ファンドにとって財務諸表ってどうして大事なの?いい案件を並べればいいんじゃない?

私の住む浅草も、9月も半ばになると、まぁこれといった面白い催しというのもあるわけでなく、緊急事態宣言下でもあるから、と言って何があるわけでもないのですが、喜ばしいことにそれなりにいらっしゃる方もいる、ということでか、そんなに忙しいはずもない私のところのお土産屋にもパラリンピックが終わったところで海外からの来客がいらっしゃったそうなのです。

キャッシュレス、なぜするの?

来たことのある方ならばご存知ですが、当店は60年以上の昔からのニコニコ現金払いのお店。ところが、さすがグローバルなお客さまですからクレジットカードでのお支払いを求められたそうです。お店の前にはそういうインバウンドなお客様が来るだろう、なんて自動外国為替交換機も置いてあるのですが、いかんせん、このところの旅行者の減少からずっと利用停止状態なのでそのお客様の手持ちのユーロも交換できません。ということで、この1年半にしては大きなお買い上げになりそうな7,000円くらいのお買い上げのはずが手持ちの円での支払いによって 2,500円程度であとは諦めてしまったそうです。

そんなでしたので、その日の夕方に、土産物屋の女将と書いて義理の母と読む彼女から、クレジットカード決済を導入したいのだけど、と早速私に電話がかかってきたのですが、この義母様、今までクレジットカードはおろか、キャッシュカードすら持ったことがないのです。それもそうです。お土産屋に団体旅行向けの食堂をやっていた頃には銀行が集金にきてくれるので自分でキャッシュカードを使ってATMからお金を引き出す必要なんてない人生を送ってきたのです。今や誰もそうは呼ばない、母さん助けて詐欺の電話がかかってきた時にも、キャッシュカードを持ってATMへ、なんて言われてもキャッシュカードなんて持ってない、と言って電話を切られて以来、どの特殊詐欺組織からも電話がかからなくなったくらいなのですから、特殊詐欺の間での情報ネットワークに感心すると同時に、そんな人にクレジットカード決済の仕組みをどうやってお店に入れるべきか、このところの私の最大の悩みだったりします。

あなたの生活はどこかで記録されている。

さて、そんな義母ですら、らくらくスマホを持っています。ということは彼女がどこにいるか、というのは彼女の携帯の位置情報を使えばわかります。流石にSNSはしませんから、自分で写真を撮ってネットで掲載するなんてしませんが、それをすることで自分がどこにいて何をした、という情報がだんだん積み上がってきます。おかげで私の食生活とお昼ご飯の予算は #みやたべろぐ のおかげで完全情報開示だった時期もあるくらいです。さらにいえば、義母は現金決済だけですのでどこで何をいくら買ったか、という情報は義母とそのお店の人だけ、あとは義母がおしゃべりなのでどこの店が今日は安かったわよ、なんて近所に言いふらさなければ誰にもわからなかったのですが、今やクレジットカードにデビットカード、QRコードなどなどで、あなたの買い物とその結果のあなたの嗜好、実質的な可処分所得などなどはいろいろなところで匿名・実名関わらずあちこちで知られているのです。

なんて、いつもの機械オタクによるデジタル社会のプライバシーみたいな展開っぽいですが、本題はそこにはありません。私たち自然人というのは、体を持って実在して、生きるために移動して、買い物をして、食事をして、という日常生活を行います。最近では、だんだんその活動の記録、というのが、毎日のジョギングをアプリで記録するがごとく、世界中のあちこちのデータベースに蓄積されているわけですが、さて、ここは運用会社の超オタクなおっさん、略してCOOのブログ、ファンドの世界ならこれがどうなるのか、というのが今回のお話です。

で、ファンドにおける活動の記録というのは

ファンド、というのは、会社型だろうが、日本人ならみんなが大好きな信託・契約型だろうが、前回触れた組合型だろうが、生身の人間、法律っぽい言葉で言うならば、自然人ではないですよね。仕組みとその根拠法によっては法人格、と言って、法律上は人扱いする、というものがありまして、おかげで登記所に登記されてその国の発行する書類を通じた存在確認がされ、税法をはじめとした法律にも行動を制限されたり保証されることになります。他方で、法人格がない、というものでありますが、そう言う時でも、ファンドの名前というか名義で色々な行為を行うことのできる、代表権を持つ誰かさんがそのファンドになり代わって経済活動をすることになります。

さて、ここで、経済活動をする、ということは、お金を受け取るか支払うか、のいずれかを行っている、ということになります。でも、何もないところでお金の授受、と言うのは発生しないですよね。と言うことは、書面の有無を問わず、何かしらの契約を結ぶか同意をするかしている、と言うことになり、それって、ファンドというものが何かしらの判断の元に誰かと何かの合意をしている、ということになるのです。

ところで、経費の正しい意味、知ってますよね?

と言って自然人のように、生身の体があるわけではないですから、お腹が空くからご飯を食べることもなければ、1日の疲れを癒すべく銭湯でお風呂につかる、なんてことはありません。まぁ、法人格を持っている例として、こうイメージするとわかりやすいのですが、ファンドの投資先を確保するための営業のために、いやいやうまくも感じない高級フレンチで投資先となる企業さんの社長さんを無理無理接待してきたんだけど、これは会社のため、会社という法人に餌を与えているんだ、なんていう人、いるかもしれません。経済効果的には会社には営業活動のための経費が発生していますが、会社は猫ではないんですから餌は不要ですし、口ではそう言っているけれども本当はおいしかっただろうフランス料理の脂肪分はあなたのお腹の中で蓄積されて身になっている、のです。

同様に(?)、投資検討先への移動のために高速で好きな時間に移動できる手段として車が必要だ、と言ってアストンマーチンを買う、といっても、会社は目に見える形で存在しませんから移動しませんよね。会社を代表したあなたがジェームズ・ボンドのように颯爽と移動するわけです。同じように、ファンドに訪問されたらちゃんとしたところにいないと格好がつかないから、と汐留に格好のいいオフィスを構えます、って、それってファンドじゃないですよね、ファンドを運営するあなたの格好をよく見せるため、ですよね。

と、まぁ、ちょっと(勘違いして)費用の使い方を間違えた判断をファンド(や、会社経営でもいいですが)がしているようでは投資家としては困るわけです。会社なら経理部が「これは経費で落ちません」って言ってくれるかもしれませんが、ファンドの場合、ちゃんとこのあたりの歯止めが効かないところでしたら、そのファンドの行為の決断の結果はスマホに残るのではなくほとんどが経済活動の形で行われるわけですので、結果としてファンドの銀行口座と資産に影響し、さらには年に一度にまとめることになる財務諸表の中に、膨大な費用の内訳として反映されるのです。

ちなみに、ファンドは費用がかかる、のは基本です。サービス業なのですから。

なんて言いますと、じゃあ、国内の投資信託を比較する財テク雑誌を中心に聞こえてくる、投資家のために費用のかからないファンドが正義で、費用というのは何がなんでも下げなければいけないのか、というと、ファンドの運営を預かる事務担当から言わせてもらうならば、そういう安請け合いな運営をするファンドというのは、投資行為も処理も単純でない限りは事務面で必要なことが出来ないので手抜きをされる、クオリティの悪い仕事をしている、と考えてください。会社がお仕事をするには独立採算制で、適正な費用に基づいて法令等に対しても適正で(誇り高く)お預かりしている資産を保全管理するサービスを提供するのが健全ですので、安い値段であれもこれも、と後からなし崩しに行うことで、日本で言うところの最低賃金になる時給以下で働かせる、なんてことになって、ブラック企業だな!と別の方面からご指導をいただくなんてもってのほかですし、それが出来ないとすれば、法令順守に加えてQoLを向上させることなどから限られた時間の中でできるように、工程を減らすほかないのです。

20年以上も昔ならリーズナブルな洋服や靴を買うが如く、香港やシンガポールで事務代行して貰えば安い労働力でクオリティのいい仕事をしてもらえる、なんて言えたかもしれませんが、この20年で日本以上に経済成長を遂げた国はどこもかしこもですから、この21世紀も20年以上経って、キャッシュカードすら持っていない人が浅草に一人くらいしかいない今となっては、海外で事務作業をお願いする = 安くて手頃な事務を期待する、にはならないのです。いわんや、日本でこのあたりの事務をちゃんとできる人なんてそもそもそんなにいません。多分AIに取って変われることもない仕事のはずなのですが、どうも人気がなくてなり手もそんなにいないんですよねぇ。地味ですから、私と一緒で。ですので、適切なサービスをしてほしいならば自分の過去の体験と一方的な論理で話すのではなく、この瞬間の市場程度をちゃんと払う準備をしましょう、と、とあるところにこれをいい機会に強く申し上げるところです(どこにかって?内緒です。聞かれたらこっそりと大声でお答えしますが。。。)

で、財務諸表。なぜ理解しないといけないか、というと。。。

閑話休題。財務諸表、というのは、そう考えると、会社もそうですがファンドも同じで、如何にファンドが運営されて、判断をしたか、というのが見えてくるもの、になっています。時々、財務諸表を読む、なんて言いますと、簿記一級を持っているとか公認会計士の資格を持っているとか、特殊な技能に思えますが、全然そんなことはありません。なぜその費用が発生したのか、その費用の額は妥当なのか、と思い巡らせるだけで、ファンド(でも、会社でも同じです)が何をどう判断したのか、というのが多かれ少なかれ(合理的に)類推できてくる、それを繰り返すことで本当にファンドが何を考えて判断をし、投資活動をしたのか、というのが徐々に見えてくるようになっていくのです。

とは言え、財務諸表にも限界があります。財務諸表では、その時点で、何をいくら持っている、などは見えます。でも、それが(近くても遠くても)将来値上がりするのか、正しく投資先を選んだかどうかはわかりませんよね。さらに言えば、守秘義務の都合でそもそも何を持っているのかが投資家にすら開示されないとそれが本当にどうなるのか、なんて想像できませんよね。そのような、この瞬間の資産や負債の状況や、この期間の経済活動としての損益、だけの情報では過去がそうだった、だけしかわからない、のです。まぁ、そのおかげで運用会社は「過去のパフォーマンスは将来を保証するものではありません」と言わなければいけないのですが、とはいえ、このような疑問については、その答えを握るのは現在の営業活動なのか、研究開発した新規商品なのか、はたまた、ちょっと見せ方を変えた既存の商品なのか、はたまた、市場参加者の見方の変化なのか、SNSでバズればいいのか、なんて、今までの財務諸表に対して行ってきた定量的な判断だけでは測りきれません。そのあたりは、私より投資を担当しております、社長のブログのどこかにあれこれ埋もれているような話ですので私は触れないでおこうかな、と。

ごめんなさい。今回はオチもなければ滑りすらしない。。。

ということで、なんか伏線もその回収も、オチもつかない話でしたが、どれもこれも、この木曜にグループ初の共同ウェビナーを弊社と弊社の親会社とで行ったのですが、その開催にあたっての動画作成と動画編集に追われたので、睡眠時間の減少とストレスとで脳みそがこの1週間ほど動いていないから、という、普段と変わらない(ブラックコーヒーが常に必要になるようなブラックな)生活だろ、と言われそうな言い訳をさせていただこうかな、と(ですので、こんな仕事生活をしているなんて、某なんちゃら署には御内密に。。。おかしいなぁ、この間、こういうのはダメよ、っていう立場の人の試験をウケたばかりなのに。。。)。ウェビナー自体は、すみませんがクローズドな形での開催でしたので多くは語れませんが、そのおかげで、と言ってはなんですが、こんな動画を作りました。取材15分、作成30分、本編2分の超大作です。

こちらで、(だいぶ効果がないものの)緊急事態宣言やまん延防止法による、足を使って移動のできる個人に対する移動制限のかかっている(はずな)今、移動のためにアストンマーチンに乗ってくる、なんてしなくとも、007シリーズを見るが如く弊社に遊びにきた気分だけ楽しんでください。あ、弊社の家賃はファンドに払わせてませんからね(笑)