白木信一郎の「投資運用苦楽」

第115回 < 最近の市場環境について >

運用を行う際に、いくつもの経済指標や市場データを横目で見ながら自分なりの相場観を作っていくことがあります。ただし、その相場観に囚われてしまうと、市場動向の変化についていけずに思わぬ損失を計上してしまうので、あくまでもポートフォリオの運営は柔軟に行います。具体的には決めていたストップロスは自分の相場観と相反する投資行動であったとしても忠実に実行する必要があります。

それでも、長年相場と向き合っていると、経済指標や市場データやニュースを見ることで勝手に頭の中でいくつかの市場動向のシナリオを走らせるクセがついているような気がします。通常、自分の中では確率の高い「メインシナリオ」、自分が最も実現してほしくないと思っている「リスクシナリオ」、そのリスクシナリオとは反対に、統計上あまり起こらないケースで、大きな益がでるか、損失が出るかの方向はわからないけれど、確率的には非常に少ないと思われるような「びっくりシナリオ」の3つが頭の中に浮かんでいます。「びっくりシナリオ」が実現すると、収益がプラスに出るかマイナスに出るかはわかりませんが(だいたいマイナスにでます)、想定しているパフォーマンスの上限・下限を超えてしまうので、リスク管理上は困ったことになります。

運用の行動を起こす際に、心理的なバイアスを差し引いておくことが重要なので、通常時、頭の中で「リスクシナリオ」には「メインシナリオ」と同じくらいの確率を割り当てておきます。但し、たまに、「びっくりシナリオ」に遭遇することもあるので、ここにも常に一定以上の割合の可能性をおいておくことになります。これらの確率は固定ではなく、相場環境に応じて変動します。特に「びっくりシナリオ」が起こりやすいケースは、市場参加者が安心しきっているときが多いようです。言い換えれば、市場のボラティリティ(変動性)が低位安定しているときに相場が想定の範囲を超えて振れるイベントが起きやすくなるという、ちょっと皮肉な状況です。

このような観点から今日の市場環境を見てみると、リーマンショックが22ヶ月前におきたあと、市場は落ち着きを取り戻しつつありました。その後2ヶ月前にギリシア問題で22ヶ月前の半分以下(ボラティリティ・インデックス(VIX)でいうと80台と40台)のショックが起きました。今度はさらに小さなショックが起きて、割と長期にわたって市場が落ち着く可能性があると思っています。個人的には年内か来年年明けに理由はわかりませんが、市場がくしゃみをして、そのあと場合によっては1-2年の間静かな市場環境が続く可能性もあると思っています。静かだからといって、株式市場が良いかというとそういうわけではなく、「だらだら下げる」という選択肢も十分にありえると考えています。

これが私の現在の「メインシナリオ」のひとつです。もっとも、同じ確率の「リスクシナリオ」と、現在の市場変動性の低下を受けて、その確率を徐々に(私の頭の中でのことですが)上げている「びっくりシナリオ」を足すとその確率のほうが高いので、まったく確かなことは言えませんが。。。