白木信一郎の「投資運用苦楽」

第232回 <  金融市場に高まる緊張感について  >

2015年7月が始まったところで、世界の金融市場を見回してみると、昨年の今頃に比べて少しずつ緊張感が高まっていると感じています。昨年の夏ごろは、エネルギーの安定供給が本格化し、雇用も回復してきた米国の景気回復を背景に、欧州不安は継続していたものの、リスクの顕在化はあまり見られませんでした。

一方、現在では、ギリシャ財政危機を受けて、EUが求めた緊縮財政案が国民投票の結果否決され、ギリシャのユーロ離脱が現実味を帯びてきました。ほぼ同時期に、中国では6月中旬から上海総合指数が3週間で約30%下落するという状況が見られました。足下の相場も下げ止まりの気配は見られていません。米国の利上げシナリオと日欧の継続的な緩和政策から一方向で動いていたドル高の流れが変わることで、参加者が基本にしていたシナリオに変化が見られると資本の逆流も起こりやすくなると思われます。

今のところ、日米ドイツ等の先進各国の経済や金融市場に目立った問題点が生じていないことから、市場参加者はおおむね冷静に対応していますが、市場の変動性(ボラティリティ)はジワリと上昇しています。歴史的に、金融市場が大きな調整や危機的状況を迎える際のシグナルや前提条件について考えてみると、20世紀後半からの特徴は3つに集約されると考えています。一つ目は、投資家がキャリー取引を中心としてボラティリティ売りの特徴をもつ金融商品を追い求める状況が一定期間続いていることです。二つ目は、様々な金融商品や不動産取引におけるレバレッジの上昇です。三つ目は、投資家や事業者が資金調達サイドに不釣り合いな低流動性資産への投資を膨らませていることです。これらの三つの状況が重なった場合には、遅かれ早かれ金融市場は大幅な調整局面を迎えてきました。

それぞれの状況について考えてみると、ボラティリティ売りの金融商品は、まず中国でのイールド追求型商品の普及、米国でのCLOの復活、日本でのオプション売りを組み合わせた金融商品の普及など、その芽が見られます。レバレッジについては、米国では2008年の教訓からかなり厳しく規制され、あまり見られませんが、中国、日本をはじめとするアジアの不動産、インフラ施設への投資には高いレバレッジが見られます。また、低い利回りを補完すべく、信用度合いの高い商品にはかなり高いレバレッジがつく傾向が見られ始めています。最後に流動性ですが、ここにおいても、調達側とのミスマッチが目立つようになってきました。特に小型株式や一部のモーゲージ商品等、金融市場の流動性が枯渇するタイミングでは最初に影響を受ける分野に大量の資金が入り込み、その際の調達側の条件が非常事態の流動性を勘案した形態になっていない印象を受けています。
長期的なポートフォリオについては、軽々しく配分を変える必要はないと思いますが、個人的には多少ディフェンシブ型として、キャッシュ余力を持って有事に備えるタイミングが近づいているのではないかと感じています。