白木信一郎の「投資運用苦楽」

第121回 < 再びデフレについて (2) >

前回のコラムで、特に日本や米国などの先進国におけるデフレの進行や、デフレリスクの高まりが顕在化してきている状況をお話しました。また、デフレ下での投資家行動、投資対象資産の動きについて筆者の考えを述べました。普通に考えれば、債券中心のポートフォリオが一般的なデフレ対策となりえるわけですが、先進諸国でのデフレ期待が、ある程度市場参加者の中でコンセンサスとなった場合に、市場価格の推移にどのような変化が出てくるのでしょうか。

過去の過剰流動性を伴う金利低下局面では、少しでも高い収益を求めてレバレッジの増大と非流動性資産への資金流入が起こりがちでした。これに先進各国の低成長とデフレという条件が加わったとき、レバレッジをかけられる案件は格付けの高い資産に絞られ、非流動性資産についてもディストレス資産などの成長を抜きにした価格ギャップが見込まれる分野に対象が絞られる可能性があります。このような投資は、成長に資する投資を制限し、投資対象の期待収益をより押し下げる力となって作用することになると思われます。このように、デフレ下での投資は、先進国の低成長を助成する負のスパイラルに陥りやすいという特徴を持っていると思われます。

結果として、債券投資の妙味は薄れてきます。利回りの低下と期待収益率の低下のみならず、市場でレバレッジの解消等が進む場合に予想を上回る損失を計上するリスクも高まります。また、社債や流動性の低い債券にまで資金が流れ込んでいる状態で、その逆流が起きるときは、投資家が想定するよりも資産の現金化に時間がかかり、価格が想定以上に下落するなどの思わぬコストが必要となる場合があります。

2008年9月以降の金融危機から2年が経過し、金融機関をはじめとして投資家も当時のダメージから立ち直ってきたと思われます。まだ、2年前の記憶は鮮明ではありますが、すでに当時と同じようなリスクを再びとり始める投資家も出てきていますし、新興国の有望案件や、過去からの乗り換え案件に関しては、かなり大きめなファイナンス(レバレッジ)を提供する銀行も出てきています。中央銀行のなりふり構わない資金供給により、金融セクターにはキャッシュが滞留しています。これらの資金が次に向かう先はどこでしょうか。

大量の資金供給により、金融機関、企業の資本調達コストが下がっているとはいえ、投資家や株主は過去の利回りやリターンに基づいて期待利回りを要求するので、銀行、企業、運用者は株主、投資家に対して市場で容易に得られる利回りよりも高いリターンを出す必要に迫られます。今後債券は、価格上昇、利回り低下から期待利回りに見合わなくなることはかなり明らかなので、人々は、デフレ下であっても期待利回りの高い資産に投資を振り向けざるを得ません。しかし、前述のようにリスク・リターンが悪化を続ける債券への投資よりも、流動性があり、馴染みがあり、一般的には過去の期待リターンの高い株式へと資金が戻る可能性があると見ています。

但し、この資金の流れは企業の成長性や本質的価値との比較での割安度合いから買われるわけではなく、過剰流動性の帰結として流れ込む先としての資産クラスの一つの色合いが強いと考えています。株価上昇が資産効果を通じて実物経済の活性化につながる時代なので、この流れがデフレに対する一定の歯止め効果として期待できます。もっとも、筆者は、投資家が株式市場に対して期待しているのが必ずしも企業の成長ではないとすれば、空売り、もしくはロング・ショートでの運用資産が増加するほうが、合理的な行動の結果ではないかと考えています。