第178回  <  海外投資家による日本への投資 >

日本株(日経平均)の上昇幅が2012年に22.9%、2013年は、1月から本日(4月9日)までに既に26.9%にのぼっています。アベノミクス、黒田総裁による日銀の超緩和政策をきっかけとして、為替の円安誘導も進んでいます。しかし、20年間のデフレ、低成長に喘いだ日本経済の一大転換期の訪れを国内投資家は、未だに慎重な目で見ているように思えます。それは、過去の経験に縛られる私達にしてみれば仕方のないことだと言えます。

一方で、海外の機関投資家は、これまで自分達のポートフォリオの中で相当にアンダーウェイトとなっていた日本株への見直し気運は高まってきているようです。不動産に関しては、銀行の姿勢が積極化してきたことで、融資比率が上昇し、利回りの向上が見込まれます。また、株式市場の流動性が上昇することで、海外大手投資家の投資基準を満たす銘柄が急増しています。もっとも、2004年から2006年にかけて日本市場に参入した投資家が、その後3年間にわたり相当の痛手を蒙った経験を覚えており、諸手をあげての再参入とはなっていないようですが、国内投資家に比べれば、動きは早いように見えます。

今年に入り、幾つかの海外運用会社の投資戦略会議に参加しました。米国、欧州、アジアのどの会議でも、ここ何年もなかったことですが、日本に対する投資の割合をどの程度まで「引上げるべきか」が議論の中心になっていました。その際、あまりにも日本に関する投資から離れていたこともあり、議論の内容があまり深くない、言いかえれば、大半の運用会社に日本通の担当者がいなくなってしまった状態だと感じています。そのため、海外拠点で長期にわたり日本株や不動産に細々と投資を続けてきた運用会社には、その専門性を求めて様々な投資家の資金が相当流れ込んでいるようです。

過去にも見られたサイクルですが、金融機関のレバレッジが効きやすく、リターンの計算もし易い不動産に海外投資家資金が最初に流れ込み、その後、グローバルのリサーチのカバレッジが多く、情報が取りやすい大型株式に資金が入ります。その後、大型株式の上昇を一定期間確認できると、中小型株式へのシフトが起こります。持続期間は過去もまちまちでしたが、最近では中小型株への資金流入は、2004年から2005年にかけての2年間が特に顕著でした。

同時に、よりニッチな投資機会を求める海外投資家の活動が活発になります。例えば、不良債権や在庫そのものに対する投資、地方の不動産物件、低位株式、未上場株式など、流動性が低いものの利回り妙味のある投資機会を探し出してきます。この頃になると、地方都市の主要駅にビジネススーツに身を包んだ外国人の姿が目立つようになります。過去の経験則に頼るならば、そのような状態まで進んだ頃には、相場の上昇も落ち着き、下落局面も近いと思われます。

今朝、話をしたシンガポールの大手機関投資家は、今回の自民党政権が官僚との軋轢がなく、長期政権になるようであれば、腰を据えた日本投資を行なう好機だと語っていました。更に、不動産や株式に止まらない、これまでにない、投資機会の広がりが出てくるのではないか、という期待を持っていました。1997年、1998年、2002年、2003年、2006年から2008年と外的要因と日本独自の問題が重なって、景気回復、あるいは成長のチャンスの腰を折られてきた日本ですが、今回の海外投資家からの高まりつつある期待感にこたえられる投資機会を提供できるよう、運用と金融商品の組成を通じて貢献したいと思います。