第221回 < 香港出張で感じたこと >

今週は、いくつかの会議に参加するために香港に来ています。連日、香港最大のコンベンションセンターでは様々な金融関連の会議が開催されており、あらためてアジアの金融ハブとしての機能の高さに感心しています。21日は、プライベートエクイティファンド関連の会議に参加した後に、スピーカーとして参加する翌日のヘッジファンド関連会議の打合せがあったため、かなりの数の運用者と話す機会がありました。日本では、とかく海外の悪いニュースを目にする機会が多く、アジア経済、特に中国経済に関して悲観的な見方を持つ投資家が多いのではないかと思います。しかし、いざ香港などに来てみると、中国をはじめとするアジアの成長とその多様性を目の当たりにすることになります。

ちょうど、週初に中国の2014年の国内総生産(GDP)成長率が7.4%と発表され、24年ぶりの低水準となったというニュースが発表されましたが、運用者や投資家は、中国経済の成長に自信を持っており、彼らの話を聞くと、中国の成長が多様化していることを実感します。たとえば、中国では空港インフラの開放が進んでおり、地方空港における民間によるオペレーションの試みが始まっているようです。ある参加者は、日本からの投資家や当局者の話を聞いて、日本が空港インフラの開放において中国にだいぶ遅れをとっているとショックを受けたそうです。

香港は、中国投資のゲートウェイという立場を活かして、グローバルの運用会社、投資家を惹きつけています。中国が先進国化するにつれて、より多くのグローバルプレイヤーが香港に拠点を置くことになると思います。参加する中国人の英語のレベルも高く、プレゼンテーション能力も年々高くなっています。日本では国際会議を開催する際、同時通訳を入れることが一般的ですが、香港での会議で同時通訳を見ることは滅多にありません。

そんな中、幾つかのアジアのPEファンドや不動産ファンドの運用者と話す機会がありました。不動産については、中国本土で2012年、2013年と株式市場や不動産市場が冴えない時期が続いた反動で、昨年から今年にかけては相当高い利回りの投資案件が出ているそうで、特にオフィスビル中心に投資意欲が旺盛のようです。また、PEファンド業界も引き続き、欧米の大手投資家の注目を集めているようです。これまで、中国における起業家の成功ストーリーに乗って投資をしてきたベンチャーキャピタルや成長資金を提供するグロースキャピタルのファンドが主なプレイヤーでした。しかし、それらの起業家が50歳代を迎え、企業の他者への売却、あるいは後継者難によって合併を検討するステージに移行してきたようです。今後は、バイアウトファンド等も多くみられるようになると思われます。

中国関連ファンドへの投資家も多様で、中東、北欧、北米の政府系ファンド、年金などの担当者も会議には多く参加していました。残念ながら、ジャパン・パッシングと言われた2007年ほどではないにしても、日本への注目が過去に比べて高くなっているということは余り実感できませんでした。経済のダイナミズムや潜在成長率が低いことを考えればやむを得ないことかもしれませんが、投資対象としての魅力が過小評価されていると思います。香港から見る中国は、投資家の目には確かに魅力的にうつりますが、かなり危うい部分も目立ちます。その意味で、日本には、より安全で安定したリターンの見込める投資対象も散見されます。日本は、自国市場の整備や活性化に力を注ぐことはもちろんですが、官民それぞれが、もっと海外に対してアピールを強めていくことで、多様な海外投資家を惹きつける必要があるのではないかと感じています。