みやたしのぶの「投資小噺」

「ベトナム」と掛けまして「Industry 4.0」と解きます。その心は。。。

いつも浅草の風物詩をネタに投資の話を組み合わせて書いていますが、たまには別の場所と絡めたお話でも。

先日、この10年ほど付き合いのあるベトナムの運用会社の年次投資家集会に参加してきました。先方のCEOからも「今年で来るのが10回目だね」と言ってもらうほど、この会社さんとの国内でのファンド設立のご縁を元にこの10年間、現地に行っては空港から街の中心部までの往来から、都市部の風景の移り変わりを定点観測するように眺めつつ、投資家集会で取り上げられる話題の変遷にこの成長著しい国の今を感じてきました。

ベトナムのこの10年をざっくりまとめると

たまには自分で撮った写真でも
たまには自分で撮った写真でも:ホーチミンの今の夜景

ベトナムと言うと、どうしても市場規模が小さいことやいわゆるエマージング市場といいながらもMSCI新興市場指数に入っていないことからフロンティアな位置づけにあるため、あまり注目されていない方も多いと思いますので、私情を絡めてこの10年をまとめてみたいとおもいます。

2006年頃から株式市場を俯瞰するVN Index が1000を超えて、さあ一気に、というところで世界的な市場の急落の影響を受けて2009年ごろには5分の1以下になり、その後も金融システムの不安定や不良債権の積み上がりなどでインフレが加速したりしたものの、5年ほど前からのFDI(外国直接投資) に伴う国際的な企業の工場誘致といった外資の流入や安定的な通貨切り下げ、中間層の購買力増加による最貧国からの脱却や内需拡大など、様々な追い風があって、街には10年前のような、交差点に信号がない道路とバイクの洪水の風景から、交差点に信号が置かれ、(日本ほどではないものの)整然とした車の往来がバイクよりも多く見られる風景に変わりました。そして、2018年に入るとVN Index は再び1000を超え(本記事を書いている時点ではまた1000を割っていますが)、株式市場総額も国有企業の民営化と上場が数多く行われ、また選別的ですが外国人保有規制を外す銘柄も増えてきたことから、115億ドル規模(2017年末現在:世界銀行調べ)の市場となりました。

ベトナムだからベンチャーで Industry 4.0?

この数年、そのような上場市場以上にこの投資家集会で多く取り上げられているのがベンチャー投資です。ベトナムと言うと、アオザイのような服飾といった軽産業やコーヒーなどの農業が輸出の主力、というイメージが強いのですが、前述のような FDI による企業誘致により、インテルやサムソンと言った企業がスマートフォンの製造・輸出拠点にするといったハイテク産業があり、工業団地と港湾、それを結ぶ交通インフラの整備により重工業への対応も進み、日本で言えば、企業のソフトウェア開発のアウトソーシング先の主要国に一つであったり、アニメの製作の海外拠点であったり、とメディアやデジタルコンテンツにも強い国になりつつあります。

これらの背景には、実は国民の平均年齢が30.4歳(2015年国連統計)と若い国であることや、実は識字率が日本同様に100%に近いこと、そして、あらゆる意味で旧来のインフラが脆弱であったことから、インターネットを軸にした情報インフラを使った新しいサービスが旧来のインフラが邪魔することなく受け入れやすい、という環境にあるようです。実際、電話が数少ないところに安価で高速の携帯通信サービスが展開されたことで、一人平均2回線の携帯回線を契約して大量のデータ通信が出来るようになり、およそ10人に2人しか銀行口座を持っていないからこそFintech ベースの携帯電話間の送金サービスが重宝され、年収程度のスクーターを買うよりもアジアのシェアエコノミービジネスの代表格、Grab のアプリで予約した誰かさんのスクーターの後ろに近所から乗せてもらって安価で移動し、チャンネル数の少ないテレビよりもインターネット経由での動画等のエンターテインメントが大きく発展し、一人当たりの世界有数のYoutube の一人当たりの視聴時間になったのです。

今年の投資家集会では、そんな情報インフラを如何にその他の業種に展開していくか、という Industry 4.0 という言葉と発想が随所に散りばめられていました。物流とブロックチェーンによるトレーサビリティとファイナンスの可能性、シェアエコノミーを零細企業しかいないトラック運搬業者の世界に導入したら物流コストが下がり効率化が図れないか、多品種少数生産の家具や台所、果ては家のフルリフォームのための建材のBTO (build-to-order) による短期間製造・発送、など、様々なものがまだ未成熟で小粒なものが集まった国だからこその可能性、というのを議論されていました。そして、それらのビジネスの担い手のほとんどが、ベンチャー企業なのでした。

今更だけど Industry 4.0って?

ちなみに、Industry 4.0 と言う言葉は、2011年にドイツ政府が提唱された言葉ですが、私たちには「第四次産業革命」という言葉の方がなじみがあるかと思います。この言葉の裏側には現実世界とサイバー空間の高いコンピューティング能力とを密接に連動させることで、コンピューティングパワーを使ったよりよい現実世界の運用をする、サイバーフィジカルシステムによるものづくりを目指すことがあります。現実世界のあらゆるものをIoT などでデータ化して蓄積したビッグデータを分析することでより効率的であることを超えて自律的なシステムをものづくりのプロセスの中に作り出していく、という思想がそこにはあるのです。そう考えると、自動車の自動運転技術はその一端に過ぎないようですね。

実はベンチャーに世界が注目しているベトナム

まだ開発する余地がある、と見るのかそれとも。。。
まだ開発する余地がある、と見るのかそれとも。。。

そんな Industry 4.0 モードに入りつつあるベンチャーが熱いベトナムに注目しているのは、そこに投資している投資家集会ホストのベトナムの運用会社だけではなく、昔からベトナムに投資し続けているヨーロッパのファミリーオフィス、それ以上の熱量があったのがシンガポールはもとよりタイ、韓国といったアジアのベンチャーファンドやファミリーオフィスたちでした。そのお陰で日本もなのか?と聞かれましたが、工場進出や現地企業の買収による事業拠点確保などの戦略的投資を継続的に行ってきた日本ならば CVC によるベンチャー投資が活発化しても、と期待感を持って見られたとしても不思議ではないところです。特に日本にはベトナム一国を丸ごと買えるくらい超巨大なベンチャーファンドがありますしね。

日本も昨年はベンチャーキャピタルファンドによる資金調達額が3,000億円を超えて、ユニコーン企業と呼ばれるような大型上場を果たした企業も出てきましたが、それに負けないくらいの元気なベンチャー市場にベトナムはなりつつあるようでした。

きっと来年もこの投資家集会に呼んでもらえそうですので、引き続き注目していきたいと思います。