白木信一郎の「投資運用苦楽」

第120回 < 再びデフレについて (1) >

1年前までの米国人運用者とのミーティングでは、10人中9人が米国でのデフレの可能性に対して否定的でした。2009年初に本コラムで、米国でのデフレの可能性に言及し、当時、金融関係者に対して、ことあるごとにこの考え方をぶつけていましたが、反応は非常に薄いものでした。米国の某大手運用会社の会長を囲んだグループミーティングの場で、この考えを話したときは、その会長を含めて、30人程度の参加者のどなたからも賛同の意を得られなかった記憶があります(筆者が空気を読めず、皆さんが某社会長に気を遣ったという部分もありますが、、、)。

しかし、最近では、半数以上の運用者が中長期でのデフレの可能性を認めるようになったと感じています。20年近い長期にわたる物価の低下と、政府・日銀の断続的緩和政策による過剰流動性の並存を見てきた立場にいる日本人のわれわれからすれば、住宅バブルの崩壊を契機として、当時の日本と似た様な状況を辿りつつある米国について、中長期的な需要不足、金余り、低金利の状態が続くことに、あまり違和感はないと思います。

これまでのコラムでも書いてきましたが、デフレに対応する資産運用の処し方として、(1)国債(金利低下局面では値上がり益が見込まれます)(2)国外の高成長国債券、高成長国内企業(高利回り、時価総額の上昇が見込まれます)(3)格付けの低いハイイールド債券の保有を提案してきました。伝統的資産以外の投資対象として、また、(1)買持ちに偏らず、リスクを限定した株式のロングショート戦略、(2)金融先物、商品先物の方向性を捉えて、売買を繰り返すマネッジドフューチャーズ戦略等の考え方があることに言及しました。実際、国債、転換社債などを含むハイイールド債に対するグローバルでの投資家の需要はすさまじく、2008年の金融危機後の2年で、大量の資金が流れ込みました。

結果として、非常に割安であった債券価格は上昇し、高格付け社債を中心に、銘柄によっては2006年などの金融危機以前のスプレッドが非常に小さかった頃を下回る利回り、つまり高い価格に至っています。中央銀行のなりふり構わない資金供給と投資家の安全志向が相俟って、このような資金流入が生じています。そのさなか、商品先物も金価格を中心に上昇を続けていますが、これはデフレの波とは反する動きに見えます。金余りの結果、実物経済よりも実物資産が志向されていることと、特に金(ゴールド)には通貨代替の価値が認められた結果とも言われていますが、個人的には過剰流動性が生み出すバブルの一類型と考えています。ただし、コモディティについては、これまでも複数回コラムの中で取り上げてきましたが、運用資産の中に組み入れるべき金融資産としての見直しが進んでいる側面もあるので、需要には底堅さが見られるのも事実です。

次回のコラムでは、このように、先進諸国でのデフレが、ある程度市場参加者の中でコンセンサスとなった場合に、市場価格の推移にどのような変化が出てくるのか(あるいは出ないのか)について考察を加えてみたいと思います。