第129回 < 香港・スイス・アメリカ出張報告 (3) >

香港、スイスと経由しての米国出張でしたが、吹雪が来る中でも、フライトはほぼスケジュールどおりでした。おかげで、予定していたミーティングをすべて行うことが出来ました。ただし、最後の最後、帰国便でトラブルが起きました。マイアミから直行便がないために、シカゴ経由でANA(全日空)に搭乗する予定が、マイアミとシカゴをつなぐ機材が吹雪のために届かず、予定より数時間遅れてワシントンDC経由のUA(ユナイテッド航空)で東京に向かうことになりました。数時間程度の遅れであることもあり、さほど気にはしていなかったのですが、搭乗してみると、その機体が古いことに驚きました。

今では、飛行機内は当然全面禁煙ですが、昔の名残で座席やトイレに灰皿が付いています。ビジネスクラスでも座席のリクライニングは相当の角度を保ったままです。また、最近ではスタンダードになりつつある、オンデマンドのビデオ画面は当然付いていません。ファーストクラスを覗いてみると、搭乗時になにやらカセットの貸し出しを行っています。いまどき何にカセットを使うのかな、と思ってみてみると、座席にカセットデッキがあり、ここでビデオカセットを装着して一本ずつ鑑賞するようです。後で調べてみると、UAは1990年にボーイング767-Xを改名した777を34機発注していますが、たぶんその頃にUAが購入した機体ではなかったかと思われます。通常、航空会社は20年くらい機体を使用するそうなので、引退間近だったのかもしれません。搭乗していたクルーもかなりのベテランの方が大半でしたが、その分、もてなしや気遣いはとても心地の良いものでした。飛行機では、最近なんとなく杓子定規のサービスに慣れていたので、今回の最後のフライトは、少しだけタイムスリップしたような情緒のあるもので、印象に残りました。いわゆる快適さにおいて、近年の機材やサービスが格段に進歩したことを再認識すると同時に、何か大事なものを失いつつあるのではないかという、ありきたりな感傷に浸りながら機上で14時間
を過ごしました。

余談ばかりが長くなりましが、最後に滞在していたマイアミでは、700人を超すヘッジファンド関連の運用者と投資家が集まる大きな会合に参加しました。ファンド・オブ・ファンズとしての立場では、投資対象候補となる運用会社が100社250名以上参加しており、当社ファンドで投資しているファンド運用会社も数社来ていました。一方で、当社が2月に合併したコモディティ運用会社は、いわゆるCTA運用を行っており、米国にも投資家がいます。それらの投資家も参加していたのでご挨拶をしました。また、新たな投資家候補にも出来るだけ自己紹介をしておきたいという考えもありました。1日に30分刻みのミーティングを15社と行う短期でのスピードミーティングです。ミーティングの合間でも立ち話をしている人たちと少しでも多く知り合いになろうと声をかけ、名刺の交換をして回ります。そこら中に同じような行動をしている人々がいるのが印象的です。中には1兆5千億の資産を運用し、ヘッジファンドへのアロケーションも大きい、カナダのオンタリオ州教職員年金の運用担当者の顔も見えます。もっとも、彼らは私のようにあくせく動き回らないでも、周囲には絶えず人の輪ができています。

今回、多くのミーティングを行い、1-2年前に比べると投資家の投資意欲が格段に回復していると実感できました。ただし、投資家が何しろ良いファンドにドンドン投資するから早く情報をもってこい、という雰囲気でもなければ、ファンド側も早く資金コミットをしないと、もう投資資金は受け付けないぞ、というような2005-2006年のような熱狂的な雰囲気ではなく、もう少し落ち着いた、思慮深い情報交換を行っているという印象を受けました。慌ただしいスケジュールではありましたが、運用者の情報獲得や、投資家情報収集の双方について、今後につながるネットワークが出来たのではないかと思います。

2010年12月末時点の統計では、ヘッジファンドへの資金流入が完全に回復し、投資資金としては過去最高に並んだということです。しかし、機関投資家や個人の資産運用残高全体における規模はまだまだ限定的でもあり、今後も運用スタイルの多様化と運用者の広がりは進んでいくものと思われます。広がっていく最新の投資対象や投資手法を常に把握し続けることは容易ではありません。これからも、このような会議の場を効果的に使うことで、情報のアップデートを行っていくつもりです。