白木信一郎の「投資運用苦楽」

第318回 < 地域金融機関における市場部門のあり方 >

先週の日経新聞朝刊を見ていると、「低収益地銀には改善命令」という厳しいタイトルの記事が目に入りました。何か、新しいニュースがあったわけではなさそうなので、金融庁のスタンスを知らしめるための意思表明のようにも見えます。その記事には、今年の夏に地銀の存続可能性に関する一斉点検に着手するともありました。全国106行の地銀の半数以上の54行が本業で赤字に陥ったこと、また、スルガ銀行のようにガバナンス問題が表面化した事件が発生したことから、銀行を監督する立場にある金融庁としても何らかの方策を示さないといけない状況にあると理解しています。

金融庁は、これまで銀行の健全性を足元の自己資本比率で観測してきた方法から、将来の自己資本比率や収益力の見通しを重視したものに転換する、とのことですが、今回の記事にはそのガイドラインについてまでの言及はありませんでした。一般的に、銀行の本業収益とされている業務純益は、貸出金利息、有価証券利息配当金、手数料ビジネスからの収益、有価証券売買益から経費を除いたものとされています。しかし、有価証券売買益は市場の動向に左右され、振れ幅も大きいとみなされ、金融庁が銀行の本業収益としてみているのは、上述の業務純益から有価証券売買損益を除いた、コア業務純益となります。

地域金融機関は、このコア業務純益を将来にわたってプラスにするような経営体制を持つようにする、というのがひとつの考え方です。超低金利環境下で、貸出金利息の利ざやが取れない中、地域金融機関は、地域におけるソリューションビジネス等の手数料ビジネスの強化や全般的なコストカット等、様々な挑戦と痛みを伴う改革を行っていく必要があります。また、金利低下局面が長引き、保有国債の含み益が消えつつあります。つまり、本業とは見られないものの、業務純益には含まれる有価証券売買益が大きく銀行の収益を助けてきた局面がついに終わりを告げることになります。これは、1990年代後半に長期金利が2%を下回り、実質金利がゼロ近傍まで低下した局面と似ています。当時の大手銀行の淘汰と合併の波が、今後の地域金融機関で起こることも予想されます。

そのような中、前述のコア業務純益の中には組み入れられない、有価証券の売買益を稼ぎだしてきたのは、銀行の市場部門です。しかし、従来、国内銀行の中で市場部門はコアビジネスとして位置づけられることが少なく、付随業務として補完的位置づけとして扱われてきたことが多かったと思われます。今後、現在106行ある地銀が、それぞれ特色を出し、将来的な持続可能な事業計画、収益目標を立てる必要に迫られる中、その中には市場部門をコア業務と位置づけ、有価証券トレーディングに強みを見出す銀行が出てくることもあるかと思います。

これまで、有価証券取引を中心に行う市場部門人材の育成は、融資業務やアドバイザリー業務と比べて銀行の中では限定的だったかと思われます。しかし、継続的なコア業務として有価証券取引を行うためには、市場部門の人材強化とリスク管理の強化は必須事項です。また、経営トップが、市場に対して深い理解を持つ必要もあります。金融機関が変革を迫られている今日、私たちもこれまでの経験を活かして、何かお役に立てることがないか、日々考えて行動していきたいと思います。