サンバもファンドもレギュレーション対応が熱くて大変!

私の住む浅草の8月、といえば、誰もが踊り出し、誰もがスマホを向けたくなる、サンバカーニバル、ですが、まぁ、こういう状況でもあり、今年もやっぱりキャンセルになってフェスタ、という形での開催に決定しました。まぁ、仕方ないですよね、踊り手さんや歌い手さん、そして演奏する人、そして巨大なフロートが、通りを所狭しと大迫力で通り抜けるのが醍醐味な上に、そんなに広くない雷門通りと馬道通りの両脇の歩道に観客がめいめい場所を陣取って直近で見てやろう、なんてひしめき合うのも(なんなら巨大な望遠レンズで狙ってやろう!なんてカメラマンすら)風物詩になっていますから、どう見たって密集するしいわゆる感染対策で誰がどこからどうやって来たとか把握することも難しいので仕方ないですよねぇ。。。

浅草のサンバ、確かに昔は夜にやってました
浅草のサンバ、確かに昔は夜にやってました

とはいえ、キャンセルはさておき、このサンバカーニバルも見ていると誰かが多分決めたんだろうなぁ、という順番に各団体が出てきては演奏しつつ踊って通り抜けて、と思ってみる方がほとんどだと思いますが、実は、これが真剣勝負のコンテストで、それをどこかで審査して、当日の夕方にどこかで発表して、なんてやっている、なんてあまり気にしないですよね。

というか、知っていましたか?開始する午後1時には最初に地元の小学校2校のマーチングバンドが先陣を切って、そのあと、S2と呼ばれる30人から150人のグループの団体が、実は前年の審査結果の最下位から順番に(初参加だと、それよりさらに前に)出発して演奏、歌唱と演技を行い、S2が終わったらスポンサーのフロートが出て、その後に、コンテストの優勝を目指すS1 のグループがさらに大規模の150人以上300人の規模で、これまた昨年のコンテストの結果の下位から順番に出発していた、なんて知っていましたか?しかも、毎年実はオリジナル曲でみんな参加していて、さらにコンテストなので審査基準がしっかり定められていて、公正な評価が行われている、なんてことも。さらにさらに、S1からS2への降格と、S2優勝でのS1への昇格、なんてJリーグのような仕組みすらあるのです。実はなかなか熱い戦いが繰り広げられていたんです。

という目で見ると、そりゃ、パフォーマンスにも熱が入るし、目指せ優勝!真剣勝負!ともなり、一年かけて準備し、地方でも行われるサンバイベントにも行って、となる訳です。

ということで、最初は自然発生的に集まって踊り出せば盛り上がるかもしれませんが、継続的に何か目的を持って何かをするにはルールが必要で、しかもちゃんと盛り上がるための仕掛けというのがとても重要だ(きっと今時だとゲーミフィケーション、とか言っちゃうんですよね)、といわれれば、納得できるところかもしれません。

で、こんなネタ、当然8月のこの時期だから、過去に書いてないか、とチェックしましたら、ぎりぎりなかったので進めますが、金融の世界、特にケイマン諸島でファンドを作って運営している読者の皆さんにとっては、去年はちょうどピークか終わった頃か、でしたが、今年はもうひと段落していますよね。ええ、FARでしたね。

これもまぁ、季節の恒例行事の話なのですが、ケイマン諸島は法制度に高度な自由度がある(人によっては、やりたい放題の島だよ、なんて言いそうですが)のですが、とはいえ、ファンドの設定や運営には一定のルールがあります。例えば投資信託の運用のために作られたケイマン諸島籍のユニットトラスト、というのは現地のMutual Fund Actに基づいて複数のカテゴリーのいずれかに満たす形で構成されてケイマン諸島の金融当局であるCayman Islands Monetary Authority に登録して初めて運営・募集が開始できる仕掛けになっています。そして、運営が始まると、年次監査を含めた年次届出を行う義務も負うことで、当局の監督のもとでのファンドの運営が維持されるという法制度になっているのです。実際、この複数のカテゴリーのいずれかを満たすには、そのカテゴリーに合わせてケイマン諸島に所在する監査人やアドミニストレーター、トラスティなど、ケイマン諸島の金融当局から事業ライセンスを受けている関係者を組成の時点で参加同意を得る必要があるので、その側面でも、いい言い方をするならば金融当局と連携したファンド運営・監視体制が整っている、悪い言い方をするならば、現地企業へのビジネスの誘導がしっかりできている、といえます。まぁ、これに関してだけ言えばケイマン諸島はまだいい方で、アイルランドやルクセンブルク、シンガポールあたりですと、全てのファンド運営の関係者をその国に籍を置くライセンス業者に限らないと税制上のメリットも与えない、とより自国へのビジネス誘導(結果、税収増化)を目指す、というはっきりとした方向性を打ち出していますから、確かにそこから比べれば、ケイマン諸島のファンドは、ファンドアドミとカストディは世界中どこであってもいいよ、というのは自由度が高すぎる、といえます。

さて、2019年に Private Fund Actがケイマン諸島で制定されるまでは、このMutual Fund Actで縛られない、クローズエンドで(とはいえ、Mutual Fund Actのファンドだって、オープンエンドと言いつつも、高々150年程度のファンドの免税規定に基づく償還スケジュールがあるので厳密な無期限、というのはない、のも事実なのですが)投資家の数も少ない、プライベート資産投資に使われるようなファンドに対する規制がなく、監査不要だったり、時価評価基準が置かれてなく適当だったり、資産の分別管理だって危ういようなものすら横行しえる状態にありました。

そこで、他の国でもこのクローズエンドの私募の集団投資スキームに対する法制度が整備されているので、同様のルールを入れる、ということで、Private Fund Act (PFA)が導入されましたが、去年は導入されて初年度だったことから、そもそも既存ファンドの届出から年次報告から、その辺りのプロセスの組み立てに当局側で手間取ったこともあり、一般的なファンドの年度末である12 月末を受けた監査終了期限が6月末、に対して年次報告を8 月のとある日、と比較的、監査から年次報告まで準備に時間が取れました。

実際はオンライン申請ですが。。。
実際はオンライン申請ですが。。。

ところが、2年目の今年、です。
もう、当局側で届出に猶予を与える必要がないので、ファンドの監査と同じくファンドの終了の6ヶ月を当局報告であるFARの提出期限に、法律通りに設定してくれました。おかげで何が起こるかというと、監査が終わると、監査の元となる財務情報やそこから作り上げられる投資家別の損益分配をもとに FARを準備し、また、その提出内容の、特にPFAの要請である「保有資産等の年次評価」「ファンド資産の保管状況」と「資金管理」について法律の求める通りに行っているという宣誓書と監査ずみ財務諸表と合わせて、ケイマン諸島金融当局の誇るオンライン届出サイト、REEFs に提出、なのですがなぜか、その届出はファンドの監査人が行うとされているのです。
そうすると、何が起こるかというと、比較的監査が早めに終わるファンドならばこの辺りのプロセスは余裕を持って行うことが可能ですが、弊社の運用するセカンダリーファンドなど含めて、ファンドの投資先がファンドの場合、そのファンドの監査済み財務諸表に監査人が依拠することになるので、監査手続きが全般的に遅れがちとなる一方、監査人によるオンラインの届出も一応受け取った資料をそのままオンラインで提出するわけにもいかず一旦はチェックするので、数が増えれば当然受け取ってから提出するまでに時間がかかるため、今年の場合は「6月2x日までに全部が揃っていない場合、提出が7月にずれ込む可能性がある」ので早くしてね、というのです。

ふと、変な例えで申し訳ないのですが、以前にチューリッヒ空港の朝7時半の飛行機に乗るのに、朝6時にならないと出国手続きのためのゲートが開かず、ゲートがやっと開いても二つしかブースに出国審査官がいないので、ブースの前には出国して朝のフライトに乗りたい旅行客が長蛇の列をなして「君のフライトはいつだい?僕のは6時半なんだよ」という会話を6時45分にするような、そんな処理能力が悪いのか、大勢の旅行客が押し寄せるのが悪いのか、そもそもその状態なのに朝6時台に飛び立つ飛行機が多すぎるのか、問題解決の負担を誰が負えばいいのかよくわからない問題に出会したことがあったのですが、まさにそんな感じです。

確かに、チューリッヒ空港の朝6時前に、こんな感じでゲートを開くまで大量の人が押し寄せてたわ。。。
確かに、チューリッヒ空港の朝6時前に、こんな感じでゲートを開くまで大量の人が押し寄せてたわ。。。

しかも、やっと無事に届出を監査人の事務所の担当者が終わらせてくれた、と思ったら、ケイマンの金融当局発信の完了通知に
「年次手数料の支払いが終わったら届出は完了ね。支払い期限に間に合わなかったら届出は完了したとみなさず、手数料には遅滞税が掛かるからね(意訳)」と、これまでの努力は何?という冷たいメッセージ。しかも、大きな声では言いませんが、このメッセージは監査人の事務所から転送されるだけでなく、ファンドのGPの管理をしているfiduciary serviceにもファンドのGPに転送してね、と送ってきてくれるのです。そのfiduciary serviceが「この請求書、USD 365.85を期限までに支払わないとダメだけど、弊社経由だったら支払い事務報酬としてUSDxxx」と言って、本来支払うべき報酬に対しても結構な額を提示してくれたのです。もはやここまで来るとお金だけがモノをいうのか?と、世の中に幻滅しそうになるのですが、このところ私とYouTubeポッドキャストでの対談にお付き合い頂いたファンドアドミさん、「この支払い先には普通に直接送金出来るから問題ないよ」とちゃんとしたアドバイス。拾う神、いるものです。

ということで、このPFAの年次届出、毎年こんな感じで進むのでしょうか。
ちなみに、監査済みの財務諸表が出来たら、投資家さんの年次の損益分配も確定する、というわけですので、FATCA/CRS への年次損益の登録も行うことになりますので、こんなドタバタは、細かく地味に時間を取り、でもちゃんとやらないと後々困る、という #カリスマファンドアドミまたは史上最強のコントローラー見参 と言っては腕と根性の見せ所、ではあるのです。

ということで、この8月や9月はその意味では多少ゆっくり休めるはず、なのですが、10月以降は、今度は年末に向けたExempted Limited Partnership Law関連の年次届出やケイマン諸島のEconomic Substance法や現地会社法等に基づく年次届出が待っているのです。Economic Substanceも、2017年から始まったオフショア全体で見ても比較的新しいレギュレーションですので、この作業もいうほど歴史はないのですが、そういう対応も常に求められるのがファンドを運営すること、なのです。

まぁ、デジタルにはなってますが、届出作成資料は結構大変ですよ
まぁ、デジタルにはなってますが、届出作成資料は結構大変ですよ

そう、#カリスマファンドアドミまたは史上最強のコントローラー は地味に、でも常に見参し続ける、のです。浅草のように、毎年新曲のサンバのリズムに乗って、と言いつつちょんまげのズラに目にも眩しいほどにド派手な衣装に身を纏って、サンバと言いながら全然サンバのリズムでない某なんちゃらサンバII、というわけにはいきません。ん?どこで話がずらた、いや、ズレた?

お後がよろしいようで。