白木信一郎の「投資運用苦楽」

第283回 < 「トイザらス」破綻とPEファンドの関係 >

9月18日に米国おもちゃ小売大手のトイザらス(Toys“R”Us)の米国法人とカナダの子会社が日本の民事再生法に相当する連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請しました。約49億ドル(約5,500億円)の負債があり、年内に4億ドル(約450億円)の利払いを控えての破産申請ということです。その金額の大きさもさることながら、知名度の高い会社であったことから、大きなニュースとして取り上げられました。

米国大手銀行のJPモルガンをはじめとする金融機関が当面の運転資金として20億ドル(約2,200億円)を上限として融資することが米国破産裁判所によって承認されたとのことですので、営業を継続すると思われますが、今後、さらなる整理が行われることになると見込まれます。

トイザらスは、1948年にこども用家具店として創業以来、玩具等のスーパーマーケット型販売で業績を伸ばし、1978年に公開企業となった歴史のある企業です。2005年に業績の建て直しを請け負うような形で大手PEファンド2社と不動産系のファンドが共同で買収を行い、非上場会社となりました。当時、2008年の金融危機へと続く金融バブルの最中で、66億ドルという大型の買収となり、ファンドが13億ドルを株式出資し、残りが融資でまかなわれた、レバレッジの高い取引でした。

しかし、当時の買収から12年間で市場環境は大きく変化し続け、特にアマゾンをはじめとするオンラインショップの成長と反比例する形でスーパーマーケット型の小売モデルは強い逆風に晒されました。結果、買収後の成長戦略が逆風を上回ることが出来ず、EBITDAが低迷する中、利払い負担の大きい負債の返済が進まない状況が続き、今回の破綻に至ったものと思われます。

これに似た事例は、2017年6月11日にチャプター11の適用を申請した米国の「ジンボリー(Gymboree)」です。1976年創業の子供向けアパレル会社ですが、2010年にPEファンドが、18億ドルの評価額のうち5億ドル強を出資し、残りを融資で買収していました。前述のトイザらスほどではありませんが、こちらもレバレッジはやや高めです。今回の破綻時に11億ドルの負債が残っていたことを考えると、価格競争やオンラインショップとの競合が逆風になり、EBITDAの成長が低迷していた状況もうかがえます。

昨今、増加するPEファンドによる買収は、企業価値向上や改善に高い効果をあげることも多く、出資を受け入れた企業や、ファンドへの投資家に対してプラスをもたらす事例が多々見られます。一方、業種や市況、買収価格や負債のレベル等によっては、今回の事例のように厳しい結果を迎えるケースも起こり得ます。ファンド投資家の立場からも、個別投資案件の経緯について理解を深め、投資にあたっては、どのような戦略分散、また時間的な分散がリスク低減に効果的であるかを常に考えておく必要があります。