白木信一郎の「投資運用苦楽」

第284回 < PEファンドの運用成績測定の方法 >

2017年10月5日の日本経済新聞の朝刊に「投資ファンド膨張」というタイトルの記事が掲載されていました。年金基金や機関投資家が、企業買収を手掛ける投資ファンドへの投資を増やしているという趣旨の記事です。世界最大の米国カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)は資産全体の8%にあたる、約2兆9千億円をPEファンドに投資していますし、米国の大手大学の基金の中には資産の40%をファンド投資にまわしているところもあります。PEファンドの活況と共に、ファンドに対する日本国内投資家層の裾野も広がっています。日産の子会社であったカルソニックカンセイや、今話題の東芝案件など、海外大手ファンドによる大型バイアウト案件も目立つようになりました。

新規にファンド投資を検討する投資家の皆様とお話しする中で、「これまでの金融商品とPEファンド投資をどのように比較するべきか」が論点になることがあります。PEファンドは投資期間が10年以上の長期にわたり、原則として途中での解約ができません。また、ファンド毎に投資先企業に対する投資時期や資金回収の時期、金額サイズの違いが顕著であるため、流動性のある株式インデックス投資などとの運用成績の比較が困難です。しかし、機関投資家が投資を行うにあたって、ベンチマーク(指標)となるべきものがあるほうが便利です。

株式のアクティブ・ファンドに投資をするのであれば、比較対象としては上場株式インデックスがありますし、債券投資を行うにあたっても、目安になるべきインデックスが複数あります。しかし、資金流出入のタイミングや金額が異なるPEファンドを比較するためのベンチマークは組成が困難です。そこで、投資家は従来からPEファンドは投資から得られた最終的な回収金額の総額を投資金額で除した投資倍率とキャッシュフローから計算される内部収益率(IRR)を計測し、絶対的な評価方法として使用してきました。

最近、上場市場との比較によってPEファンドの運用成績を評価しようとする試みが行われています。PME(パブリックマーケットエクイヴァレント)と呼ばれる手法では、PEファンドのキャッシュフローと同様のキャッシュフローが、インデックスで起きたと仮定した場合にどのようなリターンになるかを算出し、個別のPEファンド毎に比較していく手法です。これを行うことで、市場の変動に左右されないPEファンドの実力を測ることが可能になると思われます。しかし、このような運用成績測定の手法にも、数学的な問題点が見られるケースがあります。

PEファンド、特にバイアウトファンドは、投資対象企業を完全に買収した後、企業の実力である売上げ、利益、キャッシュフロー、すなわちEBITDAを改善、向上させるための能動的な活動を行います。また、対象企業のIPOや売却に向けて財務体質の改善(債務削減)などを通じて株式価値向上を図ります。これらの活動とその結果である株式価値の向上は、株式市場の動向に左右されない部分です。ファンドがいかに企業の本質的価値向上に貢献したか、また、継続的にそれらの活動を行う能力があるかは、過去のデータ検証からだけでは測れません。投資対象としてのPEファンドの評価に際しては、これらの点を考慮して多面的な検証を加えていく必要があると思われます。