みやたしのぶの「投資小噺」

「ものづくり」と掛けて「多様性の時代」と解く。その心は。。。

私の住んでいる浅草は、近年の外国人旅行者による訪問の増加も手伝ってか、常にお祭り騒ぎのように賑わっており、おかげで毎日お祭りをしているのでは、と聞かれる始末。確かに今月、11月は浅草寺の裏手の外れの千束、いわゆる吉原のそばの鷲神社では酉の市が立ち、酉の日の夜中の0時から24時まで、一年の商売繁盛を祈念する人たちでごった返しますが、これも11月の12日に一度だけですから毎日やっている訳ではないのです。

浅草ものづくりマップ

さて、そんな鷲神社と浅草寺から見て反対側、浅草の南の外れは蔵前と呼ばれる地域で、今の国技館は昭和の頃にはこの蔵前の川のほとりにあったのですが、この辺りはその中の示す通り江戸の頃は隅田川の水運を利用して多くの蔵が並び、その名残で問屋街になった町でもありました。最近ではこの蔵前から春日通り沿いに、宝石問屋が集まる御徒町にかけてのエリアにものづくりを志す人たちが集まってきて、御徒町と蔵前を組み合わせた「カチクラ」はものつくりの街、と呼ばれるようになってきたのです。

この蔵前から江戸通りを北に向けて歩いてみると、東武スカイツリーラインの高架を越えたあたり、ちょうど浅草寺の東参道と交わるあたりに位置する花川戸周辺は靴の問屋街として知られていて、12月中旬の週末(今年は12/15-16だそうです。)には「はきだおれ市」と呼ばれる靴を中心とした革製品などが安く手に入る市が立ち、その前後には、ボーナス時期ということもあり、あちこちの問屋さんの店先でバーゲンセールが開かれています。

一目惚れのカードホルダー
一目惚れのカードホルダー。お札は折って黄色と黒の二枚の革の間に挟みます。

そして、花川戸から更に江戸通りを北に歩いて言問通りを越えた、奥浅草と呼ばれる一帯にも、花川戸の問屋さんから注文を受けて靴を作る靴職人やそんな職人に材料を提供する革問屋などのものづくりの街が広がっていて、ちょうど2週間前の週末に「a round 革とモノづくりの祭典」というイベントがこのエリア一帯で開催されていました。2013年に地元の有志で始まったこのイベントも回を重ねて今では2万人ほどが集まっては職人や問屋さんと直接触れ合いながら、ものづくりの楽しさを体感したり、お気に入りの一品を(安価で)見つけたりする機会となっています。実は私もコンパクトなカードホルダー兼札入れに一目惚れして買ってしまいました。その時、お店番をしていた、もう臨月でいつ産まれてきてもおかしくない、なんていいながら座っている靴職人の奥さんと話していたら、普段は靴を作っているけどこういうイベントに合わせてデザインして作ったものを出店している、というので、今どきの多品種少数生産の時代だからこその、なかなか出会うことの出来ないお気に入りの一品に辿り着いたように感じました。

ベンチャービジネスと多様性のいい関係

当社では直接ベンチャー企業に投資をすることはないものの、ベンチャーキャピタルファンドさんを通じて色々な企業さんのお話を伺うことがあります。このところは、インターネットという情報インフラが普通に生活に浸透していることから、そのインフラを如何に使って生活の利便性を高めるサービスを提供できるか、とか、自己実現をお手伝いするようなツールを作って提供していきたい、とか、多くの人のわずかな時間と労力を上手に借りることで便利になるサービスを組み立てたい、という、ちょっと聞くだけでも複雑でどうやっているのだろう、と頭をフル回転させながら聞かないと判らないことがたくさんあります。しかも、それが事業として成立して、収益を生み出せるようになる、というのですから、世の中というのはどこにビジネスの機会が埋もれているのやら、と思うばかりです。

とはいえ、よくよく聞いていると、個の時代と言われて久しい今、ものもサービスも、その人の個性にあったものが受け入れられるので、その多様性に対してどのように対応するのか、というのがひとつのキーワードになっているように感じます。例えば、私が一目惚れしたカードホルダーは、多分長い札入れが好きな人や高級ブランドの好きな人には絶対に手に取られないものですが、出来るだけ身軽に過ごしたい、というミニマル志向の人には受け入れられる、といったように、特定の嗜好や専門性に向けて訴求するビジネスをする仕方と、一つのサービスを見た目や操作性、使い勝手といった、UI/UX (User Interface / User Experience)の向上によってより多くの人に訴求できるビジネスをする仕方と、大きく二つに分かれる中で、ユニバーサルデザインという言葉があるものの、物理的なものづくりというのは前者により近くなり、情報やサービスを提供するビジネスは後者のアプローチを取っていく流れになっているように感じています。

多様性と投資、どうやって同居するの?

そのような話をしている横で、多様性の時代、と言うことからか、ちょうど当社の事業などを説明する機会において、Diversity and Inclusion (ダイバーシティ&インクルージョン: D&I)という言葉が International Limited Partners Association という世界的な投資家間の業界団体の制定する運用者向け質問状の雛形に入っていることに最近になって気づきました。プライベートエクイティ投資やベンチャーキャピタル投資において、その投資対象企業がこの D&I を考えて企業運営を行っているか、という質問が普通にされるのはその多様性の尊重というのが今後の時代と世界の趨勢となるということなのでしょう。その中で投資にも多様性の尊重というのはどうやって企業を表現し、投資の結果に反映させていくのか、今後の当社のあり方も含めて考えていく問題のようです。

おまけ

一目惚れした靴
一目惚れした靴。くるぶしのカットが特徴です。

さて、一目惚れ、といえば、カードホルダーと同じタイミングで、ベビーバッファローの革で作った紳士靴にしては個人的にスタイリッシュに感じた靴を見つけました。足を入れたら丁度具合も良かったので思わず買ってしまいました。その翌週会社に履いてきたら足と靴が喧嘩してあっという間に靴擦れが。ゆっくり付き合っていくことを心に決めました。