白木信一郎の「投資運用苦楽」

第118回 < 海外出張と読書 >

今ロンドンに来ています。今回は急な用件だったことや、翌週にアジア出張を控えていることもあり、ロンドン現地滞在は36時間です。いくつか大事なミーティングがあるとはいえ、飛行機、電車や車で往復に費やす時間が24時間以上かかることを考えると、しっかりと成果を出さないと効率的な出張とはいえませんが、これは事前準備の量と当日の運にもよります。この仕事を始めてから約15年間、現地滞在時間の短い慌ただしい海外出張にも慣れてきました。数年前に、ある業務の交渉の最終段階でシカゴ滞在10時間の出張を数回敢行したこともありました。

このように、長い移動時間を少しでも有効に使いたいと思っていることと、日常では思うように時間が取れないこともあり、出張前に読みたい本を何冊も買い込む習慣があります。飛行機はなにしろ狭い空間に長時間閉じ込められ、動くこともないので読書には理想的な状態です。基本的に食事などのサービス以外の邪魔は入らず、思う存分本を読むことが出来るのは、私にとって幸せな環境です。今回も、最近読みたかった400ページ以上の本を2冊(岩田一政元日銀副総裁著の「デフレとの闘い」と、ロバート・P・クリース著の「世界でもっとも美しい10の物理方程式」)をはじめ、他にも手軽な文庫本を数冊携えてきました。今回のような短期の出張では、かばんの重さはPCと本が半分以上を占めています。前から読むのを楽しみにしていたので、かなり有意義な移動時間になりました。また、時差があることから夜中に寝付けないときも、本があれば安心です(このコラムを書いているのはそんな時間です)。

家にいても、夜中は普通に思索にふけるには良い時間だと思います。しかし、出張先で出会う、人々やその考え方、さらには周囲の景色や環境などから与えられる非日常性が、読書をすることや考えることに良い刺激を与えてくれるようです。これは高校生のときにはじめて一人で海外旅行をし、3週間のホームステイを経験したときから変わらない感覚です。移動中や旅先で読んだ本の内容が、日常に読んでいる本に比べると頭に残りやすいのもこの刺激のおかげかもしれません。

私にとっての出張は、最近の読書量の低下を補う絶好の機会というだけではなく、新しい発想を思いつき、また、いままでの考えを整理する、とても重要な場になっているのだなと感じます。来週は、香港とシンガポールに5日間滞在しますが、業務時間の効率を優先して、ほとんどの移動に深夜便を利用します。飛行機と夜中という、私の読書にとっては最高の二つの組合せではありますが、さすがに疲れてそれどころではないかもしれません。どうなるでしょうか。

それはそうと、今回読んでいる岩田一政元日銀副総裁著の「デフレとの闘い」は、日本だけではなく、現在の先進諸国の金融政策を考える上で非常に勉強になる著書だと思います。帰りの飛行機でも読み直し、今後の投資判断を行う際に参考となる要素を取り出してみたいと思っています。