白木信一郎の「投資運用苦楽」

第279回 < 成熟期を迎えるヘッジファンド業界 >

ヘッジファンド関連の統計数値を見ると、全体の運用残高は年々増加を続けており、2016年末には3兆ドル(約340兆円)を超えました。一方、ヘッジファンド全体の運用成績を示すヘッジファンド・インデックスの数値は、足もと好調を維持する株式指数を下回る状況が続いており、過去のパフォーマンスと比べると見劣りするようになりました。(<a href=\”/mailmagazine/mail.php?writer=2&detail=262\” target=\”_blank\”>第263回 最近のヘッジファンドのリターン低迷について</a>)さらに、2014年をピークに10,000以上まで増えたヘッジファンドの総数も減少傾向に入ったように見えます。この2-3年は、解散するファンドの数が新規で設立されるファンドの数を上回っている状況です。
また、運用残高1兆円を超えるヘッジファンド運用会社の数は増え、上位ファンドの残高が軒並み増加しています。このことは、ヘッジファンド業界でも淘汰、寡占化が進行していることを示しています。2008年のリーマン危機以降、金融機関に対する規制の強化が進み、ヘッジファンドもその影響を受けています。投資家からの厳しい調査に耐えうる体制や、当局対応のためのコンプライアンスに対応するための人員強化の必要性から、一定以上の固定費をまかなうためには、相応の資産規模と安定した収益基盤が求められています。

ヘッジファンドは、これまで比較的規制の緩い分野にあって、金融市場のニッチ分野を切り開く革新的なベンチャーでしたが、ヘッジファンドの概念が登場した1949年から70年近い年月を経て、運用残高や認知度から見ても、もはやニッチな存在とは言えなくなっています。また、ヘッジファンド戦略の多様化が進んだ結果、投資信託やプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)の領域との境界線が曖昧になってきており、最近では自らをヘッジファンドと称する運用者も減少傾向にあるように思えます。

筆者が2001年以降、運営に携わっているヘッジファンド業界団体であるAIMA(オルタナティブ・インベストメント・マネジメント・アソシエーション)においても、今年6月に開催した年次フォーラムでは、PEファンドに関する講演やパネルディスカッションを盛り込み、聴衆からの反応も良好でした。

グローバルの金融業界におけるイノベーションを担い、そして成熟化への道を辿ってきたヘッジファンドは、残念ながら日本においてはあまり大きな存在感を出せないままだったかもしれません。高い税率、厳しい規制、言語の壁、ベンチャー志向の欠如などが、日本においてヘッジファンド運用者が増えない理由として並べられました。しかし、成熟期を迎えた今だからこそ、日本においても運用の多様化の一環として、これまで効果が実証されてきたヘッジファンドによる投資戦略を活用する国内運用者も増えるでしょう。また、ソフトバンクによる大手ヘッジファンド、PEファンド運用会社であるフォートレス買収の例は極端としても、国内運用会社によるグローバルヘッジファンドの買収なども今後は期待できるかもしれません。