白木信一郎の「投資運用苦楽」

第328回 < 物言う株主について >

アクティビストファンドやエンゲージメントファンドと言われる、「物言う株主」がメディアで取り上げられるようになって10年以上が経つと思われます。例えば、2006年当時、阪神電気鉄道やニッポン放送の株式買い進めを行った村上ファンドや、2007年当時、ブルドッグソースやアデランスの発行済み株式の20パーセント以上を買い進み、買収を仕掛けるなど、日本のメディアを騒がせたスティールパートナーズは、「ハゲタカ」と括られて日本の経営者やメディアから忌み嫌われたように記憶しています。

当時、アクティビストとバイアウトファンドの違いを明確に認識していた人々がどれだけいたかは分かりませんが、昨今では、日立や日産の子会社を数千億円規模で買収するKKRや東芝メモリを買収したベインキャピタル、あるいは航空会社であるスカイマークを買収して立て直したインテグラルなどは、市場に必要なバイアウトファンドとして認知されてきているように思われます。

バイアウトファンドは、一般的に企業の発行済み株式数の100パーセント、あるいはほとんどの株式を買い取り、非上場化したうえで企業業績の改善を図り、5年程度の期間を経て、再上場や他社への売却によって売却益を得ることを目的として活動を行います。バイアウトファンドと協調する企業は、事業承継やノンコア事業部門のカーブアウト、事業低迷による外部株主のサポートの必要性などが契機となることが多く見られます。

その一方、アクティビストファンドとは、上場企業の株式を徐々に買い進め、原則は少数株主の立場を維持したまま、企業側との対話を通じて株式価値の向上を目指す投資ファンドを指すことが多くあります。最近では、パッシブ投資を行う投資信託会社や、機関投資家の中にも、投資対象企業の株主総会の議案に対して積極的に議決権行使を行い、かつてのように会社の議案に対して無条件で賛成票をいれるべきではないという風潮となっています。

経営者は、毎年、毎期、純利益、EBITDA、売上/利益成長率、ROE等の絶対値を測られ、株主から経営について常に成績を評価される立場にあります。もちろん、会社経営者側にも言い分があり、例えば5年を超えるような長期的な視点に立ち、短期的な業績のみに拘る経営はすべきではない、との考え方もあるかもしれません。しかし、多数の株主を持つ私企業の場合、企業経営者以外の第三者が何らかの評価を定期的に行い、企業側の新陳代謝を促さなければ株主価値は毀損され続け、ひいては経済全体の活力が失われる事態ともなりえます。

米国では、この20年間で上場企業数が半減し、代表的な株式インデックスに組み入れられている銘柄の大半が入れ替わりながら、大幅に時価総額が増加してきました。日本でも、経営陣にとっては耳の痛い提言をすることで嫌がられることがあっても、株式価値を最大化する助けとなる可能性のある「物言う株主」の存在がこれから重要性を増すのではないかと考えています。