第236回 <  日本のマイクロキャップとベンチャーキャピタル  >

株式市場は緊張感の高い展開が続いていますが、昨年に続き今年のIPO市場は活況です。10月1日上場予定の会社まで合せれば、既に2013年の実績を上回る件数となることは確実で、昨年を超える上場件数が期待されます。また、昨年のリクルート、今年のサントリー食品インターナショナル、さらには11月に上場を控えた日本郵政グループなど、大型上場も相次いでいます。しかし、相変わらず新興企業の新規上場に関しては、200億円規模の時価総額を超える会社が数社ある程度で、多くは100億円未満、中には10億円を割り込む銘柄も見られます。結果的に、国内市場には、他国市場と比較して、非常に多くのマイクロキャップ銘柄が存在することになっています。米国市場は、上場基準が日本と比べて大きく違うわけではありませんが、上場企業に占めるマイクロキャップ銘柄はわずかです。

少し前に話した起業家の方曰く、日本で新興企業が資金調達する環境は、米国に比べてかなり過酷であるとのことでした。特に、米国に存在するエンジェル投資家や、起業後間もない時期の会社に投資を行うベンチャーキャピタル(VC)が足りないのが一つの要因ということでした。我々も、過去に、国内、海外のVCにいくつか投資をしてきましたが、日本のVCは投資額、投資実績ともに米国のそれと比べて大きく見劣りしてきました。日本のVC会社は大手金融機関の系列や上場VC専業会社で占められてきたことから、VC自身に対して比較的短期の収益回収が求められてきたことも一因かもしれません。また、米国では、自らが創業と上場を経験したような人々がVCの運営を行うケースがよくみられるのに対して、日本では、起業経験者によるVC運営がほとんど見られなかったのも要因かと思われます。

変化は見られます。IT企業を中心に現経営陣によって創業された企業によるコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)は、フットワークも軽く、自らが得意な業種における投資に対しては、自社の自己資金を活用して長期でのコミットも行います。さらに、従来型のVCの中にも長年の経験を通じて、あるいは海外VCで経験を積んで、熟練したベンチャーキャピタリストとして、長期にわたって起業家をサポートする動きも出てきているように感じます。5年、10年がかりで投資を行い、それでも投資が成功する確率が低い企業後間もない会社に投資を続けるVC投資家には、投資案件を見つけ出す優れた嗅覚は勿論ですが、それ以上に、忍耐力とコミュニケーション能力が求められると思います。

長期かつ大きなビジョンを持つ起業家に対して、まとまった規模の資金を長期的にコミットできるVC。マイクロキャップ偏重の国内株式市場を変えていくために、ひいては、日本の金融市場の活性化のためにも、素晴らしいVC投資家が増えてくれることを願いつつ、これからもVCへの投資を続けていきます。