白木信一郎の「投資運用苦楽」

第171回  < 2012年 投資環境予想を振り返って >

本年も大変お世話になりました。本コラムを始めた2005年から数えて7年が経ちます。毎年年始に1年の市場環境を予想し、実際の市場と予想の違いについて年末に振り返ってきました。2012年も残すところ数日となりましたので、通例に従って年始の市場環境予想の採点を行ないたいと思います。

(1) 信用(クレジット)市場について ○
2012年初の予想では、ほぼ予想通りの推移となりました。年初堅調な状態から年央に多少弱含んだ後、年末にかけて堅調な推移となり、年間を通じては資金流入に押されて全般に良好なパフォーマンスを記録しました。また、米国住宅担保債権に対する資金流入が続いたことによるプラス収益も想定どおりでした。但し、この分野については、
当初想定よりもパフォーマンスは上振れしました。

(2) 不良債権市場について      ○
予想通り、堅調な展開となりました。欧州危機による金融機関からの資産売却をこなし、米国景気の回復基調を受けてリスクオンの際の投資家から見た対象資産となったと思われます。米国のみならず、欧州、アジアでも不良債権を買い進む向きが見られたほか、不動産市場中心に資金が流入したことも特徴的でした。

(3) 商品市場について        △
通年で緩やかな上昇を予想していましたが、エネルギー価格は株価指数が堅調な中でも全体的に軟調な展開となりました。貴金属価格もほぼ横ばいで推移し、想定していたような動きとは多少異なりました。穀物価格の高騰は、米国の旱魃という予想していなかったイベントによって引き起されました。一方で、過去数年と異なり、商品間での
動きにバラつきが目立つという点では、予想していた通りとなりました。

(4) 金利について          ○
年前半に株価上昇に伴う金利上昇圧力がかかり、それがQE3の期待の出る中で低位に抑えられるという展開は予想通りでした。また、全世界的な低成長懸念と、中央銀行の国債購入への意気込みが見られた年央にかけての低金利で、多くの債券系ファンドのパフォーマンスが良好だったことも予想に沿ったものでした。一方、年末にかけてのリスク
回帰的な動きが強く、僅かですがインフレ期待からの金利上昇の目が見えてきたところまでは想定を超えた動きでした。

(5) エマージング市場について    △
年初こそ軒並み市場は好調でしたが、4月以降の株式市場の軟化が予想以上に続き、米国株価指数を下回る展開が続きました。年末にかけて株価は急回復を見せましたが、欧州の景気減速が足かせとなった形で、想定よりも市場は弱く推移したという印象でした。

(6) 市場のボラティリティについて  △
市場のボラティリティは2012年を通じて想定よりも低い推移となりました。株価が下落する局面であっても、変動率の上昇幅は抑えられ、米国のVIX指数については20台を超える局面は稀でした。想定を上回る資金が市場に溢れた結果といえるかもしれません。

(7) 日本株式市場について  ◎
想定どおり、日本市場は年末にかけて堅調な展開となりました。年央こそ、年初の価格に戻る局面は見られましたが、経済が底堅く推移したうえ、年末には安倍内閣誕生により、強い金融緩和政策が取られるとの見通しから、円安、株高が進行しました。

(8) ヘッジファンドについて ○
2012年もヘッジファンドに対する資金流入は予想通り続きました。しかし、ヘッジファンドのパフォーマンス自体は想定を下回りました。特に、米国株価に対してほとんどの運用戦略がアンダーパフォームしたことから、ヘッジファンド関係者にとっては不本意な一年だったかもしれません。大手ヘッジファンドに資金が流入し、伝統的資産を
扱う大手運用会社との差がより縮まった1年といえるかもしれません。

2012年初に多くの運用者、投資家と話したときに、90%の人々が今年の市場に対して、非常に慎重な見方をしていました。結果として、上昇相場には付いていくことが出来ず、上値追いを余儀なくされる、収益をあげるには難しい状況となったかもしれません。そのような環境下では、市場のダウンサイドリスクは限られ、年初に筆者がコメントしたとおり、大勢の投資家が、年初に想定していたよりは好調なパフォーマンスを記録したと思われます。一方、オルタナティブ投資、特にヘッジファンドのパフォーマンスが相対的に軟調であったことから、関係者には試練の時と言えるかもしれません。米国の財政の崖問題の期限が目前に迫っていますが、現状は他に目立ったリスクが顕在化していません。来年前半は強気を予想する投資家、運用者の数がかなり増えている状況です。これを踏まえて、来年初にあらためて2013年の市場環境予想を行ないたいと思います。
皆様、2012年も大変お世話になりました。来年もなにとぞよろしくお願い申し上げます。