白木信一郎の「投資運用苦楽」

第245回 < 今回の市場下落局面での対応 >

2012年年末の現安倍内閣発足以来、大幅金融緩和を援護射撃として、米国市場とも歩調を併せて上昇してきた株式市場が転機を迎えています。市場変動性の高まりについては、昨年夏頃から警戒感を高めてきました。米国金融政策の変更や中国経済の構造的変化等、大きな環境変化が金融市場に影響を与えるインパクトやタイミングを計ることは難しいため、昨年夏以降は、徐々に当社が運用するファンド・オブ・ファンズのリスクを下げ、キャッシュ比率を高めて対応してきました。

現在の株式市場の下落の原因を正確に把握することは困難であり、市場にマネーが溢れている世の中では、資産価格の下落が実物経済に対して影響を与えるという本末転倒な事態も起こりえます。したがって、当面は、高いキャッシュ比率と長期投資に耐えうる投資対象への投資を中心とした防衛的なポートフォリオを維持することになると思います。この場合、長期投資に耐えうる資産が何かということになります。

投資家毎に長期投資をする際の見方は異なると思います。バリュー(企業価値から見た割安)を重視した投資、グロース(企業価値の成長性)への評価を重視した投資、ベンチャーなどのスタートアップに対する投資、破綻企業の回復を見込んだ投資等、様々です。投資家の経験値や好み、あるいは、それぞれの投資機会との出会いによって投資対象は大きく異なります。したがって、今回の市場下落局面において、組入れる投資対象を定義づけるのは難しいのですが、それでも、長期投資を行うにあたって考えるべき重要なことがいくつかあります。

まず、個人投資家を含めどのような投資家でも、長期投資を行うためには、自らのバランスシートの右側、つまり負債・資本に見合った投資を行う必要があります。例えば、10年間の投資を行う際には、将来的に必要になる資金、例えば借入金の返済資金等を除いた純資産の範囲内での投資を心がける必要があります。さらに、個人、法人を問わず、投資対象資産の価格変動が大きくなった場合に、感情に任せて、あるいは短期的な損益の大きさ故に、早期に利食いをしたり、損切りをしない程度の投資金額に抑えた投資を行う必要もあります。

投資にあたって、投資対象を定め、投資するべき金額を自らのバランスシートの状況と(心理的なものを含めた)許容度から定めることが出来れば、次に、投資のタイミングについて考える必要があります。長期投資の場合、ドルコスト平均法に則り、時間分散を心がけることは最も重要です。しかし、投資対象によっては、投資機会が限られることがあります。新興企業への投資や、破綻企業への投資にはタイミングの見極めが重要です。この場合、2つの相反する相場の格言がわかりやすいと思います。「Don’t catch a falling knife(落ちているナイフを掴まない)」、「人の行く裏に道あり花の山」。今回の相場下落局面において、あらためて、取るべきポジション量の見極め、冷静な対応、投資タイミングの見極めについて、しっかり考えておきたいと思います。