白木信一郎の「投資運用苦楽」

第271回 < プライベート・エクイティ・ファンドから見る投資のサイクル >

近年の低金利により、投資家は総じて高い収益を上げることが難しくなっており、低利回りに甘んじるか、流動性を犠牲にして高い利回りをとりにいくかという選択肢を迫られるケースがあります。正しい知識と覚悟をもって低流動性資産への投資に取り組むことができれば、もちろん、それも悪い選択肢ではありません。しかし、低流動性資産にも割安、割高のサイクルが存在し、それが最終的なリターンに影響することを理解しておく必要があります。

流動性の低い投資対象として挙がるプライベート・エクイティ・ファンドの代表格ではバイアウト・ファンドがあります。企業の買収に際して金融機関からレバレッジド・ファイナンスを通じて資金調達を行いますが、現在の低金利を反映して、良い条件での資金調達が可能です。したがって、投資対象企業の評価額が高くても、手持ち資金を使って株式投資をすると同時に借入れを組み合わせて買収を行うことができます。現在は大型買収が増えており、プライベート・エクイティ業界全体に流れ込む資金量が増加傾向にあります。

また、投資家自身も比較的高い収益率が見込めるプライベート・エクイティ・ファンドへの出資を増やす傾向が見られ、足元の資金調達環境は、前回ピークの2007年以来の活況を呈しています。結果として、投資家から出て行く資金(投資に回る資金)の量が増え、投資家に戻る資金(投資回収資金)が徐々に減る状況となっています。過去のサイクルでは、バイアウト・ファンドにおいて投資に回る資金が投資回収資金を上回る状況となると、投資家が流動性について敏感になる状況が出現してきました。言い換えれば、投資家は何らかの理由で、投資回収を優先せざるを得ない状況が周期的に出現していました。

不動産バブル崩壊、金融機関の不良債権処理、ITバブル崩壊による投資回収ニーズ、リーマンショックによるレバレッジ解消など、その時々によって理由は異なるものの、数年おきに出現するイベントのサイクルはプライベート・エクイティ・ファンドの投資状況や資金調達環境にも影響を及ぼします。2016年末時点のファンド関連の統計から読み取れるのは、純粋な調達額の増加、圧縮された資金調達スプレッド、案件の大型化、買収価格の上昇などです。これらは、現在が投資サイクルとしてピークに近いサインと見ることができそうです。

もちろん、常にニッチ市場は存在し、投資サイクルのピーク時であっても、リスク対比で高い収益率を実現する投資対象は存在します。しかし、好条件の投資対象を数多く探し出すことは困難と考えておいたほうがよいでしょう。投資にベストなタイミングを毎回計ることは困難で、ほとんど不可能ではないかと考えています。一方、このような投資環境の変化のおおまかなサイクルを捉えておくことには意味があるのも事実です。常にサイクルがあると仮定した場合、対応方法は、【1】サイクルを先読みして、逆張り的な発想で投資を行うか、【2】投資姿勢は変えずに、常に一定して投資を継続するかです。

現在、プライベート・エクイティ・ファンドの投資周期の観点からも、未上場株などの低流動性資産も高値圏にあると思われます。したがって、投資家は、流動性の高い資産に比べて流動性プレミアム分だけ、確実にリターンの高いと思われる低流動性資産への投資にあたっても、次のダウンサイクルを待つのか、計画的に投資を粛々と継続するかの選択を行うことが好ましく、高い流動性資産の利回りに比べて、低流動性資産の見た目の投資利回りが魅力的であるという理由だけで投資行動をとることには、慎重になるべきかと思われます。