合併の事務手続きと解いて、ファンド投資の手続きと掛けます。その心は

3月も終わりともなれば、私の住む浅草の川の両岸には毎年のようにソメイヨシノに代表される桜などの春の花が咲き誇り、そんな桜を目当てにかそれともお花見のもう一つの目的を目当てにか、いずれにせよ足を運んでくれるお花見客を見込んで立ち並ぶ屋台や町内会の出す模擬店などもお花見のもう一つの楽しみ、なんていう方も多くいらっしゃるようですね。とはいえ、昨年や今年はどうしても人の密集や飲食が絡むなんて野暮ったい話のおかげでそういったお店もあまり見ることもなく、ただひたすらに春から初夏にかけての花や木々の緑の色合いを楽しめる、そんな風景になりつつあるようで。

春といえば。。。

そんな3月から4月にかけて、といえば通常お引っ越しのシーズンとも言われていまして、今時の状況でも、入学や就職などで新しい場所での新しい生活を始めるという方も少なくないそうですが、引っ越しをすると、色々と事務手間が起こりますよね。もう20年以上も浅草の小さい一間に住んでいますので引っ越しに関係した役所などでの手間なんてものから随分と縁のない生活を過ごしてきたわけですので、そういった足を棒にして歩き回ったりする手間がどうだっけなぁ、なんてふと思ったりするものです。区役所に行って前の役所で頂いた転出の証明書を持って転入届を出して、新しい住所の住民票をもらって、運転免許証の裏側に新しい住所を書いてもらったり、(20年以上前にはありませんでしたが)新しい住所のマイナンバーカードも発行の手続きなんかして、あとは口座を持っている銀行や証券、今時ならiDeCoとか暗号資産のウォレット、クレジットカードや生命保険、ああ、携帯電話や各種サブスク、ネットショッピングなどの住所変更をしなければなりません。もちろん新しい住まいの電気、水道、ガス、固定電話やインターネットの開通手続きも必要です。しかも、いえば変更してくれるわけじゃなくて、住民票と顔写真付きの身分証明書を出せ、なんて金融機関あたりだと(偉そうに)言いますよねぇ。引っ越したばかりだからそんなにすぐに揃うわけないじゃない、なんて思ったり。ああ、結構20年以上前の嫌な思い出ってのだけは出てくるものですね(苦笑)

さて、引っ越さなくても、こんな手間に追われる人もいらっしゃるようでして、よく言われるのが結婚した後の奥様の苦労。結婚して苗字が変わったことで、銀行や証券、生命保険からクレジットカードの自分の名前の変更を余儀なくされるんですよね。今時は旧姓で働き続ける人も増えていますけど、とはいえ、健康保険や厚生年金、雇用保険などに名前を住民票に合わせないといけないものはどうしても手続きをして変えないと大変な時にもっと大変になるので厄介ですよね。これが理由で夫婦別姓が叫ばれているとは思わないですが、苗字の変わらないあなたって楽よね、なんて言われた御仁も少なくはないのではないでしょうか。

会社にとってのこんな苦労といえば

人にとって結婚がそういう事務手間のひと時のきっかけになるわけですが、じゃあ会社はそういうことがないのか、なんていえば、そんなこともないのです。当社が今年の2月1日に合併しまして、私の所属していたあけぼの投資顧問という会社は吸収合併された、とアナウンスをさせて頂きましたが、法律上は吸収された会社は解散手続きをするようなものなのです。そうすると、まずは会社の登記は閉鎖扱いとなるように書類提出をし、新しい会社としての登記簿謄本を手に入れた後には、それまであった銀行口座は合併後の会社名に変更し、会社ですのでリースで使っている複合機やシュレッダーなんかも、そういうリースの名義変更を行なったり、もちろん会社の名前が変わるわけですので、大家さんをはじめとしてそれまでお取引している取引先(文房具から業務委託契約に至るまで!)、そして大事なお客様に対して、名前が変わりました!の一言で仕事が継続してできるはずもなく、名義変更手続きなんて作業が発生します。そうなると、新しい登記簿謄本と会社が閉鎖したという謄本を使って、合併して吸収されたんですよ、なんてお話の証明を提出することとなるわけです。しかも、金融商品取引業の登録をしておりましたので、その登録の取り下げの手続きや自主規制団体(投資顧問業協会さんや二種業協会さん、ですね)の退会手続き、というのも会社が清算・廃業する時と同じようにせねばなりませんでした。また、役職員の生活を守る社会保険の類については新しい会社の社会保険への加入手続きをし、そして、吸収されて法律上清算扱いになる会社は、といえば保険資格がなくなった、という個人の手続きをした後に清算会社としての資格喪失の手続きなんてのを(これまた登記簿謄本などの公的書類を使って)する必要もあるのです。まぁ、ある意味たつ鳥跡を濁さないように手続きをしないといけないのです。

セカンダリーの実務はこんなことの繰り返し。。。

という感じで、会社関係でKYC対応なんてあれこれやっておりましたら、横から「そろそろセカンダリーで取引するからよろしくー」なんて話が。。。ご存知ない方にご説明しますと、セカンダリー取引はある意味譲渡制限のかかった未上場株式やファンドのLP持分を買わせていただくわけですので、売り手さんとの譲渡契約も大事なのですが、その買わせていただく未上場株式の発行体となる会社さんやファンドの持分の無限責任組合員(海外のファンドならgeneral partner)さんの譲渡承認が必要になるのですが、これらも金融商品の一種ですので、取得する人のKYC(Know Your Customer)を提出してもらって AMLの観点で怪しくないか、税務上の情報(ここで何度も取り上げているCRSとかFATCAとかというあれ、ですね)を理解し、そして、特にファンドのLP持分の場合には、投資家属性を確認してファンドで受け入れ可能か、という調査をする必要はあります。ということで、この譲渡承諾を得るためのAML/KYC対応、FATCA/CRS情報を提出し、投資家属性として問題ないことを説明する、という数十ページ(!)にわたる質問表の作成をすることになるのです。

国によって異なるKYCのチェックの仕方

日本ですと個人ならば、本人確認書類、といえば運転免許証やマイナンバーカードの写しで氏名、生年月日、住所、あと顔写真という「本人を特定できる」情報がひとまとまりになっているので重宝ですし、会社のような法人ですと登記簿謄本で会社名や登記上の本店所在地、設立日、その取締役(と代表権を持っている取締役)が誰か、という情報が一覧できますのでその代表権を持った方の本人確認と、常に社長さんが取引をする訳ではないですのでその取引担当者が怪しくない(社員のなりすましなどですね)ことを確認するための本人確認、をすることになります。ですが、海外ですと、この辺りがひとまとまりになっている公的書類というのがないのです。例えば、個人ならば、氏名と生年月日と顔写真まではパスポートで、住所については住民票という概念がないため銀行の取引履歴書や電気・ガス・水道料金の請求書といった生活していることで発生する公的に近い人たちの発行する資料で確認する、というのが一般的ですし、法人ですと、会社の設立登記証では会社の設立しか証明できずまた、所在地の確認や、閉鎖登記のように現在消滅しているか、というのがわからないため、別途ちゃんと年次の登録税を納めている証明をして存続している証明をしたり、所在地についても公的に届け出をした資料の写しや法人の設立根拠になる書類(日本の株式会社ならば定款に相当するもの)や取締役一覧を別途会社から発行させる必要があります。

それ以外にも日本で最近では確認するようになった法人の支配的立場にある個人の特定、というのも、例えば株主などの資本的な支配であったり、創業者といった人的な支配のようなものの説明が必要になりますが、日本ですと国際基準で一番緩い 50%以上の株主か25%以上の株主2名以上、という条件で確認しますが、海外ですと10%以上あると対象になる、など条件が厳しいことが一般的です。そうなるとそういう出資者たちの本人確認も必要になります。

FATCA/CRS に投資適格性、プロ投資家。あれどこかで聞いたことが。。。

FATCA/CRSについてはここの小噺私の個人のブログで書いた記憶があるので割愛しますが、最近W8フォームについては結構厳しく見てくれるファンドさんがいるので、気づかない間違いを指摘してくれるので勉強になることも多いです。

そして、投資家属性ですね。これも私個人のブログなどでまとめたので、もし詳細に見たい、という方はそちらをご覧頂くとして、例えば日本の適格機関投資家は海外のどこに行っても現地のプロ投資家になれるわけではないし、その逆も言えるのでそれぞれのファンドや企業が私募や現地当局の届出免除で発行できる条件となる投資家条件を満たしているか、再度自分のファンドの状況を理解する必要がありますし、ファンドを組成する時には、そういうことも視野に入れて募集したりストラクチャリングせねばならない、ということを、この作業をしていると何度も考えさせられます。とはいえ、ここは書き出すと止まらない上に企業秘密ですのでこれくらいに。。。

まとめ、というか関係ないけど

ということで、まぁ、新しい会社、新しい体制になっても、なんかやっていることは変わらず、という感じ、というご報告ではありますが、とはいえ、我が家の青梗菜はこの仕事にかまけていた3週間の暖かさでこんなに育ったので、仕事ばかりもどうかなぁ、と食べ損ねた青梗菜を眺めております。

気づいたら青梗菜がここまでそだってました

気づいたら青梗菜がここまでそだってました

あ、仕事します。。。