白木信一郎の「投資運用苦楽」

第312回 < 2018年の投資環境予想を振り返って >

本年もたいへんお世話になり、ありがとうございました。今年も市場では様々なイベントが起きましたが、12月25日の日経平均1,000円超の暴落を含め、年末の市場参加者の少ない中、2月を上回る勢いで株式市場が急落しています。このコラムを執筆しているのは26日の午後なので、最終取引日の大納会まで2営業日を残していますが、年初に予想した市場環境を踏まえて、今年を振り返ってみたいと思います。

2018年は日経平均が初日に741円の上げ幅を記録するなど各国株式市場は力強いスタートとなりました。しかし、2月には米国の長期金利上昇を契機に株価は大幅に下落しました。その後、金利は落ち着きを取り戻し、株価や商品価格なども回復基調をたどり、米国の中間選挙を控えた10月には株式や原油等のリスク資産価格が年初のピークを上回るところまで上昇しました。その後、米国中間選挙の直前以来、相場はもみ合いながら下落基調に入ったといえます。その過程で、12月初旬には、米国の2年債と5年債の利回りが逆転する、いわゆる逆イールドの現象が11年ぶり起こっています。逆イールドは、景気後退期のシグナルと捉えられることが多く、市場参加者のマインドもさらに冷え込んでいる状況です。

以下、各アセットクラスに対する年初の見方と実態を比較してみます。

  1. クレジット戦略について、米国の法人減税を背景に米国社債投資からは良好なリターンが期待しました。米国金利上昇を背景に年後半の変動率上昇予測したのは的中したものの、リターンは想定を下回りました。ハイイールド債を中心とした社債市場に大量に流れ込んだマネーの逆回転は始まったばかりとの見方もあり、今後注意が必要な資産クラスです。
  2. 商品市場については、物価の上振れに焦点があたりやすい可能性を想定し、55ドル〜80ドルでの推移を想定しました。また、金価格も他資産の変動率上昇を背景に上昇を想定していました。実際には、原油価格が年初の60ドルから10月に76ドルをつけたあたりまでは想定通りでしたが、その後11月に想定の下限55ドルを割り込んだ後、年末にかけて40ドル前半まで価格が下落しました。一方、金価格は、リスク回避先として8月を底に年末にかけて上昇基調となっています。
  1. 米国金利については、10年債が11月に24%を記録しましたが、株価下落などを受けて年末には2.74%まで低下しました。一方、2年債は高止まりしています。日本の金利については、年末にかけての金利上昇方向でのボラティリティ上昇を想定していましたが、10月以降の急激な金利低下によるボラティリティ上昇となりました。
  2. 2017年に高い上昇率を見せた中国をはじめとするエマージング国の株式市場でしたが、2018年は、1月末以降一本調子の下落となりました。
  3. VIXについて、20程度までの上昇を想定していましたが、年末にかけての市場急落で30を超えての推移となり、これも想定を上回るものとなりました。
  4. 日本株については、年末に向けての波乱を想定していました。しかし、年間を通じては堅調な株価を想定していたのに対し、実際には日経平均株価が20,000円割れとなり、想定よりも大幅な下落となっています。

このように、2018年の市場は年初から2月と10月を二つの山とする、いわゆるダブルトップを形成して下落局面に入り、年初に想定していた相場環境と比べて厳しい状況となっています。全体的に想定よりも多少早いペースで市場サイクルが進んでおり、このままいくと2019年は上値が重く下方向を目指す展開が多くなりそうです。

一方、米国の金利上昇、米中間の貿易摩擦、トランプ政権の危うさ、中国の不良債権問題への不安などはあるものの、金融機関破綻や倒産率の急増といった金融危機を引き起こすような問題はまだ顕在化はしていませんし、米国経済は好調な雇用や消費の観点からリセッション入りする状況にはありません。しかし、マネーが膨張した今のような経済環境で、資産価格の大幅下落が金融機関などを通じて実体経済にマイナスの影響を与ええるのは21世紀の常識になりつつあります。米国は他国に先駆け、金融機関に厳しい資本規制を課し、レバレッジを抑制してきました。資産価格の負のスパイラルは、むしろ米国以外で顕著に起こるかもしれません。

来年、割安投資機会が生じるのか、いわゆる「落ちているナイフを拾うな」という相場の格言どおり、投資家が様子見をする中で下落相場が続くのか、様々な資産クラスについて市場要因を踏まえて考察していきたいと思います。