第319回 < 花粉症について >

5年以上前から毎年2月から5月にかけて花粉症に悩まされています。その当時、くしゃみ、鼻水、目のかゆみと典型的な症状が出始めたときは、周囲の長年重度の花粉症に悩まされていた友人、知人から聞いていたとおり、自分のアレルギーコップが溢れてしまったのかと、一種諦めに似た気持ちになったことを覚えています。それでも、最初の頃は自分が花粉症になった事実を認めたくなかったことや、正しい知識を持ち合わせていなかったことから、マスク等の花粉対策や薬の服用を行わず、症状は悪化の一途をたどりました。当時、米国では花粉症はない、という根拠の無い噂を信じ、米国出張時にセントラルパークをランニングしたときにはくしゃみと涙が止まらなくなりました。

2-3年前から、自分の花粉症に正面から向き合うことにしました。病院で血液検査を行い、自分がどのような花粉にアレルギーがあるのかを調べたところ、一般的に聞くスギ、ヒノキはもちろんのこと、ハンノキの花粉への反応が飛びぬけて大きいことが分かりました。恥ずかしながら、ハンノキを意識して見たことがなかったので、レアな樹木だろうと軽く考えていましたが、全国に分布しており、また、シラカンバ(白樺)も仲間に当たるらしく、それなりに影響を受けているようです。更に、ハンノキ花粉のアレルギー反応が出ると、一部の果実や野菜の摂取でもアレルギーが出る可能性が高まるようです。私の場合は、ちょうど数年前から豆乳を飲むと喉がイガイガすることがあって、飲むのをやめていたのですが、どうやら同じアレルギーの種類ということが分かりました。

最近では、症状を抑えるために外出時にはまめにマスクをすることを心がけ、2年前から強めの抗ヒスタミン薬を症状の出ない1月後半から服用することで、発症当初よりもだいぶ楽に過ごせるようになりました。所謂、免疫療法なども試してみたのですが、3年がかりでの治療となるうえに、効果の保証がなく、さらに、現在の日本ではスギ花粉症対応のみということで、ハンノキ花粉アレルギーの私としては当面、抗ヒスタミン薬による対処療法に頼ることになりそうです。これも調べてみると、米国などでは複数の花粉アレルギーに対応する免疫療法を受けられるらしいのですが、日本での導入は遅れているようです。

各種のアレルギーが、体質改善などで自然に改善するケースもあるようなので、花粉症についても自然治癒を期待していたのですが、原則、病原菌等に対する免疫と同様に「花粉は異物である」との情報が細胞レベルで記憶されてしまうため、自然治癒を期待できないようです。このように、調べてみれば見るほど、回復の可能性を感じられず残念な気持ちになります。しかし、20年、30年と花粉症と付き合っていらっしゃるベテランの方とお話をしていると、多くの皆様が、花粉症とうまく折り合いをつけて暮らしていることがわかります。スギ、ヒノキを中心とした植林政策や近代化の影響によるライフスタイルの変化から、多くの人が苦しむ典型的な現代病である花粉症。望むらくは、ブタクサやヨモギによる秋の花粉症を発症する事態には至らないでほしいと願っています。花粉症の根治薬の登場を願いながら、今年も4月下旬のシーズン終了を控えて少しほっとしています。