華麗なるセカンダリー戦略の裏側を暴露!?

私の住む浅草も、9月になりますと。。。記憶が正しかったら、あまりイベントごとのない月のはずなのですけれども、どうも今年は、国際通りでエイサーが(ってなんとなく那覇の話に聞こえそうな組み合わせのパワーワードが並んでますが、いえ、浅草にも国際劇場があったことから国際通りがあるんです。なので、これも浅草の話です)久々に、確か3年ぶりにやられたそうで、とか、あと8月のイベントのはずの雷門の周辺での盆踊り大会などが、金曜から週末にかけて行われたり、とまぁ、色々とイベント事が増えたみたいでございました。それに合わせ人出が戻ってきているのかなぁ、と言うふうに観ていた(というか、自宅で風呂に入りながら、遠くに聞こえる季節はずれの盆踊りの曲にそう思った)のですけれども、まぁその週末は私、実はとうとう弊社初参戦の東京都実業団テニスのリーグ戦の初戦に行っておりましたので、それどころではなかった、のです。

なんて言う話ばかりしてるとえーと、今回は一体何の話なんだっけ?ということになりますので、コホン。

私も、セカンダリー戦略を語ってみた

最近どうも弊社の社長の白木が、現在絶賛ファンドレイズ中セカンダリー戦略についてあれこれ記事を書いておりまして、やっぱり弊社としてはセカンダリー戦略ってどういうもので、どれくらいセクシー(なリターンが出るもの)なのかを知ってもらわなきゃいけないよなぁ、と言うところで頑張って書いてるのだと横目に見ておりまして、それじゃあ私は、といえば、このところ「そうじゃない」話ばっかりしておりますので、そろそろさすがにちょっと気が引けるな、と言うことで、今回、実務的なところでセカンダリー戦略はどういうことをするのと言う話をちょっとしてみたいなと思います。

さて、セカンダリーといいますと、皆さんが普通に取引をして、弊社のヘッジファンド戦略でも売買を行なっております上場株の取引もセカンダリー市場での取引なのですよね。要は、最初に証券を発行してそれに出資してもらうところを、プライマリー市場と呼び、その後に、その証券を取引されることをセカンダリー市場と言いますので、そのセカンダリー市場そのものはそんなに特殊なものでもないのです。

では、その中で「セカンダリー戦略」とわざわざ言わなければいけないような売買を通じた投資戦略、というのは、前述にて申し上げたような取引所取引がない、だからこそ、取引に結構手間がかかるし、場合によっては売買できないものをあえてやりますよ、と言う資産を対象にして、またそれを取引することを戦略として謳っているわけです。

では、そんな取引に手間のかかる資産って何でしょう。

例えば未上場株式

例えば未上場株式というのがあります。例えば、日本の会社法で普通に会社を作りますと発行した株式の譲渡は、取締役会や株式総会という、会社の決定機関の1番高いところで譲渡制限がかけられる、と言うなかなか強い縛りがかかっています。それなので、日々売買される上場株式はそんな譲渡承諾を毎日やっていられませんので、上場時にその譲渡制限を外して上場する、と言う手続きになっています。
言い換えれば、未上場株式というものは、大抵の場合にはその制限がかかっている状態なので簡単に移動できないと言うことになります。そうなりますと、例えばこの会社さんすごく成長そうだね、いいなぁ、買いたいなぁ、売ってください、と株主の誰かに言って、いいよ、もういらないから、と言って、売ってくれる株主さんと意気投合してその株の売り買いを決めることまでは可能なのですが、その会社さんの取締役や株主で過半数の人たちが、新しい株主になる候補のあの子が欲しい、あの子はいらない、相談しよう、そうしよう、と言って、取締役会や株主総会で検討の結果この人が株主になっても会社にメリットがないからいやだ、と言って譲渡承諾を拒否されてしまい、譲渡がちょっとできない、というのが可能性としてあり得るのです。上場株式では、この人に株主になってほしくない、とか、拒否権はないので、敵対的な買収とか含めて色々とドラマというか色々ありますが、未上場株式の場合、少なくとも譲渡の時点で敵対的な人を株主に入れない予防線は張れる、と言うことではあるのです。

おしゃれ小鉢、ついてきます。

さて、この未上場株式についてはちょっと意外なものがありまして、特にベンチャーキャピタルファンドさんですと、アイデアから会社を一から作って、育てて、大きくして、として行きますが、その際の資金提供については複数のベンチャーキャピタルさんで協力してお金を出して行くのですが、そうすると、じゃあ多めにお金を出すからうちから取締役を出すよ、とかは、うちは少し小さく出しつつサポートしていく、などの株主のそれぞれの役割分担を決めていくケースがあります。とはいえ、最初は関係者が少ないし同じ方向性を持った人たちばかりなのでいいのですが、途中で色々と人の出入りもあったり、その役割は誰のだっけ、などわからなくなると困るよね、とか、もうお宅が売るんだったらじゃあみんなで売りましょう、もしくは売るのだったら先に買う権利をください、といった、先買権とか先売権といったものをあらかじめ会社の創設者株主を含めた株主の間で決めておこう、という言うことで、株主間契約、というものを株主の間で締結しています。これで株主として会社と一緒にどういう方向で会社をどう進めていくかを決めていますので、後から入れてもらう人とか、入れ替わりで入ってくる株主にも、その株主間契約をちゃんと引き継いでもらう必要が出てきます。
その結果、普通に上場株を買ってくるときよりも、主張できるものや権利などにちょっと(?)制限がかかった形になりますので、その株主間契約も引き継ぐ形でセカンダリーは買わなければいけない、というのが実際のところ、注意する必要があるのです。

ファンドの持ち分、と軽く言うけど

さて、セカンドリー戦略でよく取引する、もう一つの「資産」として知られているものが、ファンド持分です。と言いますと、パッと思い付かれるのは、皆さんがよくあの個人的にも投資されている方も多い投資信託の信託受益証券だったりとか海外のユニットトラストのユニット、であり、あまり税務上の都合であんまり国内にはないですけれど、会社型のファンドの持ち分もほとんど外国株式と変わらないので、先程の株式譲渡の制限のない、上場株式に近い形での譲渡になる、と思えば良いので、この辺のまだ比較的簡単です。とはいえ、AさんからBさんに譲渡するくらいなら、同じに日、Aさんが売って、Bさんが買えばいいだけ、なのですが、相続とか色々と都合もありますので、AさんからBさんに譲渡する、としたら、そのファンド持分を発行者の持分所有者名簿の持分を、AさんからBさんに移すように書いてもらえばいいのでまだ比較的簡単です。

ですが、世間一般でセカンダリー戦略ファンドが取り扱うファンド持分といいますと、組合型のファンド、海外で言えばパートナーシップ形態のファンドの持ち分を買ってくる、と言う話になるわけですで、先と同じようにファンドのアカウントの持ち分を移動するだけだから、同じじゃないの?って思われがちです。
ですが、組合型/パートナーシップ型ファンドというのは、この組合で、他の組合員と資産を共有しますよと、言う契約に基づいて投資を行っていく共同体ですので、資産の共有は当然のことながら負債も同様に、共同責任を負います、というのが話をややこしくします。当然有限責任組合員とかリミテッドパートナーの立場ですので(GP持分を買い集めるセカンダリーも世の中にはありますが、ここでは割愛しますね)有限責任になっていれば、基本的には、その自分の出資分に責任が限定されるのですが、この有限責任の範囲、というのが、売主がそれまでに出資約束した額に基づいて投資行為を行ったところから発生した潜在的将来債務をも含まれます。

債権も、債務も両方引き継ぎます!

というのも、例えば、買主と売主の双方だけで、当事者にとって有利である一方で組合にとって不利になるような条件での譲渡(例えば、売主はファンド持分からの譲渡時点以降の一切の債務請求を受けつけず、買主は譲渡時点以降に起因する債務のみに責任を負う、として、譲渡以前に起因する債務請求をどちらも知らない、とするような取り決め)をすることで、それを引き継がないと、組合員なのに、自分は、前の組合員との取り決めで、譲渡前に発生した投資に関するトラブルは知らない、責任を負わない、と一人勝手な振る舞いをすると、譲渡契約に全く関係のない他の組合員の皆さんとしては、知らない間にその分の責任を自分たちで負う、という不利で歪んだ状態が起こるので困ってしまうのです。

そのため、組合にとって将来の債権の取り立て先が移動することについては、その代表としてGPというか無限責任組合員はその譲渡承諾を与える形を取る必要がある、のです。とすると、買う側は、その新しく取得するファンドの新しい組合員になり得るのか、というテストを受けることになるのです。要は、それまでの組合員と同様に、契約に基づいて出資要請や債務対応に速やかに応じることのできる資金拠出が可能か、要は資力と投資経験が結構大事なお話になってくるわけなのです。

ここで出てくるAML/KYC

で、それを判断する一つの、そしてただ一つの材料が、このところブログで何度も書いている、KYCを通じての投資家要件の確認になるのです。日本では適格機関投資家、海外ですと、Accredited Investor, Qualified Purchaser, Qualified Investorなど、言葉も定義(要は資力とか経験などの要件)も国により異なりますので、日本では適格機関投資家だから世界中どこでもプロ投資家だ、とは言えないのです。言い換えれば、そこでも自分がプロ投資家要件を有していることを証明する必要があるのです。


その横で、KYCの本来の目的である「あなたがあなたである証明」をすることになりますが、この話はすでに何度もブログで書いていますから割愛しますが、ファンドの設立証明は日本なら登記簿謄本で出来る場合もあれば(投資事業有限責任組合)出来ない場合も当然あり(匿名組合や任意組合)、海外には登記簿謄本なんて制度はありませんから別の形で確認をし、同様にその所在地は、とか代表権を持つ人は、最近だと実質的支配者としてその収益やビジネスの実益を誰が得るのか、なんて質問とその考え方についても、国により考え方が異なりますので悩ましいところです。要は、自国の常識と話しているものはよその国にとっては初めで出会う新常識、なのです。

あとは。。。税務ですね。FATCAは米国対応で、CRSに基づくAEOIでその他世界各国に税務報告ができる体制を支援してあげるわけですが、一つのファンドでこれらの対応をするには大体2-3週間くらいの手間かかるんですね、実は。ですが、ポートフォリオで買わせていただくと、9-10ファンド分まとめて対応することになります。しかも同時並行に。そうすると、クロージングの月はそれしか仕事が出来なくなります。一応COOなんて役割という会社の雑務を一手に引き受ける仕事をしていますが、そうなると仕事は通常からたくさんあるので、本当に困ります。

どんなに頑張っても。。。

でもポートフォリオで引き受けさせていただける、というのは、本当にこれはありがたい話なのでそこは頑張ってやらせて頂かねば、と言う所でもあるのですが、実際にはファンドの数が増えれば増えるほど手間は比例して増えるが、ひと月のギャラは一緒、ってどっかで聞いたネタみたいな感じにはなっております。

さて、こんな感じでやっていきますので、どうしても個別の株を買わせていただく場合もそうですし、ファンド持分を譲渡頂くと言っても同様で、その時その時によって条件とか背景にあるものとかも常にバラバラです。上場株式のように、売買ボタンを押したら3営業日後に自動的に決済です、という、統一されることは。。。一生ないでしょうね。まぁ、その際たる例が不動産の世界だそうです。

宅建業者さんとか、不動産ファンドのソーシングをしている人たちからよく聞く話なのですが、売買契約と重要事項説明書については国土交通省の雛形があるけど、結局売買対象になる不動産のあるその土地にまつわる法規制(新しい所有者はセットバックしなければいけない、とか)であったり、例えばお隣さんとの境界確認がある、ない、それ以外の取り決めから争議の最中の情報などなど網羅せねばいけないなどあるので、結局契約締結1週間は帰れない、なんて話で、結果として、常に過去の何かと同じ案件、というのは存在しないそうなのです。


私たちのやっているセカンダリー戦略での資産取得や売却も同じようなもので、件数が増えれば増えるほど手間が増えますので、どうせやるなら大きい案件をやる方が費用対効果は高いよね、と思いつつも、そこは、ファンドの規模に合わせたサイズ感でやるところですので、それはそれとして、ファンドが大型化して報われるよね、と信じて頑張るところとも思っています。

巷で話題の

さて、セカンダリー戦略ファンドについて、弊社社長がよく語る最近のパワーワードと言えば、巷で話題のGP-Led セカンダリー、でしょう。ファンドの運営者さんが主体となってファンドのリストラの一環でセカンダリー取引をする、というものなのですが、こう書きますと「じゃあ、セカンダリー戦略ファンドは黙って新設ファンドにセカンダリー取得する資産のための資金を出すだけですか?」と言われそうですが、そんなことは全くありません。そもそも日本国内で取引件数の少ない事例をこなしてきた立場として、GPさんと一緒になって、どこに、どのような器を作って、どういう感じで資産を取得するための調整を行い、その後の運営も適正化を目指すように伴走していきながら運営していく、というスタンスです。要は、スキームのアレンジャーであり、GP-ledをするきっかけに対するソリューションの提供をしているのです。

実際、ちょうど最近、この10年ほどの付き合いのある海外の弁護士と久しぶりに話をした時に、GP-Ledを行うことで、セカンダリー戦略ファンドはファンド業界に対するソリューションプロバイダーの性質が強くなった、という話をしたところでした。まぁ、私の昔の会社でのサービス提供は「ファンドソリューション」を提供する、というものでしたので、個人的にはそこの世界に戻っている、という感覚でやらせていただいています。

まぁ、GP-Ledとはいえ、その受け皿でやることといえば、先ほど言ってたような個別株を買うのか(見たことはないけど)もしくはポートフォリオを買うのか、(見たことはないし、見たいとも思わないですが)これらのハイブリットなのかを、行うので、その意味では、上記で紹介したような話の複合をもう一つの器でやっている、そんな感じになるので、だから「ファンドソリューション」という側面もある、という話でもあります。

まとめ:地味で手間がかかるが。。。

ということで、まとめると、セカンドリー戦略ファンドの事務ってなに、ということは、資産譲渡契約書を結んでお金を決済しておしまい、と単純そうに見える話かもしれないですが、その裏側ではそれぞれの資産クラスによって違う性質や色々な法制度などによる制限があるので、それに対応するには、きめ細やかに契約書の一つ、一文ごとに対応しながら、事務的なところの実現性も組み込んでいく必要がある、なんて、手間のかかる仕事をしております。

こんな仕事に興味ある方、もしよかったら私までご連絡いただければ。。。一緒にやりませんか?カリスマファンドアドミ、史上最強のコントローラーを目指しましょう、と言ういつものフレーズでまとめたいと思います。

お後がよろしいようで。