白木信一郎の「投資運用苦楽」

第329回 < 金融行政レポートを読んで >

金融庁から、平成30年度における金融行政の実績と今年度の金融行政の方針を取りまとめたレポートが8月28日に発表されました。題名は、「利用者を中心とした新時代の金融サービス~金融行政のこれまでの実践と今後の方針~(令和元事務年度)」というもので、内容は大きく以下の3つに分かれています。【1】金融デジタライゼーション戦略の推進 【2】多様なニーズに応じた金融サービスの向上 【3】金融仲介機能の十分な発揮と金融システムの安定の確保です。

それぞれのトピックごとに、様々な内容が盛り込まれているため、要約するのは難しいのですが、私なりに解釈してそれぞれの内容をまとめてみたいと思います。【1】については、金融庁が「ブロックチェーン等を活用した銀行を経由しない新しい決済の仕組」や「ビッグデータを活用した新しい金融サービス」について理解を深め、いかにこの分野の成長を促すことが出来るのか、また、どのような規制のあり方があるべきかについて検討している姿が見えてきます。

【2】については、NISAへの取り組みなど、「貯蓄から投資」へという流れを作るために長年、金融庁が取り組んでいる内容ですが、今回のレポートからは、銀行、証券、生命保険会社などの金融商品の売り手に対して、顧客本位の徹底、すなわち長期分散投資を促す面を押し出しているように思えます。また、年金などのアセットオーナーによるガバナンス効果なども含めて資産運用業の高度化を標榜しています。それ以外にも、総合取引所の実現や金融機関のコンプライアンス、リスク管理の高度化の必要性、暗号資産への対応について言及しており、かなり幅広い内容になっています。

最後の【3】については、特に厳しい環境下にある地域金融機関の持続可能なビジネスモデルの構築のため、金融仲介機能の向上や、経営のあり方に踏み込んだ提言が見られたのが印象的でした。また、株式の売買委託手数料に依存することから、今後ますます厳しい経営環境が想定される証券会社のビジネスモデルについての言及もありました。共通するのは、過去に利ざやの厚いビジネスで地方を含めて数多くの店舗を持ち、固定費の高い経営を続けてきた金融機関が、低金利や金融業界以外からの新規参入などの逆風下で変化を余儀なくされている中で変化に対応できていない業者への金融庁からのアドバイスとも取れる内容となっている点です。

このように、本レポートは、現在の金融事業を取り巻く環境を分析して、国内金融業者に対して金融庁、あるいは金融育成庁として様々なメッセージを伝える内容となっています。特に、今回のレポートからは、変化に対応し、顧客に求められる新しい金融サービス、あるいは金融商品を開発し、提供することを後押しするような内容と感じられました。

私どもが日々関わっている比較的新しいアセットクラスである、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、あるいはインフラストラクチャー等の実物資産は、多くの金融機関や投資家にとって、新しい収益源となりえる一方、未知の領域であるために学習が必要な分野です。当社は皆様が安全にこれらのアセットクラスに取り組めるためのお手伝いを重ねていくために、今回のレポートでも言及されている新しい領域も含めて勉強、自己研鑽を欠かさずにいたいと考えています。