第260回 < フィンテック分野でのチャレンジ(2)  >

最近は新聞紙面を開けば、人工知能(AI)、すべてのモノをインターネットで結ぶというIoT、ロボット、フィンテックの言葉が躍ります。第3次人工知能ブームとも言われ、多少過熱気味の感もあります。これまでベンチャー投資に決して積極的ではなかった大企業や投資家も大型の投資を行っています。事実、2016年は国内のベンチャー投資が過去最高を更新するペースで進んでいます。なぜ、いま、この分野への投資が増えているのでしょうか。

技術の向上によって商業化が可能になったAIの特徴であり、優位な点は大量のデータを短時間で処理できることです。グーグル等に代表されるIT企業が巨額を投じてこの分野の成長を加速させてきました。アルファ碁に代表される目に見える成果がメディアに取り上げられることにより、より広範な起業家、企業担当者、投資家がこの分野へ参入しています。インターネット以降、分かりやすいイノベーションに飢えていた社会にとって、格好の材料ともいえます。

金融業界において、経験やスキルを拠りどころに長らく人の手によって行われてきたことがAIに置き換わることによって生じる変化はなんでしょうか。前回のコラムでも述べたように、資産運用の分野には徐々に機械学習やディープラーニングによってファンダメンタルズ分析を行う手法が登場しています。また、融資の分野では既にクレジット審査等を行うにあたって、ビッグデータを取り入れた手法が取り入れられています。他にも、既にインターネットショッピング等の分野でユーザーの好みを抽出し、それにマッチした商品を提示する技術が実用化されています。今後は金融商品の分野でも同様のことが起こると思われます。

その際、既存の金融機関がこれらの変化を取り込んでいけるのか、それとも、まったく別の分野の企業が参入するのか、あるいは、ベンチャー企業がイノベーションを起こして、業界をリードしていくのかを見ていくのは楽しいことです。今回、当社が発表したヤフーとの提携は、インターネット企業である同社による金融業界への参入を意味します。今後私どもが提供していくサービスや商品は所謂フィンテックに分類される領域といえるかもしれません。

もっとも、ITバブルに湧いた1990年代後半から、2000年に入ってのバブル崩壊を思い返せば、慎重になるべき時かもしれません。どの分野でもそうですが、どんなに優れた技術であっても、ユーザーの支持を得られなければ意味がありません。金融業はサービス業であり、人々の生活の基盤となるものです。私たちは、ヤフーとの提携を通じこれまでにない大勢の方々に金融商品をお届けできるチャンスを得ました。だからこそ、より大きな責任感をもって金融商品の組成、運用に取組んでいく必要があります。フィンテックという流行語が過去のものになる頃、今回の取組の成否が問われると考えています。