白木信一郎の「投資運用苦楽」

第315回 < 欧米出張について >

久しぶりの欧米出張でしたが、ポーラー・ボルテックス(北極極渦)という現象のため、北米が大寒波に見舞われたタイミングでの渡米となりました。事前に寒さは聞いていたので、防寒対策は十分してきましたが、シカゴでは摂氏マイナス20度という、これまで経験したことのないような寒さのため、5分と外に出ていると手袋越しでも手が痺れるようでした。 今回は、ニューヨークに3泊、シカゴに3泊、ロンドンに3泊で各地の投資家と運用者とのミーティングが中心となりました。出張全般を通じて感じたのは、膨れ上がる投資家マネーによって資産運用業界が肥大化している現象です。たとえば、2017年には世界の追加型の投資信託への流入金額は2兆7千億ドル(約300兆円)に達し、2018年は米国の金利引上げの影響もあり、若干流入額が減少してはいるものの、世界的な大手の運用会社ともなれば、一社でも年間数兆円にのぼる受託を受けることがあります。 過剰流動性の影響もあり、世界中の巨額の資金が運用先を求めて流入する先は、大手資産運用会社を経由した世界の債券、株式、通貨、不動産、インフラ資産等が主となっています。小型の運用会社や投資家による直接投資も見られますが、これまで以上に大手運用会社による寡占状況が顕著になってきたように見受けられます。増大する大手の機関投資家からの要望に応えるためには、投資家対応に特化したチームをはじめ、かなりの人員、体制を持つ必要があり、小規模運用会社では対応が困難になってきているのも寡占化理由のひとつと思われます。 大手運用会社の中でも、バンガードに代表される市場インデックスにあわせた運用を中心に行う所謂パッシブ運用会社と、銘柄選定を得意とする運用や市場環境に合わせて組み入れ資産を大幅に入れ替えるアクティブ運用会社があります。近年は、運用手数料を抑制しやすいパッシブ運用会社の台頭が目覚しいものの、アクティブ運用に対する投資家の期待や信任も厚いため、運用手数料率は低下傾向にあるものの、アクティブ運用の運用資産も順調に増加している状況です。 今回、アクティブ運用を行う大手運用会社との面談も複数行ってきましたが、市場に対する見方はそれぞれ異なるものがありました。たとえば意見が分かれたのが、英国についての見方です。一部の米国系大手運用会社の運用担当者は、EU離脱に揺れる英国市場については悲観的な見方を持っており、アセットアロケーションを抑制する方向で運用を行っていました。一方、欧州拠点の運用者は、EU域内の国と比較して、英国の比較優位が大きいとの観点から、クレジット中心に英国への投資を増加させていました。 また、近年、複数資産を扱う運用会社の中で、クレジット投資が急増していることが共通の現象としてみられました。流動性のある社債やCLOのみならず、私募のプライベート・クレジット・ファンドの組成、運用の規模が大きくなっているのは世界的な現象といえます。これは、近年、世界的に膨張を続けているプライベート・エクイティ・ファンドの副次的な側面ともいえますが、それ以外にもダイレクト・レンディングに代表されるような、これまで銀行業がカバーしていた領域に資産運用会社が入り込んでいる状況が長期的なトレンドとして見られます。 一方、膨張するマネーの一翼を担っている年金基金、財団、富裕層資金を中心とした投資家は、独立系の運用者を好む傾向があり、大手運用会社と小粒の独立系運用会社の二極化が進んでいる背景にもあります。独立系の運用会社の特徴は、パフォーマンス追及への機動力の高さにあり、運用成績と収益機会の多様化を第一とする投資家の要望とマッチします。欧米では、日本にいては見られない、多様な運用者の種類と、運用者、投資家、関係者が織り成す巨大な金融のエコシステムを見ることができます。 極寒の天候の中での海外出張でしたが、今回もさまざまな収穫がありました。今後も日本の市場だけにとらわれず、広くグローバルの視点で投資運用に関わっていきたいと考えています。