白木信一郎の「投資運用苦楽」

第270回 < 投資信託を活用した個人の資産形成の今後 >

当社は、昨年から、ヤフーとの資本提携を契機に「お金に働いてもらう楽しさをすべての人に」という基本理念をもった公募投信のご提供を本格的に開始しました。日本の個人の資産形成における投資信託の役割は、政府主導で導入されたNISAや、金融庁が発表した金融行政方針の中でも提唱されている、金融機関におけるフィデューシャリー・デューティー(「顧客本位の業務運営を行うべき」との原則)の確立・定着という考え方に見られるように、徐々に変わりつつあります。金融先進国である米国では、家計金融資産が1995年から2016年までに約3.1倍に増加しましたが、そのうち8割以上は運用による金融資産の増加に支えられているという調査があります。一方、同期間の日本の家計金融資産は約1.5倍増加していますが、運用のリターンによる寄与度は3割以下のようです(金融庁調べ)。
これまで、日本の個人投資家は、投資信託に限らず、個別株投資などを通じて、回転売買比率の高い投資を行ってきました。セールスする企業側に立てば、販売手数料の稼げる回転売買は、短期的に見れば高収益を生み出します。しかし、最終的に個人投資家が高回転の売買を通じて、資産形成を達成できずに疲弊してしまった先には、投資信託をはじめとする金融商品の未来はありません。長期、積立、分散投資の効果は実証されています。バークシャー・ハザウェイ社のウォーレン・バフェット氏が株主に宛てた書簡の中で、4つのE「Equity投資家のEnemy(敵)は、Expense(費用)とEmotion(感情)」である、と述べています。投資の最終的な実績は、いかに低コストの投資対象を選択し、また、いかに感情などに任せた短期での回転売買を避けるかで大幅に改善することを簡潔に説明した内容だと思います。
先日、顧客本位の業務運営に関する原則、つまり日本版フィデューシャリー・デューティーについてのお話を、金融庁の方からお伺いする機会がありました。運用会社をはじめとする金融事業者が、手数料などの明確化や情報の分かりやすい提供など、投資家の最善の利益を追求するに際して、当たり前のことを当たり前に行っていくという内容でした。しかし、本原則をお題目として掲げるだけではなく、実際の運営の中で経営者をはじめ会社全体が実務の中で実施できるのかが重要です、というメッセージでした。特に証券会社系の運用会社では、全体のカルチャーを変える必要もあり、大変な変化を伴うかもしれません。一方で、私どものような独立系の運用機関が率先して実現していくべきことであると感じています。顧客本位の価値観の中でも、インデックス系のパッシブ運用商品の徹底したコスト削減化と、コストをかけても運用力を徹底的に鍛え上げたアクティブ運用商品の提供も共存はできると思います。
1年半前にお目にかかった、米国ヴァンガード社の創業者、ジョン・ボーグル氏が独立系運用会社を通じて成し遂げた偉業に学びながら、わたし達もより多くの人々に良質な投資信託を提供し続けて生きたいと考えています。
<a href=\”/mailmagazine/mail.php?writer=2&detail=230\” target=\”_blank\”>(第231回 米国最大の投資信託運用会社について)</a>