白木信一郎の「投資運用苦楽」

第360回 < 2021年の市場見通しについて >

2021年最初のコラムとなります。本年もなにとぞよろしくお願い申し上げます。昨年は、コロナ禍による緊急事態宣言の発出や、それに対応した政府や中央銀行の異例な資金供給という、我々がこれまで経験したことのない状況となりました。年が明けて、コロナの感染状況は厳しさを増している中ですが、本年、皆様が健康に、無事にお過ごしになられますよう、祈念申し上げます。

思い返してみると、2020年初は、前年までの相場を受けて、アメリカ大統領選挙などの波乱要因によるボラティリティ上昇などを見る向きはありましたが、おおむね強気な予想が多かったのではないかと思います。一方、実際の市場は、コロナ禍によって、原油価格が2020年4月20日に過去に例を見ないマイナス37㌦となるほか、コロナ発生間もない2月には、世界中の株価が暴落するなどの状況となりました。しかし、年末にはダウ平均株価が史上最高値の3万㌦を超えるなど、世界の政府、中央銀行が危機回避のために出した膨大な資金供給のために、こちらも異常ともいえる様相を呈して取引を終えることになりました。

昨年の状況を踏まえて、今年の市場について、考えてみたいと思います。

【1】クレジット戦略ですが、コロナ禍の初期のピークである3月末にかけて、クレジット・スプレッドが急拡大したため、多くのハイイールド債の価格が急落しました。しかし、中央銀行による潤沢な資金供給が功を奏し、スプレッドは、年初のレベルを下回る水準で推移するに至っています。しかし、格付け会社を中心に、2021年のレバレッジローンの倒産確率は上昇するとみているところが多く、当面は各国当局の資金供給との綱引きが続きそうです。しかし、資金供給を無尽蔵に行うことは、その後の副作用を大きくする影響もあるため、どこかの段階ではリスクが顕在化することになります。年内、中旬から後半にかけて、スプレッドが急拡大する局面があるものと想定します。

【2】商品市場については、一昨年は中東地域での供給懸念が台頭し、WTI原油価格は64ドルまで上昇しました。しかし、コロナ禍の影響から、2020年4月20日に原油価格は史上初のマイナス37㌦という、考えられない水準まで低下しました。足下、需給が安定する中、40㌦後半での取引が続いています。今年は当面、40-60㌦でのレンジ相場が継続するものと考えています。コロナ禍によるリスク回避と地政学リスクの高まりにあわせて上昇してきた金価格は、昨年末から500㌦以上上昇して2000ドルを超える局面もありましたが、当面は2000ドルを天井に高値圏での推移が続くと想定します。商品市場については、昨年のあまりにも高いボラティリティの影響もあり、今年は価格推移が比較的狭いレンジに抑えられると考えます。

【3】金利については、米国で2019年末から2020年初にかけて、金利上昇を見る向きがあり、1.5%を超えての推移を想定していましたが、コロナ禍のインパクトは絶大で、一時は0.5%台まで落ち込み、足下も1%を割っての推移となっています。中央銀行の資金供給次第とはなりますが、ワクチン接種によってコロナ禍の抑え込みが可能になったとしても、経済への爪痕が残る中、大きく姿勢を変えることは難しく、年央から年末にかけても、1.0-1.5%でのレンジ推移となると思われます。日本では、イールドカーブコントロールの解除はなく、引き続きゼロ金利近傍での推移が続くと見込んでいます。

【4】エマージング市場は、一昨年以降の米中貿易摩擦が多少落ち着く方向となっていたことから、年初にかけて中国株式が持ち直していましたが、世界に先駆けてパンデミックを起こしたことから、株価は下落しました。しかし、年央にかけて年明けの水準まで株価を戻すと、他国よりも早くコロナを抑え込んだことも好感され、その後年末まで順調に上昇しました。もっとも、今年は中国での不良債権問題の火種がくすぶり続けており、上値も重い展開を想定します。その他のエマージング国では昨年の反動もあり、比較的好調な展開を想定します。

【5】市場の変動率VIX指数は、コロナ感染症の初期の急拡大を見て、2020年3月下旬に大きく上昇し、一時的には70を超え、3-4月の平均で50近い状況となりました。その後も、コロナ禍以前の水準に低下することはなく、神経質な相場展開を反映し、高い水準での推移となっています。これまでは、地政学的な問題や金融機関の破綻などが原因となったVIX指数の急上昇でしたが、今回のようなパンデミックが引き金となったことから、経済や市場への影響がどの程度続くかが見通せないことから、当面は高水準での推移が続くものと考えられ、20を超えた水準で推移しながら、時折スパイクすることが考えられます。

【6】最後に、2020年の日本株式市場はコロナ禍から直接の影響を受けた一部の業種である、外食、宿泊、航空などを除き、財務的にも健全な日本企業が多いことから、中央銀行の資金供給の影響で、需給が良好でした。株価も市場高値を更新する米国につられ、堅調な推移となりました。しかし、2020年から続く不動産関連事業への貸倒引当金の積み増し、低金利による収益圧迫に喘ぐ日本の金融機関の業績悪化、コロナ禍に対する特別支援の切れる各企業の破綻可能性など、2021年は潜在的な問題を多く抱えてスタートしています。政策的なかじ取りを見てみると、2021年の財政予算、財政投融資予算は極めて大きく、また、日銀による資金供給も昨年の水準を概ね維持するものと考えられます。したがって、多くの問題を抱えながらも、株式市場はその水準を大きく切り下げることなく、今年を乗り切れるのではないかというのが現時点での想定になります。

例年気にしていた、キャリー取引の増加(オプションの売り戦略)、レバレッジの増加、低流動性資産に対する投資の増加というトレンドが、コロナ禍による大きなショックによって、歪に変化しました。あらためて、問題点の所在を見直しておく必要がありそうです。

2020年の「庚子(かのえ・ね)」から、2021年は、「辛丑(かのと・うし)」となりました。干支の組み合わせとしては「相生(そうせい)」となり、変化が生まれる年と考えられるそうです。私たちあけぼの投資顧問も、2月に会社合併を控え、新しいことにチャレンジする年となります。相場の格言では、丑年は「つまずき」となりますが、見方によっては絶好の買い場となることもありそうです。当社は、新しいファンドのスタートも予定しています。新しいチャレンジを始め、絶好の買い場で投資を行いたいと思います。

本年も何卒よろしくお願いいたします。皆様のご健康とご多幸を心からお祈り申し上げます。