白木信一郎の「投資運用苦楽」

第268回 < 英国フィンテック業界について >

先日、英国から来日したフィンテック関連企業5社と日本側の資産運用業界からの参加者40名によるラウンドテーブルを主催し、議長を務めさせていただく機会に恵まれました。英国大使館のご厚意で、大使館内の施設を使っての会議となりましたが、参加者からの質問も相次ぎ、活発な意見交換の場になりました。これまで直接触れる機会の少なかった、英国でのフィンテックの現状について学ぶ、よい機会になったと思います。

英国は、欧州の金融センターとしての矜持から、政府主導の下、官民が連携して金融業界のイノベーションを後押ししているという話は聞いていましたが、昨年のブレグジット(英国のEU離脱)を経てもそのトレンドは変わっていないようです。英国の金融規制当局(FCA)が率先して2014年10月にProject Innovateをスタートし、民間企業団体などと共同して、数々のスタートアップ企業などに対して、法務・財務のアドバイスや資本投入等の支援を提供しているようです。その結果、英国におけるフィンテック関連ビジネスは既に5兆円を上回る経済価値をもち、数十万人規模の雇用創出に貢献しているといわれています。

今回のラウンドテーブルには、来日した十数社の企業のうち、ロボアドバイザー関連の企業、リスク管理やコンプライアンス等のサービスを提供する企業、ヘッジファンド等の情報収集が難しい投資対象と投資家をつなぐクラウドサービスを提供する企業など、主に資産運用業界に関連のある企業に参加してもらいました。日本では、ブロックチェーンを活用した仮想通貨や資金決済、送金システムや貸出審査など、フィンテックの中でも規模として拡大しやすく、実際に発展のスピードの速い分野に比べて、資産運用業界内でのフィンテック関連企業の成長は緩やかなように感じています。日本でも既存の金融機関や異業種からフィンテックのベンチャーに対する出資などが見られるようになりましたが、資産運用業関連では数えるほどです。

ロボアドバイザーに代表される、個人投資家の資産運用管理ビジネスは、これまで銀行、信託銀行、証券会社やプライベートバンクによって担われてきました。近年、投資信託会社の中には、証券会社などを通じず、独自性を出して直接募集を行う会社も出てきていますが、やはり大切な個人資産を預ける相手として、信頼できるヒトという部分は一朝一夕には変わらないのかもしれません。AIを活用した効率的な運用手法や、アセットアロケーションなども黎明期であり、実績を見極めている段階とも思われます。一方、今回の英国企業の来日で感じたのは、日々変化する規制への対応やコンプライアンス、リスク管理などの分野では、ヒトの労力、すなわちコストを低減させる動きがますます活発化する気配です。

たとえば、ある企業では、機関投資家、個人投資家を問わず、会員登録した投資家が、投資対象に関する法律上、税務上の質問や、運用会社に関する調査結果について、オンラインのプラットフォーム上で情報を入手できる仕組みを作っているようです。クラウドを活用した、このようなプラットフォームが広がれば、これまで、信用できる弁護士、税理士、会計士を探しだし、高いコストを支払い、時間をかけて得てきた情報を、廉価に短時間で入手できるようになります。これからも、フィンテック先進国である英国の状況に注目し、日本での次のトレンドについても想像を巡らせておきたいと思います。