、ワーケーションなども含めて、今回のオフィス移転を端緒にいろいろと今後に向けてやらねばいけないことがあるように思いました。

元々ノマド的な働き方に慣れていて、そろそろ東京を離れてワーケーションをしたいと思って準備中の私ですが、個人的には私物を段ボールひと箱に今回納めました。中身を見ると、あけぼのに参加してから頂いた仕事の名刺と美味しかったお店の名刺、頂き物の本が数冊、あとはファンドの運営上サインした書類の束でしたが、次回はそれすらなくすように常に身軽でいられるようにしようかな、なんて考えています。そのためには書類という書類は出来るだけ電子化するのと同時に自分で抱かえないようにする、頂いた名刺もデジタル化してチームで共有したら処分してしまう(せっかく頂いているのにごめんなさい、なのですが)、頂いた本は会社のライブラリーに置かせてもらう、って、何でもかんでも会社の誰かに押し付けているような感じがしてきた(苦笑)
とはいえ、とある超大手監査法人/会計事務所さんは、過去10年に2回大きな引っ越しをした際に、引っ越すたびに個人のスペースを半分に減らしたそうです。実際、事務所に来る時間よりもクライアントのところに常駐することの多い仕事だから、とはいうものの、なかなか厳しい判断をしているなぁ、なんて聞いた時には思いました。

新しいオフィスはIT システムだけで出来るわけでなく

なんて言っていると、どうしてもその先には、会社で管理する書類も電子化して印刷しないようにする、世にいう稟議なんてものもオンラインで出来るようにしてハンコを押すことをできるだけなくす、契約書も出来るだけ電子署名に切り替える、書類自体もある程度になったら倉庫に送っていつでも出せるようにして手元には最低限にする、といったルール作りをしていくのでしょうね。

さらに言えば、業務によっては、そこでやるべきなのか、という根本的な問いかけをし始めることになりそうです。情報に遅延を許容できない、もしくは物理的制約の高い仕事ならば、インフラの整ったオフィスでその業務をするべきでしょうし、それほどでないならばチームと必要な情報のやり取りのできるインフラなのか定例ミーティングさえあれば、家でもオフィスでも旅先でも自由に出来るようにする方がメリハリがついて仕事のクオリティやモチベーションが高くなるでしょう。そういう仕事の性質を踏まえて、オフィスのあり方も、フリーアドレス制やリモートワークの組み合わせも取り込むことでオフィススペースを増やすことなくチームを大きくする、とはいえ、対面のコミュニケーションも大事にしたいと考えるならばサテライトオフィスを作るけど今のオフィスのインフラでサテライトオフィスも管理できるようにする、など、ということも視野に入ってくるのかもしれません。これらを実現するには、最新のテクノロジーを使った高度で複雑なビジネスインフラも大事ですが、運用する人のルール作りやそれを運用しやすいようにするシンプルな環境、そして、リモートワークやワーケーションが普通に出来るライフスタイルも必要になってきます。

とはいえ、これを行うには、ITだけがキーになるわけではなく、人の行動の習性も考えなければいけないようでして、知人から聞いた話では、とある会社さんでフリーアドレス制を導入するにあたり、全社員の席の数だけ揃えたそうです。その結果、大学のサークルの溜まり場、もしくは縄張りの如く、必ず同じところ(しかも窓際)にその部署の偉い人が座り、そこから役職順に部署の人があつまってしまい、リモートワークは進まないわ、全く席の入れ替えも起きなかったそうで、結論として、その子会社では社員数の半分だけ席を準備することにしたそうです。また、別の会社さんでは、社員間の好き嫌いがはっきり席選びに出てしまったそうで、そこでは出社したら今日はそこに座るように、入り口で指定するシステムをわざわざ作って導入したそうです。

という事で、ここらでまとめでも

こういう話も聞いてしまうと、導入するには、このシステム、かっこいいからやろうか、だけではダメなようですが、とはいうものの、こういう会社の中の大きな変化を導入する一番のチャンスっていつでしょう。やっぱり引っ越しなんですよね。なぜかって?それは物やルールの要否を見直して、色々なものを入れ替える、という会社の方向や方針を打ち出す、最近流行りの言葉で言う断捨離を一気に進めるいい機会なんですよね。

そういう意味でも、弊社も合併してちょうど半年、しかもグループ各社との物理的な距離も近くなる意味でも今回の引っ越しは今後にとっても

いい転機

になりそうです。(どこかの転職支援サービスの宣伝のパクリ?)

おあとがよろしいようで。