白木信一郎の「投資運用苦楽」

第305回 < LCC(ローコストキャリア)について >

最近、従来のFSC(フルサービスキャリア)といわれる航空会社の飛行機で旅行するよりも、LCC(ローコストキャリア)といわれる格安航空会社の飛行機で旅行する機会が増えてきました。特にプライベートで旅行するおりには、価格面からはかなりお得に旅行できるのが魅力です。また、LCCの種類が増えたことで様々な目的地に対応できるようになってきています。昔に比べると飛行機による旅行が、身近な移動手段として捉えられつつあり、また、選択肢が増えたことで、快適さと価格の最適点を探しやすくなっています。

一度は破綻したスカイマークが投資ファンドであるインテグラルとANAホールディングスの支援を受け、オペレーション面の向上などから業績を大きく改善したことや、大手LCCがここ数年のインバウンドの追い風も受けて業績改善とともに所有航空機の数を増やすことで、利用者の利便性が向上し、結果としてLCCのイメージがだいぶ良くなっているように思えます。

2014年くらいまでの世論は、当時の記事を読み返してみてもLCCはビジネスモデルとして成功しないのではないかという、やや否定的な論調でした。一部を除いた国内LCCが軒並み大幅な営業赤字を計上していたことや、利用者が持つ格安航空というイメージが悪かったことが原因だったと思われます。実際には、欧米で早くから確立したモデルであり、アジアでも急速に伸びてきたLCCが日本でも持続可能なビジネスとしてこの数年で急速なキャッチアップを見せました。

LCCに対して出資をする投資家から見ると、増便と旅客数の上昇により売上が増加傾向にあり、最近では利益率の高い国際線の増加やオペレーションの改善などから黒字転換が相次ぐLCCは投資妙味のある分野の一つと考えられます。既存のFSCを展開する航空会社としてみると、LCCは競争相手として脅威となる存在である一方、異なる顧客層を開拓できる手段として出資などを通じて参入したい領域でもあります。

15年ほど前の英国在住のおり、地の利を活用してヨーロッパ諸国を当時流行り始めたLCCで訪問しました。回線速度の遅いインターネットを経由して、苦労しながら少しでも安いチケットを取っては満足感を得ていました。チケット取得後もFSCに比べて多少不便な空港の乗り場を経由し、いつもほぼ満席の飛行機で移動をしていましたが、不思議と不満は感じませんでした。

今回利用したLCCの機材はボーイング787で、食事やエンターテイメントなどのオプションは一切付けませんでしたがきわめて快適な旅でした。売上、利益が増加していく中で、日本のFSCとLCCの関係がどのように変化していくのかは、日本における総旅客数などの環境が左右する部分もありますが、今後の利用者にとっての価格と利便性の最適点をどのように見極めていくかによるのだと思います。これからも旅行の際には自分なりの最適点の追及をしながら飛行機のチケットを選択していこうと考えています。

あけぼの投資顧問株式会社 CEO兼CIO

ロンドン・ビジネススクール卒
1990年代はじめから債券投資、運用業務を経てヘッジファンド及びプライベートエクイティファンド等のオルタナティブ資産への投資を担当。ヘッジファンドの投資戦略に詳しく、セミナー、コンファレンス等において講師もつとめる。
AIMA(オルタナティブ・インベストメント・マネジメント・アソシエーション)日本の副会長。

著書:
[完全版]投資ファンドのすべて(2014)」金融財政事情研究会)
投資ファンドのすべて(2006)」(金融財政事情研究会)