第180回  < 再生可能エネルギーへの投資機会(2) >

前回のコラムでは、再生可能エネルギーの中で、特に太陽光エネルギー関係の投資機会が国内で膨らんできているとお話しました。勿論、太陽光エネルギーに資源が偏ることが危険なことは、政府をはじめ多くの関係者が認識しているところであり、最近は、洋上風力発電や地熱発電などの開発も進んでいます。しかし、再生可能エネルギーの中で、大規模電力を安定して供給するという観点からは、当面は太陽光頼みが続く可能性が高いと思われます。また、「全量固定価格買取り制度」や税制などの制度もこれを後押しする傾向にあることは、先日詳しく述べました。

一方、日本に先行して太陽光発電設備を大量に敷設したドイツ、スペイン、イタリア等の欧州各国で起きたことを見ると、手放しで日本のメガソーラーへ資金が急激に向かうことを喜んでばかりはいられません。欧州では、2000年から2005年にかけて、急速にニーズが増加した太陽光パネルや関連施設への設備投資について、メーカー各社や関連業者は収益機会と見て参入しました。国内企業はもちろんのこと、中国企業をはじめとする廉価なパネルを製造できる海外メーカーもこぞって市場に参入した結果、各種製品やサービスの収益率は急激に下落しました。もっとも、これは、全量固定価格買取り制度を政府が決めた時点から意図していたことであり、あくまでも既定路線です。つまり、健全な競争と技術革新を喚起することにより、再生可能エネルギーのコストを低下させていく方策です。

電力会社による買取り価格も政府がコントロールして徐々に低下させていきます。将来的に、家計が負担することになる電力料金の支払が青天井になることを防ぐためには、このようなコントロールは有効に思えますし、当初起爆剤としての固定価格買取り制度の前提となっていることであり、参加者全てが認識している内容ともいえます。もっとも、政府がすべてをコントロールできるわけではなく、市場は常に行き過ぎる傾向があります。結果として、欧州でも社会問題になるほどの多くの製造メーカーの倒産や業者の淘汰が起きました。また、高い買取り価格を想定していた投資家も、急激に低下する買取り価格のスピードに付いていけずに、思ったほどのリターンを得ることが出来なかったケースもありました。

さらに、20年間に及ぶような期間の非常に長い投資であるため、実際に投資が始まった2000年以降の初期の投資についても、最終的な投資結果が出ていない状況です。これまで報告されたものの中には、想定以上にパネルの劣化が進み、思ったほどの発電量が得られなくなったケースもあるようです。今後起こるであろう最大の問題のひとつとして、20年後のパネルなどの発電施設の廃棄に想定以上のコストがかかる可能性があることを指摘する専門家も存在します。また、そもそも、太陽光発電等の再生可能エネルギー自体が、費用対効果の観点から石化燃料に劣るものであり、消費者の電力料金負担の増加に見合った効果を出せるかどうかは疑問である、という根強い批判もあります。そのどれもが、時間軸をどこに置くかによって異なりますが、的を射ているものも多くあるように思えます。

しかし、原点に立ち返ってみれば、米国のシェールガス革命や日本でも可能性のあるメタンハイドレード等の実用化によって延命の可能性はあるといえども、地球温暖化を進める石化燃料の使用は、その有限性とあいまって永続しえないエネルギー源です。私達は、今後の技術革命を期待しつつも、地球温暖化ガスを出さないクリーンなエネルギーを普及させる使命を負っていると言えます。そのための実験的な役割を私達世代が担うことは、コストやリスクの負担も含めて取るべきもののひとつではないかという考え方もできると思います。それらのコストやリスクに対する認識を正しく伝え、オルタナティブ投資という側面から、私達もこれらの再生可能エネルギー普及と投資家の皆様に対する投資機会の提供に、多少なりとも貢献できればと考えています。