白木信一郎の「投資運用苦楽」

第336回 < 2019年を振り返って >

2019年も残すところわずかになりました。今年も1年、本コラムを通じてお付き合いいただき、ありがとうございました。2005年から書き始めた本コラムですが、毎年市場予想を年初に行い、年末にその振り返りを行ってきました。今年も年内最後のコラムということで、年初に想定した市場予想をもとに、1年を振り返ってみたいと思います。

  1. クレジット市場については、2019年を通して安定した動きとなりました。年末にかけて米国のデフォルト率が若干上向いてはいるものの、歴史的に観て極めて低位に安定しており、今年一年を通じて投資適格、ハイイールドともに債券はリスク・リターン効率の良い投資対象となりました。年初の市場予想通り、年後半にかけて倒産確率は上昇しましたが、年間を通じてここまで高い収益率を計上するのは想定外でした。米国における金利抑制方針の影響も大きかったものと思われます。
  2. 商品市場については、想定を上回る価格帯での取引となりました。原油価格については、3月末から4月にかけて想定レンジの上限60ドルを超えて66ドルに到達しました。その後、50ドル近辺まで下落することはありましたが、年末は60ドル近辺でのもみ合いとなっており、産油国の追加的な減産を織り込みつつあります。また、金価格は予想していた上昇幅を超えて、1400ドル後半まで上昇して取引されています。過剰流動性相場が続く中、買える資産が減ってきている中、消極的な選択肢としての金にも資金が流れ込んできた結果とも思われます。
  3. イールドカーブの状況については、昨年の大方の予想を裏切り、FRBは2019年中に3回の利下げを行いました。昨年には利上げトレンドが出たものと思われましたが、パウエル議長の説明するところの予防的措置として、金利は引き下げ方向に転じました。米中貿易摩擦による景気への悪影響を懸念した措置とも思われます。8月には2年債と10年債利回りの金利が逆転する逆イールド現象が起き、こちらについては予想のとおりでしたが、10月にはこの逆イールドも解消し、一過性のものと終わりました。米国の景気の先行感に対する一時的な安心感が出たことで、長期金利が上昇したことが要因と思われます。
  4. エマージング市場の動向についてはまちまちな展開となりました。中国市場は、米中貿易摩擦問題によって上振れしにくい展開となったものの、4月にかけてのリスクオン相場で一旦上昇しました。その後、もみ合いとなって年末を迎えています。足下では、あらためて中国国内における多額の隠れ債務が話題にのぼることが増えています。実質政府保証とみられる地方におけるインフラ出資等で実質デフォルトと思われるような事案がみられることから、今後も火種は尽きないものと思われます。一方、アルゼンチンの通貨安や、政情不安定なトルコの通貨安などは継続している上に、インドにおける経済の下振れリスクが懸念され始めました。
  5. 市場の変動性については、米中問題などが大きく意識された昨年末にピークをつけた後、徐々に低下しましたがレンジ内での動きを継続しています。英国のEU離脱問題については、年末にかけてジョンソン首相率いる保守党が大勝したことで2020年の離脱に向けて方向性が決まりました。2016年にキャメロン元首相によって国民投票が実施されてから実に3年以上の時間をかけ、さらに当初想定とは異なる方向に動き出した英国のEU離脱問題ですが、方向性が見られたことで市場は静観という状況に落ち着いたように思えます。

日本株式市場は、年初の想定どおり比較的健全なファンダメンタルを背景に、また、米国株式の好調さに支えられて、本コラム執筆時点で日経平均株価は、昨年高値に迫る23,850円超えとなっています。年初に想定していたレンジを大幅に上回る状況で、概して好調な企業業績と政府の継続的な金利抑制に支えられて上値を目指す状況です。地方金融機関をはじめとする金融機関のコア業務純益の悪化や、不動産関連のレバレッジ上昇等、金融システムに課題を抱えるものの総じて堅調な状況が続いています。

昨年のこの時期の市場の見方を思い出してみると、昨年12月ごろの不安定な市況を反映してか、当時から既に市場全般に対して警戒心を持っている投資家は増えていました。しかし、今年の株式市場は結果的に高値を追う展開になりました。2020年は遂に東京オリンピックの開催を迎えます。インバウンド需要も継続的に伸びており、景況感自体は比較的堅調を維持しています。また、金融当局は引き続き緩和姿勢を継続することが期待されます。このような状況下、個人的な懸念はグローバル、日本の金融システムがどこまで維持されるかという点だと思っています。金融機関の業務純益が軒並み下がる中、金融機関自体のサステイナビリティが問われる局面で信用収縮による問題が起きないかに注目しておきたいと思います。

今年も1年お付き合いを頂きありがとうございました。来年が皆様にとっても素晴らしい年になることを心よりお祈り申し上げます。