白木信一郎の「投資運用苦楽」

第354回 < SPAC (Special-purpose Acquisition Company)による上場について >

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国の会社が上場をするために、SPAC(Special-purpose Acquisition Company)を活用した手法が注目を集め、増加しています。手法としては、小規模な上場会社が実態のある未上場会社と合併することで、当該未上場会社が結果的に上場を果たす、所謂、Reverse Merger(日本では逆さ合併)と言われる方法と類似していますが、プライベート・エクイティ・ファンドなどの出口戦略として使われるようになり、用語が変化したようです。

例えば、SPACでは、特定の業種の未上場企業を買収、その後、合併するという目的で、特別目的会社が設立されます。さらに、その特別目的会社には、経験、知識の豊富な経営陣が準備されます。事業実態のない特別目的会社ですが、相応の資金を募集し、それらの経営陣が対象となる未上場会社を買収、合併して上場を果たします。最近では、大手のプライベート・エクイティ・ファンド等が、SPACを準備し、てこ入れを果たした未上場企業を買い取ることで、投資の出口戦略を確保するケースも見られます。

そう考えると、これまでの小さな上場会社を存続会社として、大規模な未上場企業を買い取る逆さ合併よりも、限定された手法を指す用語がSPACと言えるかもしれません。未上場企業にとって、事業を進める傍ら、上場準備を行い、数々の上場基準をクリアしていく作業はたいへんな負担になります。内部統制などをあらためて整備することはもちろん、証券取引所の審査対応や株主構成の整理など、事業のプロであっても、上場対応のプロではない会社が上場のためにリソースを割くよりは、資本市場のプロであるファンド運用会社が受け皿を用意して、事前に別途準備を行っておく方が、未上場企業が上場を果たすよりも、事務負担などを軽減できるという発想があるのかもしれません。

米国では、2014年に12社のSPAC上場が行われ、18億㌦(2000億円)の規模だったものが、5年後の2019年には、59社で136億㌦(1兆5000億円)の規模に成長しています。最近では、特に電気自動車関連の企業によるSPAC上場が増加しているようです。当社の見ている米国企業でも、最近、SPACを活用した出口戦略が予定されており、より身近な手法となってきています。一般的に、逆さ合併などでは、事業実態のない小規模会社が存続会社になることで、上場企業の価値は、買収対象の未上場企業の価値を押し下げてしまう効果があると言われていました。しかし、SPACでは、目的が明確である分、市場や投資家は、買収対象の企業価値を正しく新会社の価値に反映させることから、価格の押し下げ効果が見られないのが特徴です。

今後、日本において当該手法を活用した上場企業が登場するかどうかは分かりませんが、米国のケースを見ていると、合理的な方法のように思えます。米国の金融市場の厚みは、このような新しい手法の登場や合理化に支えられ、また、それを促す投資家の先進性や規制当局の理解によって成り立っていると思っています。私たちも、米国、欧州での金融市場の動き、変化を敏感に感じ取り、学び、模倣し、また、発展させていくことで、日本の市場を少しでも魅力あるものにしていきたいと考えています。