白木信一郎の「投資運用苦楽」

第302回 < 仮想通貨の最新事情 >

昨年9月に仮想通貨に関するコラムを書いてから、はや10ヶ月が経ちました(http://www.astmaxam.com/mailmagazine/mail.php?detail=281)。前回のコラム以降、2017年12月17日には仮想通貨の代表格であるビットコインが2,236,230円の最高値を付けた後、わずか2ヶ月たらずで697,904円へと3分の1の価格に急落しました。足下では、価格変動は多少落ち着き60万円から70万円台での推移が続いていますが、多くの市場参加者に投資対象としての仮想通貨の価格変動リスクを認識させることとなりました。

仮想通貨のデータ会社によれば、現在までに1600を超える仮想通貨、もしくはトークンが発行されていますが、米CNBCのニュース等によれば、過去に起きたICO(イニシャル・コイン・オファリング)のうち800件以上が詐欺やイタズラによるもので、価値のない仮想通貨やトークンが溢れているとも言われています。一方、2017年に38億ドルを集めたICOは、2018年には既に119億ドルを超えているともいわれており、ビットコイン価格の急落に関わらず、仮想通貨を活用した資金調達はますます活況となっているようです。

このように、黎明期にある仮想通貨の成長の鍵を握るのは、適正な規制と価格の安定性ではないかと考えています。適正な規制下におかれた安全な投資対象資産と認識されれば、これまでの投機目的の個人投資家以外に、機関投資家の参加が見込まれるため、市場規模は更に拡大する可能性が考えられます。一時期、ビットコイン取引の90%のシェアを持つといわれた中国でしたが、今年7月6日には、中国当局は中国元によるビットコインの取引量が全体の1%を下回った旨を発表しています。昨年から仮想通貨取引およびICOの全面禁止を行った成果が出ている形です。仮想通貨というイノベーションに対して過度な規制をかけているケースのようにも見える一方、投機家の排除という観点からはプラスの動きだったのではないかと思われます。

現在注目されているのが、シカゴオプション取引所(CBOE)が米国証券取引委員会(SEC)に申請しているビットコインを裏づけとするETFの商品申請が承認されるか否かという点です。SECは代表的な仮想通貨であるビットコインやイーサリアムが「有価証券」に「該当しない」ため、有価証券としての規制の対象外にあるとしています。ETFや投資信託の形で一般投資家や機関投資家が安心して仮想通貨に投資できる形態になることで、商品自体が成熟し、したがって安定的な成長が見込まれる可能性が出てくるものと思われます。

ブロックチェーンが仮想通貨を支える技術というだけでなく、本来の「分散型台帳」という仕組みを活用したデータ管理、処理等の様々な分野に転用が可能な革新的な技術であることは周知の通りです。一方、新しい技術は人々のあくなき探究心、そして欲によって開発され加速する側面があると思います。今回、仮想通貨という新しい投資対象の誕生が人々の興味を惹きつけ、ブロックチェーン技術の発展に役立ってきたと考えることもできます。

ビットコインETFの商品化、そして、仮想通貨に投資できるファンドの登場によって、これから一般の投資家や機関投資家にとっても仮想通貨が投資対象として身近になる可能性があります。決済機能をもつ「通貨」としての本来の役割と成長の期待できる「投資対象」としての側面がどのように影響しあいながら発展していくのか、引続き注視したいと思います。

あけぼの投資顧問株式会社 CEO兼CIO

ロンドン・ビジネススクール卒
1990年代はじめから債券投資、運用業務を経てヘッジファンド及びプライベートエクイティファンド等のオルタナティブ資産への投資を担当。ヘッジファンドの投資戦略に詳しく、セミナー、コンファレンス等において講師もつとめる。
AIMA(オルタナティブ・インベストメント・マネジメント・アソシエーション)日本の副会長。

著書:
[完全版]投資ファンドのすべて(2014)」金融財政事情研究会)
投資ファンドのすべて(2006)」(金融財政事情研究会)