第359回 < 2021年度の財政投融資計画について >

このコラムを執筆している12月21日付の財務省からの報道発表で、2021年度の財政投融資計画が過去最大の40.9兆円になるとされました。2020年度予算の13.2兆円の3倍超、という見出しでしたが、少し気になってみてみると、2020年度は、3次補正案を経て、既に65.1兆円の計画案へと補正されていました。コロナ対策として51.9兆円が加算されていますが、直近補正案の財政投融資先は、高速道路整備や空港インフラ整備などが中心となっており、必ずしもコロナ関連だけではないようにも見えます。同じく21日付で閣議決定された、過去最大の一般会計予算である約106兆円と比べても、相応に大きな額になります。もちろん、2021年度予算のうち、半分以上の25兆円程度はコロナ禍の長期化に備えた企業の資金繰り支援のための予算で日本政策金融公庫に割り当てられています。

財政投融資という言葉はあまり馴染みがないと思いますが、考え方自体の歴史は古く、明治時代にさかのぼります。また、形式的な意味での財政投融資の起源は昭和28年にありました。その当時は、郵便貯金や年金を原資として、戦後復興、その後の社会、生活インフラの整備のための資金として使われてきました。また、財政投融資が国債の引受けにも充てられていたのは興味深い事実です。

当時から、財政投融資は、通常の民間からの投融資では困難な、高い公共性を持つ対象への資金供給の役割を担ってきました。しかし、資金使途の決定プロセスのガバナンス問題や、郵便貯金や年金を原資とすることの問題点が指摘されており、2001年度の財政投融資改革によって制度が抜本的に見直しされました。改革後、財政投融資はスリム化が図られ、改革前に年間40兆円程度の予算が組まれていたものが、2020年度予算には13.2兆円までに圧縮されていました。しかし、コロナ禍による未曽有の危機に対応する形で、冒頭に述べたように2020年度は65.1兆円まで追加され、2021年度は40.9兆円予算が組まれることになりました。

財政投融資がユニークな点は、財投債という形で国債と同様に発行され、金融市場から資金調達が行われる一方、返済原資は税金に頼らず、政策金融機関、独立公共団体、独立行政法人等を通じて、それぞれの独立採算基準に従って、返済される資金ということです。つまり、原則は最終的には国民の税金負担とはならず、したがって、直接の受益者となる政策金融機関や独立公共団体が最終的な返済の責任を負うことになります。

今回の予算の内訳を見てみると、中小零細企業向けの支援を中心とした拠出14.5兆円を中心とした、政策金融公庫向けの25.2兆円はコロナ支援の要と言えます。国のイノベーションを促進するための大学基金創設のための4兆円や地方公共団体向けの3.7兆円がそれに続きます。今回、残念ながら中小零細企業向けに拠出される緊急融資などの多くは貸倒れる可能性が高いと思われます。その際、政府系金融機関や公共団体などでの処理をどのようにするかの議論はこれからになると思われます。緊急時の対応とはいえ、将来を見据えた基盤の整備を怠れば、国債の信用度が大きく毀損する可能性を孕んでいると思われます。

国の予算である、一般会計、特別会計に隠れて見過ごされがちな財政投融資ですが、その規模と役割は大きく、したがって、今後問題が生じた場合の影響は大きいものと思われます。今後も、この分野について注視していきたいと思います。